一時の休息
デザートも食べ終わり、食休みの時間を取ったら、リーゼロッテは寝てしまった。
横になっているリーゼロッテが寝苦しそうに見えたので、アタシはリーゼロッテの頭を膝の上にのせる。
疲れちゃったのね。
アタシはリーゼロッテの頭を優しく撫でた。
リーゼロッテの規則的な寝息が聞こえてくる。
時折、吹く緩やかな風は、リーゼロッテの眠りをさらに深めようとするかのようだった。
今は寝かせてあげましょ。
だいぶ頑張っているものね。
ボルネフェルド家にいる時は剣の練習。
アルムボルト家にいる時は魔法の練習。
リーゼロッテは剣の練習をしているからと魔法の練習をさぼろうとはせず、毎日、剣と魔法の技術を磨こうと、努力しているようだった。
本当なら子供らしく遊ばせてあげたいのだけど……。
戦争になったらどうなるか分からないものね。
やれるだけのことはやっておきたいわ。
一番良いのは、戦争が起こらないことなのだけど……。
こればっかりはどうにもならないわよね。
たとえここが『最弱種族の竜槍者』の世界じゃないとしても、現実問題として両者の溝は深くなっている。
貴族派は絶対に魔族を認めない。
差別は酷くなる一方で、嫌なことだけど戦争への道を確実に歩んでいた。
どの世界も同じね。
勝手に分類して、自分と違う相手を排除しようとする。
自分と違うと分かれば、差別していいと思っている。
虐げてもかまわないと思っている。
本人たちは酷いことをしているという意識さえない。
そういった相手がどんなに非道になれるか、アタシは前世で嫌というほど思い知った。
「ジークベルト様。こちらをお使い下さい」
マリアンネが肩かけを二枚差し出してくる。
「あら。ありがとう」
肩かけを受け取り、アタシは一枚をリーゼロッテの身体に広げてかける。
暖かくはあるけれど、汗をかいた後だから風邪をひくかもしれないものね。
アタシはマリアンネの心遣いに感謝した。
アタシも肩かけを身体にかけておく。
また風が吹き、木漏れ日がチラチラと顔にかかる。
アタシはその木漏れ日に誘われるように空を見上げた。
空は青く広がり、暖かな陽気はまだまだ続きそうだ。
アタシはもう少し、こののどかな時間を味わっていたかった。