決別する転校生 part38
すみません、本当に短めです。
でも停滞はしたくなかったのです。
真悠の能力を普通に使ってアクゼリュスが操る鞭を切ろうとするのであれば、上手くいかなかった場合、巻き取られてしまう可能性もある。
真悠も重度の中二病患者になってから時間が経ってはいるものの、やはりアクゼリュスの方が時間は長い。『残酷』を使って作り上げてきた残酷は真悠が切ってきたものよりも遥かに多かった。
真悠にどれだけ戦闘のセンスがあろうとも、4段階もある『残酷』を扱ってきたアクゼリュスには敵わないが、真悠にも対抗できる手段がないわけでもない。
「普通なら巻き取られる」のであれば「巻き取られなければいい」ということなのだ。
真悠は左手に持っていた刃を消失させると、右手に持った刃を強く握って走り出し、アクゼリュスに攻撃を仕掛けた。
「あっひゃひゃ! おらよぉっ!」
アクゼリュスが笑いながら鞭を振るう。実際、アクゼリュスも残りの刃を巻き取りつつ攻撃すれば良いと考えていた。そのイメージが目に浮かんで、つい笑ってしまう程に。
「あはっ……あ?」
ところが、アクゼリュスにとって意外なことに鞭は弾き返された。───というより、真悠と触れそうになった部分のみ切断されて鞭が戻ってきた。
どういうことなのか調べる為に凝視したいところだが、真悠の攻撃は待ってくれない。真悠の胸部は比較的に大きい方ではあるが、それを全く感じさせない程の運動能力を発揮して接近する。
真悠が素早く袈裟斬りをするも、流石に危機感を感じたアクゼリュスは後ろに下がってそれを回避する。だが、水流迫によって球状の水に閉じ込められる前と同様に真悠は攻撃を続ける。
アクゼリュスも負けじと回避しながら鞭を振るうが、真悠に当たることなく切断されていく。そうしていく中で見えたのは、宙に浮いて動く紺桔梗の色をした渦だった。
その結果にアクゼリュスは激しく肩を落とした。
「なんだよ、なんだよ! そんなので俺の鞭が切られるってのかよ!」
「大人しく斬られてよぉ!」
真悠は何処か威圧を感じる笑みを浮かべたままアクゼリュスに刃を振るう。そんな状態はアクゼリュスにとって面白いものではなかった。
真悠の猛攻を躱しつつ、またも『残酷』の段階を上げる。
「ちっ、こいつはつまんねーからあんまり使いたくねーんだけどよ!」
アクゼリュスはそう言って避ける動作を止めて立ち尽くす。その隙を逃すことなく真悠が右手に持っている刃を振るうと、それに反応するかのようにアクゼリュスは左手を「まるで何か得物を持っているかのように」振り上げた。
すると、金属同士がぶつかり合う音が響き、それに驚いた真悠は後ろに下がった。
「えー? そんなことってあるー?」
「はっ、これが『残酷』の3段階目だ」
『残酷』の3段階目は「無理矢理に相手の財産を奪い、やがては殺めるに至る」というもの。───つまり、アクゼリュスは真悠が紺桔梗の渦に戻した刃を奪って左手に持っていたのだ。
読んでくださりありがとうございます! 夏風陽向です。
案の定、執筆の時間を取ることが出来ませんでした。
来週は問題ないはず、です。
それではまた次回。来週は先週くらいの量は書きたいと思っていますのでよろしくお願いします!




