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4章2 ウメダ 銀行強盗(9)
俺が、小便をすませて、トイレから出ると、マツとタケが苦しそうに座っているのが見えた。肩から血を流している。
その前に、長澤まさみ似の女性客が立ち、俺の方に銃を向けている。
「銃を下に置きなさい」
「お前! マツに何をしやがった!」
俺は、咄嗟に背中のズボンに挟んでおいた拳銃に手を伸ばそうとした。
パンッ!!!
乾いた銃声と同時に、俺は胸に衝撃を感じ、トイレのドアにもたれ掛かった。ゆっくり視線を下に向けると、俺のシャツが赤くにじんでいる。
銃を取るのを忘れ、俺はその赤いドロリとした液体を触った。
こ、これは俺の血なのだろうか?……
手や足から力が抜ける。
「アニキー!!!」
遠くからマツとタケの声が聞こえてくる。
俺を撃った女性は、まるで瞬間移動をするように、いつの間にか俺の横に現れ、俺の銃を奪った。
薄れていく視界にマツとタケが近づいてくる。
俺は死ぬのか……。
あっけないものだ。不思議と痛みは感じない。恐怖を感じることもなく、俺の周りは暗くなっていった。