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隣の転校生は重度の中二病患者でした。  作者: 夏風陽向
「行き過ぎた反抗期」後半
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行き過ぎた反抗期 part10

「黒山君」



私が呼ぶと彼は無言のまま反応し、私と真悠の方を向く。


いつも基本的に真顔の黒山だが、今日はどこか目が鋭くなっている気がした。


そんな彼の表情にほんの少し、心で後ずさってしまうが、それでも私は言う。



「今日、鎌田が学校に来るんでしょ? そこに私たちも同行させて欲しいの」


「せんせーにお願いしたら、黒山君に協力を得られるならいいって!」


「……。」



恐らく最初は断られるだろうと私は思った。

だが、今回は引き下がるわけにはいかない。

何と言われようとも何度でもしつこくお願いするつもりだ。


……しかし、黒山から出た言葉は予想できないものだった。



「本当に行くつもりか?」


「う、うん」


「だが鎌田に『もう関わるな』と言われたんだろ?」



確かに昨日、鎌田本人からそう言われた。


「もう関わるんじゃねぇ!」と。


「お節介なんだよ!」と。



それでも私は……私と真悠は、作り出された証拠と鎌田の見てくれだけで彼を問題児として扱う先生達に、鎌田が「本当は優しい強さの持ち主なのだ」と証明したい。



「確かに言われたわ。でもだからと言って、私たちが見て見ぬ振りをして鎌田を見捨てていい理由にはならないわ」


「私もそう思う……! 確かに鎌田君は授業中に先生と喧嘩したりで乱暴なところはあるけど、それでも心は優しい人だから!」


「はっきり言っておく。2人が来たところで何も変わらない。……むしろ、問題が無駄に大きく厄介になっていくだけだ」


「じゃあ、黒山君。あんたなら、鎌田を助けられるの?」


「……。」



黒山がどうするつもりなのかはわからないが、彼自身も自分が問題を解決できる確証が無いのだろう。


そして、私と真悠もわかっている。


自分たちが行ったところで、何かをできるわけでもないし、力もない。


……だけど。



「私だけでもなく、真悠だけでもなく、黒山君だけでもなく、3人一緒に……いや、鎌田も含めて4人一緒に戦えば絶対に大丈夫だから!」



特別考えて出た言葉はでは無いのだが、黒山は驚きのあまり目を見開いて聞いてきた。


きっと私の言葉が彼の心に届いたのだろう。



「わかった」



黒山は元の真顔に戻ると、頷きながらそう短く答えた。


--------------------


時は少し遡り、詩織が翌日のことで頭がいっぱいになっていた夜のこと。


自分のイツメン(いつものメンバーの略)が病院送りになった話を聞き、更にその犯人として疑われた鎌田は、あれだけ頭にくることがあっても夜は眠っていた。


今の彼には「退学になる恐怖」というものはなく、代わりに「友達を巻き込んだ怒り」があった。


ただでさえ、母と離婚した父や自分の言うことを信じてくれない先生に苛つく日々だというのに、自分を友達として見てくれた2年生の彼らを巻き込んだ清村に対しての怒りが追加された鎌田の心には最早「怒り」しかなくなっていた。


そして彼は夢を見る。目覚めかけていた自分の能力が解放される引き金となる夢を。


本人に夢を見ている自覚はないが、この夢を見た者は皆驚くことだろう。なぜなら……


目の前に「もう1人の自分」が立っているからだ。



「あぁ? なんで俺がもう1人いるんだよ?」


「簡単な話だぜ? 俺はお前で、お前は俺。そんだけのことだろ?」



もう1人の自分はまるで一般的な常識を答えるが如く、あっさりと答える。


といっても、鎌田本人には意味のわからない答えであったが。



「意味わかんねぇよ! こう、自分がもう1人いるとイライラしてくるなぁ!」


「はっ! まあ、待てよ。俺は別にお前とやり合いにきたんじゃねぇ。我ながらなかなか良い提案をしようと思ってよ」


「てめぇの話を聞いてやれる程、今の俺に心の余裕はねぇよ!」



鎌田はもう1人の自分めがけて渾身のパンチを放つ。


普段は出さない、本気の一発を。


……がしかし。



「言っただろ? 俺はお前で、お前は俺なんだって」



流石はもう1人の自分と言ったところか、片手であっさりと止められてしまった。



「ちっ!」


「ちょうどいいからよ、俺の力も見せてやんよ! ……うらぁっ!!」



もう1人の自分も同じように全力で殴りかかってきた。



「あめぇぜ!!」


「……と思うだろ?」


「あぁ!? ……っと、あっつ!!!」



もう1人の自分が放った一撃を同じように片手で止めたが、自分と違ってもう1人の自分の右手には炎が宿っていた。


不思議と決して燃え移ることのない。しかし、焚き火なんかとは比べ物にならないくらいに熱い炎を。



「こいつは俺の怒りであり、お前の怒りでもある。だから、お前にもこれは使える」


「んなもん、使うかよ! どう見たって卑怯じゃねぇか!」


「ああ、そうだな。だが、お前は必ず明日これを使うことになる。だから一応伝えておこうと思ってよ、こいつの名前を」


「あぁ!?」


「『抗う為の猛き炎』……こいつの名前だ。よく覚えておけよ? まぁ、忘れねぇように出来てるんだけどな」


「なんだかよくわかんねぇが、なんつーか……やっぱ自分のことなんだな、なんとなくわかっちまうぜ」


「それでいい。……じゃあ、また明日。俺たちの怒りをぶつけてやろうぜ」


「ああ、やってやろうぜ」



この時、既に鎌田は怒りに支配されていた。


もしも彼が冷静なら、もう1人の自分が出てくることもなかったし、超常現象にも等しい力を使おうとは思わないだろう。


それほど、鎌田の心にある怒りの炎は、熱く激しく、燃え盛っているのだ。


能力が発動できるようになるきっかけとなる夢は、現在の自分自信をある程度見つめることができる。


しかし、この夢にはかなりタチの悪い所がある。


その最もとしてあげられる所といえば、能力発動ができるきっかけを作っておきながら「代償」について全く説明してくれない所だ。


--------------------


午前10時。2時間目が始まるチャイムが鳴り、その時がきた。


場所は会議室。極稀にしか使用されない1室であるが、それはあくまで真面目な学生が使用する機会が少ないだけであって、問題児からすれば人によってはよく来る部屋である。


その部屋にいるメンバーは、私・真悠・黒山・鎌田・針岡先生・数学の教科担任・昨日鎌田の家の前にいた先生・清村の8人だ。


鎌田のお父さんは、どうしても外せない用事があるらしく、途中参加になるらしい。


ただ不思議に思うのは、針岡先生以外の先生2人が、やや納得していない顔をしているにも関わらず、私と真悠と黒山がここにいる理由を聞いてこないことだ。


なんにせよ、私たちにとっては都合が良いことに変わりはないのだが。


鎌田もどこか雰囲気がいつもと違うので気掛かりだった。


確かに退学になってしまうかどうかが今日この時間を使って告げられてしまうのだから、怖い顔になってしまうのも仕方がないのかもしれないが。


しばらく沈黙が続く会議室であったが、痺れを切らした数学の教科担任が、鎌田に再度質問をする。



「鎌田。最後にもう1度質問をするから、正直に答えるんだ」


「ああ」


「お前は喫煙をしたな?」


「してねぇ」


「……お前は昨日、停学処分にされた腹いせに2年生5人に暴行を振って病院送りにしたな?」


「やってねぇ!」


「お前は此の期に及んで嘘をついたな?」


「ついてねぇよ! 煙草も吸ってねぇし、あいつらを殴っちゃいねぇっての!」



数学の教科担任は溜息を吐くと、昨日鎌田の家にいた先生に目配せをしてから鎌田に告げる。



「反省の余地なし……か。鎌田、お前は退学処分だ。この学校の生徒として相応しくないと判断された」


「待ってください!」



私と真悠は立ち上がって抗議をしようとした。……しかし。


鎌田も立ち上がって、私と真悠に「ありがとう、座ってろ」と言って先生方を睨みつける。



「な、なんだ鎌田? 何か言いたいことでもあるのか?」


「ああ……てめぇらクソ教師どもにはいい加減痛い目を見せないといけねぇなと思ってよ? どうせ退学なんだ。ここでどうされようと……文句はねぇよなぁぁぁぁ!?」



突然、空間が変わったかのような錯覚を覚える。


私は立ち上がったままの鎌田をとっさに見ると、彼は炎で燃えていた。……いや、この表現は間違っている。正しくは「炎を纏っていた」だ。


その炎の熱は私にも伝わって来るが、なぜかその炎が周りのものに燃え移ることはなかった。


鎌田は左手で後方へと熱噴射をし、目の前にある机や椅子を全て体当たりでどかしながら、向かい側に座っていた先生方の目の前で急停止をし……。



「怒りの炎よ、燃え盛れ!! そして受け止めろ!! これが俺の怒りだっ!!!」


右手で数学の教科担任を。左手で昨日、鎌田の家にいた先生を机と椅子ごと殴り飛ばす。


机や椅子の障害物が無かったとしても、殴り方的には本来、そこまでの威力はない。


しかし、鎌田が持つ本来の力とプラスして「重度の中二病患者」としての能力(私の推測)が備わった攻撃は、易々と2人の先生を吹き飛ばしていた。


どうやら辛うじて腹を抑えるくらいの痛み程度で済んだようだが、鎌田の能力が持つ本当の恐ろしさはここからが本番だった。



「いってて……鎌田、なんだそ……?」



数学の教科担任は「なんだそれは?」と言いかけて止まる。


そして2人の先生は気付いたようだ。自分の身体に異変が起こったことを。



「熱い……! 熱い熱い熱い熱いぃぃぃぃ!」



鎌田に殴られた腹の体温が徐々に上がっていく。



「まだこれだけじゃあ、済まさせねぇぜ? 自分が持つクラスの生徒が言った言葉を信じるのは決して悪いことじゃねぇ……だがな、そいつの言ったことの真偽くらい見分けられねぇようじゃあ、救いようがねぇよなぁ!?」



燃え続ける。燃やし続ける。


彼の怒りの炎が、今もなお勢いをつけて燃え上がる。



「とどめだ。どんだけの生徒から怒りを買ったかわかんねぇけど、せいぜい後悔しろよ。俺を含めたそいつらを信じられなかったことを」



鎌田の両手のひらに丸い炎が形成され、それを火炎放射器のように2人の先生へ目掛けて放つ。


燃え移ることのない炎ではあるが、その火炎放射を浴びればきっと、全身を焼かれるような痛みを味わうことになるだろう。


そう予想した私の足は、恐怖で震えていた。


……しかし、彼は違ったようだ。


2人の先生を目掛けて放たれた火炎放射は、2人の先生と鎌田の間に入った黒山によって消された。


ついでに2人の先生の熱も消し、痛みから解放された直後気絶する。



「なんのマネだ、転校生?」


「悪いが、怒りの炎に焼かれているのはお前自身のようだな……鎌田。」


「あぁ!? 何を知った風に……」


「お前の怒りはよくわかる。だから、1発目は見過ごしたが、これ以上やるというのなら、俺がお前を止める」


「はっ! どうやって俺の炎を消したのからわかんねぇが、何度でもやってやらぁっ!」


「……どうやら、今回の相手は骨が折れそうだな。少しばかり本気を出すとするか」


「上等だ、転校生!! 俺の『抗う為の猛き炎』が止められるなら、止めてみやがれ!!」



鎌田は再び、両手のひらに炎を集め、その炎を黒山目掛けて放つ。


黒山はそっと静かに右手を出して、放たれた怒りの炎を全て「拒絶」し、跡形もなく消す。



「針岡。彼女ら2人に被害が出ないよう、身体を張って守ってくれ」


「ああー……出来れば、俺にも来ないように配慮して欲しいなぁ……?」


「だったら、2人を連れて離れてろ。……こいつは結構やばい」


「わかったー。お前ら、こっちだこっち」



針岡先生が私と真悠を会議室の隅へ離れるまで鎌田は動かなかった。



「意外だな。怒りに身を焼かれているお前が、離れるのを黙って見てるとはな」


「勘違いすんな、転校生。針岡はともかく、俺に味方をしてくれた2人を巻き込みたくなかったからだ。……これで俺もてめぇに対して本気でいけるわけだ」


「フッ……。お前の行き過ぎた反抗を全て拒絶してやる」


「言うんじゃねぇか! だったら、これはどうだよ? うらぁっ!!!」



鎌田は連続で火の玉を黒山へと飛ばす。


しかし、黒山は全ての火の玉を目の前で消した。



「どうやらてめぇに飛び火は効かねぇようだなぁ? ……だったらこれはぁ!?」



鎌田の両手は怒りの炎で燃え盛り、肘から出た噴射の加速で威力を付けて、黒山へと殴りかかる。



「武装型! はあぁぁぁぁぁっ!!!」


「うおりゃぁぁぁぁっ!!!」



鎌田の怒りに燃えた右手と、瞬時に武装型へと切り替えた黒山の禍々しい右手が、激しくぶつかりあった。


威力は、やや鎌田の方が上ではあったようだが、ほぼ互角のようでお互い後方へと吹き飛ばされた。


鎌田はうまく体勢を崩さずにいられたようだが、黒山は後方へと飛ばされた威力を殺しきれなかったようで、壁に背中が激突した。



「うぐっ!」


「はっ! どうした、転校生? あの朝、付けられなかった決着をここで付けようじゃねぇか! さぁ立てよ! 転校生!! ……いや、黒山ぁ!!!」


「うるさい……奴だ。お前に言われたくなって、俺はここでお前に負けるわけにはいかない」


「いいぜ、黒山。あん時俺は、てめぇのことを腰抜けだと思っていたが撤回するぜ。こんだけ本気でぶつかり合える相手は久々だ」


「お前……どうかしてるな」


「ああ、俺自身そう思ってるぜ? さて、続きといこうじゃねぇか!!」



鎌田は黒山に目に見えないほどの速さでラッシュをかける。


一方、黒山も負けじとそのラッシュを受けつつ、所々隙を突いては反撃をする。



「うららららららぁっ!!!!」


「うぉぉぉぉあぁっ!!!」



戦闘能力がほぼ互角である為、このままでは戦いが終わらないのではないかと思えるほどのものではあるが、よく見てみると、鎌田の怒りの炎は先程と比べて勢いが落ちてきている。


この状況を楽しんでいる鎌田に怒りはない。


今まで蓄積された怒りを燃やし、全力で黒山とぶつかっているのだ。


黒山とぶつかり合える状況を夢中で楽しんでいる鎌田は、既に怒りから自分を取り戻していた。


まるで少年漫画であるような、高速のラッシュでぶつかり合う2人の高校生。


お互い、殴られた頰が腫れて口の中が切れて血を出していてもまだ続ける。


きっと勝敗に関わらず、やがて鎌田の炎は消えるだろう。


……そう思っていた。


黒山と鎌田がぶつかり合っている最中、遅れて来た出席者が会議室へと入って来た。


その男……自らの父を見た鎌田の炎は再び燃え上がる。



「遅くなってすみませ……あれ? この状況は一体?」



鎌田は黒山を背に、父親へ向かって怒りの炎を燃やしながら言った。



「そういや、もう1人。俺の怒りをぶつけなくちゃ気が済まねぇ奴がいたなぁ!?」


「待て、鎌田! その人はお前の父親だろう!? 自分を育ててくれた人に向かってそれをしてはいけない」


「黙りやがれ! 黒山ぁ、てめぇにはわかんねぇさ、きっと。……だからクソ親父! てめぇも俺の怒りを受けやがれ!!!」


「くそっ!」



黒山はとっさに武装型を全身にかけて、鎌田と父親の間に立つ。



「どきやがれ! てめぇごとやっちまうぞ!?」


「……。」



禍々しい黒い魔人となった黒山は、鎌田の額に右手の人差し指の先を当てると、無言で高威力の衝撃を与える。



「ぐおっ!? て、てめぇ、一体何を……?」



高威力……といっても、鎌田は衝撃を受けた額に手を当てて後ずさるだけで、怪我をするほどではなかった。


しかし、その一撃で再び燃え上がった鎌田の炎は一瞬にして消え去った。


禍々しい黒い魔人と化した黒山は、その姿のまま気を失い、倒れた。



読んで下さり、ありがとうございます! 夏風陽向です。


次回の予告をほんの少しさせていただくと、まだバトルシーンは終わっていません。


それでも次回か、その次くらいにはこの章は完結します。……というか、させたい(笑)


また次回もよろしくお願いいたします! お楽しみに!!

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