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長年の癖はうっかり出るもの

 ジークベルト・ボルネフェルド。

 貴族の家に生まれ、兄弟は誰もおらず一人っ子。

 母親譲りの金髪と青い瞳で、身長は標準より高め。

 優秀な両親の元、勉学に励み、ボルネフェルド家をさらに強大なものとするべく、努力してきた。

 何も知らずに。

 今は……、九歳だったかしら?

 アタシはベッドの上で記憶を探る。

 前世の記憶が増えたせいで、ジークベルトとしての記憶があやふやになっていた。

 でも、過去はあやふやだけれど、未来ははっきりとわかるわ。

 アタシはこれから婚約者を奪われ、婚約者を賭けた決闘にも負け、戦争で大敗北をして死ぬ。

 婚約者はアタシと同じ貴族のリーゼロッテ・アルムボルト。

 天真爛漫の可愛い少女で、おしとやかさにかけるところはあるものの、その明るい笑顔で他を魅力する。

 この世界の正ヒロイン。

 そして、婚約者のリーゼロッテを奪う決闘者の名前はクラウス・エルトル。

 この世界の主人公。

 そして“俺”は婚約者を酷い目に合わせ、魔族を滅ぼそうとするジークベルト・ボルネフェルド。

 この世界の悪役にして悪魔族。

 この世界は前世のアタシが読んでいた、主人公と悪魔族のヒロインが魔族の存亡をかけて戦うライトノベル『最弱種族の竜槍者』の世界そのままだった。

 ただでさえ男に転生してがっかりしているところに、それが悪役貴族だなんて神様はなんて仕打ちをするのかしら……。

 いえ、この場合は大魔王かしら。

 って、そんなことはどうでもいいわね。

 このままいけばアタシは死ぬ。

 現在の悪魔族は二大派閥に別れている。

 血統を尊ぶ悪魔族による貴族派と、悪魔に様々な血筋を入れた混血の魔族と手を取り合おうとする悪魔族による穏健派。

 アタシはこれから貴族派に入ることになるのだけど、派閥間で戦争になり、穏健派に属する主人公と戦って殺される運命にある。

「死ぬなんて……ごめんだわ……」

 思わず呟いてしまったのだけれど、これがいけなかった。

「ジークベルト様……? ……だわ? 今、ごめんだわ、と仰いました?」

 マリアンネがすぐさま額に手を当てる。

「女言葉を使われるなんて……。やはりまだ熱が……?」

 マリアンネが今までになく心配そうな顔でアタシの瞳を覗き込む。そして、部屋の扉の外へと叫んだ。

「医師は! 医師はまだですか!」

 しまった!

 ジークベルトは貴族の長男よ。

 いきなりこんなしゃべり方をしたら、心配されて当然じゃない!

「ジークベルト様。今、医師を連れてまいります」

 マリアンネがバタバタと部屋を出ていった。

 それからアタシは、医師による長い長い診察を受けることとなった。


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