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4章12 ケンジ 芸術学部2年(11)


 似顔絵を描き終わったので、通路を隔てた所にいるケンイチに見せた。兄貴は、首をひねりながらじっくり見たが、どうも、誰だか心当たりがないみたいだ。


 ケンイチは、銃で撃たれそうになった。兄貴は普通の大学生。真面目で、性格も悪くない。人から恨みを買うような人間じゃない……。一体、なんで、あの銃を持った、おねーさんは兄貴を殺そうとしたのか?


 ストーカーかな!?


 もしかして、自分の顔を覚えてすらもらえず、鬱積した思いが、この銀行強盗犯による事件のストレスで爆発してしまったのか?


 または……、


 クロスギさんは、彼女を知っているようだった……。


 と、いうことは……、ひょっとして、彼女はシナリオライターで、クロスギさんから仕事を依頼されるのを期待していた?……。しかし、今回はケンイチがそれを引き受けることになった。


 つまり、仕事を奪われたことによる、逆恨み?……。


 うーん。分からん。


 分からないから、どうしよう?


 やっぱり本人に直接聞くのが一番だ。でもオレ、撃たれたくないし……。


 オレは鉢植えの間から、カウンターの方を覗き見ながら、考えを巡らしたが、いっこうにまとまらない。


 向うでは、店員のおねーさんが笑っている。


「ふっ、ふっ、ふっ……、はあっ、はっ、はっ……、オーホッ、ホッ、ホッ!!」


 何だか、キャラが変わってきたようだけど、大丈夫かなあ……?


 彼女は銃のおねーさんに話しかけた。


「時に、あなた……、お金さえ手に入れたら、誰も傷つけないで、出て行くとおっしゃいましたが、それに偽りはありませんか?」

「どうだって、いいでしょ」


「どうだっていいじゃ、困ります。イエスかノーかで答えてください」

「うるさいわね」


「イエスですか? ノーですか?」

「殺すわよ」


「どっちでもいいから、何か答えてください。ね、お願い」


 おねーさんは、手を合わせて、頼んでいる。


「すまん、答えてやれ……」


 えーと、コマキさん――オレが害虫駆除の社長さんだったと思っていた人――が助け船を出す。


「ちっ……、イエスよ」


 銃のおねーさんはしぶしぶ答えた。一瞬、天井を見あげて、ため息をついた。店員のおねーさんは続けた。


「イエスとおっしゃいましたね。んー、あなた…、イエスと……」


 なんだろう? 眉間に指を当てている。古畑任三郎のものまねかな?……。


 あの、おねーさんがやるとカワイイな。似てないけど。


「あなたは、強盗犯を拳銃で撃ち、さらには、私の三浦春馬さんも殺そうとしましたね……」


 三浦春馬? ケンイチのことかな? 「私の」って何だろう?


「それなのに、お金さえ手に入れたら、誰も傷つけないで、出て行くとおっしゃいましたっ。ですね。間違いありませんねっ」


 みんなポカンと見ている中、彼女は続ける。


「では、もしお金が目的なら、なんで・・・、先ほど、春馬さんとタケさんの二人が車を取りに出かけた間を狙わなかったんですかっ!? そして、なんで・・・、先ほど、お金をこの場に置いたまま、お金から目を離して、私の福山雅治さんと店を出たんですかっ!?」


 福山雅治さん? クロスギさんのことかな? また、「私の」って言ってるけど……、何だろう?


 はっ!!! ま、まさか、こ、これは、もしかして……、


 ど、泥沼の四角関係!?……。


 そんな……、何てこった。パンナコッタ。


 オレの兄貴は、痴情のもつれで殺されそうになったの!?


 ケンイチ、何やってんだよっ! うらやまし! じゃない! このスケコマシッ!



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