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隣の転校生は重度の中二病患者でした。  作者: 夏風陽向
「嫉妬と強奪の女王」
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嫉妬と強奪の女王 part12

明けましておめでとうございます! 読んでくださっている皆様、今年もよろしくお願いします!


それから、遅れてすいません……!!


黒山は自分が吹き飛ばした4人を含め、この場にいる人間を見渡して確認した。


そして一瞬だけ驚いた顔をした。理由は当然、敵側に真悠がいるからだ。



「……栗川。これは一体どういうことだ?」



真悠は黒山の問いに対しても答えない。だが、黒山は反応の無い真悠を見て、何か納得したようだ。



「成る程な。ここ最近の襲撃や栗川を含めた5人が操られているのもお前の仕業か」


「えっ! 襲撃……!?」



鈴木は、すぐに驚きから余裕そうな笑みへ表情を変え、返答した。



「そうだよ、よくわかったね。……と言っても、この状況を見れば一目瞭然か」


「何が目的だ」



鈴木を見る黒山の目は『拒絶』しかない。とても普通の人ならこの場から逃げ出したくなるような目を向けられているにも関わらず、鈴木は余裕そうな顔をしている。


そんな表情だからこそ、黒山の問い対する答えが感情の無いものに聞こえた。結構大胆な答えだというのに。



「君が欲しいからだよ」


「意味がわからないな」


「そうだろうね」


「…………」


「……私はね、栗川さんやそこにいる梶谷さんとは違ってお世辞にも美人とは言えない容姿をしている。いや、もっと言ってしまえば不細工な方かもしれない。そうやって言われたこともある。もちろん、私は傷付いた。でもそんな中、幸せそうに寄り添い合う男女がいるじゃないか。そんなの、許せるわけが無かった」


「…………」


「そしてつい最近のことだ。私は力に目覚めた。この力を初めて使った時の快感は今でも忘れられないよ……だって、相手を服従させることが出来るのだからね」


「……お前の能力と俺には何の関係も無いだろう。それに、俺はお前と会ったことがそもそもないはずだ」


「そう。でも君は、自分が思っているより有名なんだよ? 『陸上部や野球部を超える持久力を持っている』と聞かされた時、もしやと思ったから試させて貰ったけど想像以上だったよ。君の力もあれば私の目指す理想郷が一気に近付くんだ」


「人々を支配する世界がお前の理想郷か?」


「管理と言って欲しいな。現代の人間は自由過ぎる。特に男女の関係がね」


「それに関しては同感できる部分もあるな」


「なら、私と一緒にこの世界を管理しようじゃないか」


「……だが、断る」


「何故?」


「お前の目指す世界は、お前にとって理想郷かもしれないが、俺を含めた他人にとってはただの押し付けに過ぎないからだ」


「そっか……。なら、力づくでも従って貰うよ!」


「俺はお前の抱く理想を全力で『拒絶』する」



黒山は黒いオーラを身に纏い、鈴木は空中に数え切れないほどの紫色の針を発生させた。


鈴木が右手の人差し指を黒山に向けると、紫色の針が目にも留まらぬ速さで黒山を貫こうと走り出す。


しかし、その針が黒山に刺さることはない。無数に飛び出した針は黒山の右手から溢れ出る『拒絶』に全て消されていくのだ。


紫色の針は黒山に対してだけでなく、黒山の周辺も巻き込むような範囲で射出されている。


それでも黒山は全て消す。彼の後ろにいる私に刺さらないであろう針も含めての全てだ。



「今だ、梶谷!」


「えっ!?」


「人数的にこちらが不利だ。俺が時間を稼ぐから先に逃げろ」


「で、でも真悠は!?」


「今、栗川を取り戻そうとすればあいつらの思う壺だ! 発症した栗川にあいつが命令すれば、相手が梶谷であろうと攻撃してくるだろう」



私はもちろん、黒山にも真悠の能力はわからないはずだ。


だが、わからないからこそ真悠の能力を警戒しているのだろうとすぐにわかった。……というか、そうであって欲しい。



「早く行け!」


「わ、わかった!」



幸い、この部屋から逃げ出す私を追撃するような気配を敵が見せなかったので簡単に逃げ出す事が出来た。


私は廊下へ出て、部室棟から教室棟まで走った。


取り敢えず、行く先は職員室。針岡先生に言えばどうにかしてくれるだろうと思ったからだ。


--------------------


「彼女を逃すなんて格好良いね。益々惚れてしまいそうだ」


「黙れ。気色悪い」


「ひどいなぁ」



いくら容姿的に優れていないとはいえ、女子に対してそんな言い方をする黒山は、側から見れば間違いなく女性の敵となるだろう。


だが、それは黒山の本音から出た言葉だ。彼は本気で鈴木を『拒絶』している。


お互いに「限界があるだろう」と考えた上で2人の攻防は詩織が逃げた後も続いていた。


しかし、このままでは平行線。痺れを切らし、先に仕掛けたのは鈴木だった。


彼女は4人の男子が動けるようになったのを確認すると、脳内で黒山の動きを封じるよう命令した。


先程、黒山が吹き飛ばしたものの、彼ら4人の意識を刈り取る程では無かった。これは黒山の「近付く彼らを『拒絶』する力」が弱かったわけではなく、手加減はした結果だった。


だが、今回は違った。衝撃による脳震盪(のうしんとう)を狙うのでは無く、彼らに「意識を保つことを1時間程度『拒絶』させる」方法を取ることにしたのだ。


『孤高となる為の拒絶』と『全てを覆う為の黒』を併用させる。


「武装型ではなくそのまま対象に当てる」というこの使い方は、かつて小学生の時に暴走した時と同じものだ。それを加減し、再び使う。


正直、能力の発動範囲はともかく、相手の意識を奪っている時間を上手くコントロール出来る自信が無かった。


それに、コントロールが成功するにしても失敗するにしても、あのまま詩織がいては巻き込んでしまう為、使用するわけにはいかなかった。


だから逃がしたのだ。


黒山は覚悟を決めると、範囲を自分に近付いてくる男子4人のみに当たるようイメージし、能力の併用を始めた。


黒山が纏っている黒のオーラは徐々に禍々しさを増す。


その姿を見て鈴木は戦慄した。そして体感する。この禍々しい男を敵に回してはいけないことを。



「さあ『拒絶』しろ。自分が意識を保っていることを」



黒山の纏っていた黒いオーラは瞬間的に広がり、4人の男子にそれぞれ当たった。


すると、ほぼ一斉に4人は倒れた。


最悪の場合、無理を言って梨々香に『奇跡』を起こして貰わないといけなくなっていたが、その必要は無さそうだ。


黒山は鈴木が目の前の光景に呆けている間に素早い動きで部屋から撤退した。


結局、鈴木が我に返ったのが3分後。男子4人が意識を取り戻したのが2時間後だった。


ちなみにだが、鈴木は我に返った直後、気絶している4人に掛けた能力を解除し、真悠を連れて部屋を後にした為、4人は目覚めた時に「何故ここで寝ていたのか」がわからないことに困惑したが、携帯端末に表示される時間が施錠ぎりぎりだったので急いで帰宅した。


--------------------


職員室へ向かって走った私は、教室棟の廊下は歩いて通行し、職員室へ入る前に呼吸を整えてから入室した。



「失礼します」



1年生の先生が使用するデスクが固まった場所に針岡先生はいた。


上司の前なので真面目に仕事をしているようだが、今の私にとってはどうでもいいことだった。



「先生」


「ん? 梶谷かー、どうしたー?」


「えっと、黒山君が……」


「んー、なるほど。そういう話なら場所を移した方がいいなー。ちょっと進路指導室まで来てくれ」



黒山の名前を出しただけで、針岡先生は「重度の中二病患者」関係の事だとすぐにわかったようだ。


パソコンで作成中だった書類に上書き保存をかけてから立ち上がり、そそくさと職員室から出て行った。


私はその後に続いて職員室を後にする。


進路指導室まで歩く途中、針岡先生は少し真面目な顔をして話を始めた。



「教員の中でもアレを知ってるのは、校長と俺と進路指導の先生だけだ。だから他の先生に聞かれるわけにはいかないんだよなー」


「そうだったんですか……ってそれよりも!」


「待ってくれ。話は進路指導室で聞くからさー」



職員室から進路指導室まではそんなに遠くない。近くもないが遠くもないと言ったところか。


それでも今日、この時は私にとってこの道が長く感じられた。


進路指導室に針岡先生がノックもせずに入っていくと、進路指導の先生は呆れた顔で「針岡先生。またサボ……」と言いかけたが、私が一緒にいるのを見て無言で頷いた。


針岡先生は右手で「申し訳ない」とジェスチャーすると、奥の応接室へ入っていったので、私も続いて入る。



「まあ、座れぃ。んでー? 何があったんだー?」


「実は……」



私は針岡先生に、事の発端である、付き合っていたカップルが次々に別れていること。真悠が「重度の中二病患者」となったこと。別れた男達と真悠が鈴木花梨に操られていること。そして、その鈴木と黒山が今交戦中であるということを話した。



「んー。一応、他校からの報告から聞いてはいたが、まさかここまでの事になるとはなー……。でも、透夜については心配いらないさ」



針岡先生は頭を掻きながらそう答えた。その直後、誰かが進路指導室に入ってきたようで、そのまま私と針岡先生がいる応接室へ入ってきた。



「黒山君……」


「針岡に話したのか?」


「う、うん……」


「そうか。……そういうわけだが、どうする?」


「ぶはっ!」



私も黒山も真面目な話をしているというのに、針岡先生は吹いていた。そんな姿を見て私は不快に思ったが、黒山はもっと不快に思ったようだ。



「何がおかしい?」


「い、いや。すまん。ただ、ちょっと前まで『1人で十分だ』と言っていたお前が、俺に指示を仰ぐとはなー……ふひひひ」


「…………」



黒山から黒いオーラが出始める。


それに気付いた針岡先生は咳払いをしてどうにか笑いを止めた。



「相手が男ならともかく、女相手だと出来ることが限られるからだ。それに……」



私は黒山に向かって「それに?」と聞くことで、話の続きを促した。



「それに、今回は栗川が敵に回っている。栗川を取り戻すには梶谷の『想いの力』が必要だ。だが、相手は人を操る手段を用いてくるから数という面でこちらが圧倒的に劣勢となる」


「なるほどなー。じゃあ、こうするかー。金曜日に臨時報告会を開く。その日までに奈月と沙希。浩二と奏太で調査をしてもらうことにする。んでもって、お前ら2人は手分けして奴らに連絡してくれー。いいなー?」


「わかりました」


「わかった」


「それから、梶谷はその臨時報告会に出席してくれー。そこで今回の事件を解決するための作戦会議もする」


「ま、妥当だな」


「わ、わかりました」


「よしー。今日はもう解散だ、俺は職員室に戻るー」



3人で進路指導の先生にお礼を言ってその場を去った。

最近、どうも眠気半分で書いているためか、続きを書こうとした時「どんな終わり方してたっけ?」と確認しています。


どうやら、前の週に書いた話の内容を覚えていないようで困りものです……。


今年1年も何かと更新できなかった!ってことがありそうですが、頑張りたいと思っています!


もし、何かしら変更があったらツイッターの方でボソッとつぶやきますので「あれ?」と思ったらそちらを見てくださると幸いです。


次週もお楽しみに!!

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