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4章8 G 殺し屋(12)


 店員の女の子に強盗犯たちの手当てをまかせた。あの銃を持った女が、女の子がトイレに向かうのに気を取られた隙に、俺の依頼人が金の置いてある非常口に移動した。合図を送れば、金を燃やしてくれるだろう。


 金が目的なら、それを盾に交渉できる。


 彼女はトカレフを右手に持ち、別に2丁をスカートに挟んでいる。腰のあたりで握っている銃は、ずっと俺の方を向いていた。


「で、だ……。お前の目的は金か?」

「そうね。あなたも欲しいのかしら?」

「俺はいらない……。金を手に入れたら、何もしないで出て行ってくれるか?」


 彼女は微笑む。


 金の入ったバッグは3つ。俺は訊いた。


「いくらだ? いくら欲しい? バッグ1つ分か? 2つ分か?」

「3つとも、よろしくて?」

「はあっ、独り占めしようってのか? あまり欲をかくな。ひとりじゃ運ぶことも出来ないだろ」

「ええ、私、かよわい女性ですから。あなた、お金の入ったカバンを全部、裏口に用意したっていう車に運んでくださる?」


「ふざけるなっ! アニキと俺達が努力して手に入れた金だぞ! お前になんか渡せるかっ!」


 トイレの方から怒鳴り声が聞こえてきた。タケだろう。努力ってったって、銀行強盗なんだから、胸を張れない努力だが、それでも、いろいろ準備や実行するに当たって、苦労したに違いない。


 それを、みすみす他人に横から奪われるなんて出来ないだろう。


「あなたたちに、交渉する権利はないわ。とりあえず、ここまで大金を持って来てくれたことに、ありがとう、とだけ言っておくわね」


 彼女は一瞬だけ視線を彼らに向けた。目尻と口の端で笑っている。


「くそー!!」

「ちくしょー!!」


 マツとタケの悔しそうな声が聞こえてきた。ウメダの声は聞こえない。やはり、重症…、あるいは、殺されているのか……?


 俺は話を続けた。


「せめて彼らに1つくらい残してやったらどうだ?」

「なぜ?」

「彼らのものだ。かわいそうだろ?」

「わたし、無駄なことは嫌いなの。1つ残しても、どうせ彼らはすぐに逮捕されて、お金は没収されるだけでしょ」

「……」


 たしかに、その通りだ。警戒が厳しい中、重傷を負っているのだ。逃げ切れるわけがない。


「お前だって、逃げられないだろう?」

「余計なお世話よ」

「金を全部渡したら、これ以上誰も傷つけないで、この場を去ってくれるのか?」

「ええ、もちろん……」


 金は渡したって良い。俺の金じゃないし、銀行は保険にだって入ってるはずだ。俺は、クロスギの意見を求めて、後ろをふり返った、その時、


「異議あり!!!!」


 喫茶店内に、女の子の声が響き渡った。




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