第七話 蒼空と春奈と新コスチューム
「あのネットに出てきた天使って、お姉ちゃんだったんだね」
春奈がボクの背中から伸びあがる、半透明で淡く輝く翼を見ながらそう言った。
ボクは春奈にせがまれ、自分の部屋のなかで、しぶしぶ翼を展開した。 キーワードを唱えるとこ春奈に聞かれ、その顔がニタリとした笑顔になったときは、またなんかいわれるかとドキドキしちゃったよ……。 まぁ、とりあえず何も言われなかったけど。
「ううっ、春奈。 あの画像……み、見たの?」
「うん! 優衣と。 だっていっときすっごく話題になってたじゃん。 高い山の上に浮かぶ、白いワンピ着た羽が生えた少女。 それに長い槍みたいなやつからすっごい光を放つ画像とか、『魔"ホウ"少女キター!』とかオ○クの人たちとか思いっきり騒いでたよね?」
そう言いながららニヤニヤしながらボクを見てくる春奈。
「てっきりCGかと思ってたけど……そっか、お姉ちゃんが……うわさの魔法少女かぁ」
どうやら春奈は優衣ちゃんに見せてもらったみたいだけど、何、そのうわさ……いやすぎっていうか、フォリンと同じようなこと言ってる。 ったく、フォリンどんだけ日本のサブカルチャーに染まってるんだよっ。
「はぅ……。 そ、それは、その、フォリンに頼まれて……仕方なくやっただけで……」
ボクはなんとなく言い訳じみたことを言ってみるけど、春奈は聞いてないみたいで、
「これ、付け根どうなってんのかな? なんか服の上から浮いたような感じで生えてきてて、背中とは直接つながってないみたい」
そう言ってしげしげと翼の付け根を見つめる春奈。 そして触って確認しようと手を伸ばす。
「ほら、お姉ちゃん。 手がすり抜けるよ! 何コレー、不思議~」
「えっ、ほんと? すり抜けちゃうの?」
ボクも自分の翼の付け根なんて見ること出来ないから、春奈のその言葉にちょっとビックリした。
「これお姉ちゃんの意思で動くの? っていうか、どうやって飛ぶの? ネットに上がってた画像だと、あんまり羽ばたいてるように見えなかったんだけど……」
春奈が羽をツンツンつつきながら、そんなことを聞いてくる。
「うん、動かせるよ。 ほら」
ボクはそう言って翼を軽く羽ばたかせて見せる。 動かすたびにキラキラした粒子みたいなのがふりまかれ、我ながらキレイだと思う。 それにしてもほんと、それ(キラキラ)に何の意味あるんだろ?
「でも、実際飛ぶときは別に羽ばたかせて飛ぶわけじゃないんだ……。 翼の動きは、あくまで雰囲気だけで、ただの動作のキッカケみたいな感じ? だから飛ぶこと自体は、アタマでイメージするだけで飛べちゃうって感じなんだ」
「ふーん、なんか不思議。 でもすごいよね? いいなぁ。 で、感覚とかは? 冷たいとか、痛いとか……さ」
「うーん、そんなのはない……かな。 ただ動きのイメージがつかめるだけでさ」
ボクは春奈の質問に答えながら、なおモノめずらしげにボクの翼を見てる春奈に、恐る恐る声をかける。
「春奈……」
「ん、なに?」
翼のほうを見たまんま、聞き返してくる春奈。
「ボクのこと……怖くない? 気味悪いとか思って……ない?」
春奈はボクの問いに、ちょっと眉根を寄せながら言う。
「お姉ちゃん! 怒るよ?」
春奈はそう言うなりボクの正面にまわってきて、目を見つめてくる。 そして腰に手をやり、にらみ付けるようなしぐさをしながらさらに言う。
「いい? そりゃ、かわいい男の子だったお兄ちゃんが、いきなり同じよ~に、かわいらしい女の子になっちゃって、驚いて……戸惑ったりしたのは事実だけどっ。 でも、だからって怖いとか、気味悪いとか、そんなこと思うだなんて……ありえないからっ!」
春奈は一息にそう言うとボクの手をとり、再度見つめてきてこう言った。
「そりゃ私じゃ頼りないかもしれないけど……私たち、姉妹なんだよ? もっと頼ってくれていいんだよ? それに、女の子のことについては私のがず~っと、先輩なんだから! ねっ、おね~ちゃん?」
そう言うと、最後はいたずらっぽい顔をしてニタリと笑い、ボクを見る春奈。
ううっ、春奈の言葉は素直にうれしいけど、そこかしこになんか微妙な言い回しがあったような気がする……。
でも……やっぱ。
「ありがとう! 春奈。 ボク……」
そう言いながらも、ボクはもう目から涙が溢れてきそうで、こらえるのに必死だ。
「ああもう、お姉ちゃんったら。 ほんと昔っから涙もろいんだから……。 そんなとこもほんと変わらないね。 妹の私が側にいてあげなきゃなんにも出来なかったもんねぇ?」
ううっ、そ、それは。
「いっつも私にべったりで。 ほんと妹離れ出来ないお兄ちゃんだったよね?」
や、やめてぇ、言わないで~。
「そういや小学校上がるくらいまでは、よく姉妹と間違われたもんね? もちろん私がお姉ちゃんでさぁ。 ……ああ、懐かしいなぁ」
ボクはもう、春奈には一生アタマが上がらない気がする……。
「春奈ぁ、もう勘弁して? もう二度と言わないから」
ボクはそれはもうガックリうなだれながらそう言った。 心なしか背中の翼もしな垂れてる気がするよ……。
「にひひっ、分かればいいの、分かれば。 さぁて、じゃ次はっと……」
「ま、まだ何かあるのっ?」
ボクは春奈の言葉にカラダが縮み上がる気がした。 そしてきっと間違いなく翼も縮こまったはずだよ……。
そしてその言葉の主の顔を見る。
そこには、今までにもましていたずらっぽい顔を浮かべた、それはかわいらしくも小悪魔的な春奈の笑顔があるのだった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
どうしてこうなった?
ボクは春奈に強引に引っ張り出され、なぜか市内の駅前通りにあるショッピング街に来てる。 さらに恥ずかしいことにボクは女の子の姿のまま、連れ出されてちゃったのだ。
恥ずかしいからやだって抗議したら、「学校に行くのと違って変身する必要ないのに、わざわざ男の姿になる理由ないじゃん?」って一笑に付された……。
そりゃそうなんだけど……、はっきり言ってボクの姿はかなり目立っちゃう。
身長は140くらいのチビだけど、何しろ髪の毛は紫がかった白、肌の色も真っ白な上に、左右で色が違う、赤と碧の目なんだもん。
腰まで伸びた長い髪は、春奈がセットしてくれていて、サイドを簡単に編みつつ後ろに流し、ヘアピンで留めた上に紫色のかわいいリボンでアクセントをつけ、後ろ髪はそのまま下ろした髪型にしてくれてる。
お洋服も春奈のちょっと前のボクにも合うサイズのもの(お古がピッタリだなんてなにげにくやしい……)を見繕って着せてくれてて、それがまた女の子然とした、赤っぽいドット柄のカーデにチェックのキュロットスカートっていうかわいいカッコで、余計に目立つわ、恥ずかしいわで、……もう勘弁してください!
ボクはもうさっきから道行く人が向けてくる視線に戦線恐恐とした気分で、春奈から一歩も離れず、寄り添うように歩いてる。 ここにくるまでのバスや電車の中でもそうだった。
こんなことならいっそ転移して来たかったくらいだ。
ボク自身、短距離の転移なら出来るんだけど、これはほんとに近距離しかできず、せいぜい4・5mくらい離れたところまでが精いっぱいだ。 例によってボクの持ってる生体エネルギーじゃ、長距離を跳ぶにはたんないんだってさ……。
でも、ディアなら……ボクはそう思い、ボクたちの後ろを無表情な顔でついて来てるディアを見る。
そう。
ボクたちが目立っちゃってるもう一つの理由。 それはちゃっかりディアが付いてきてるからなのだ。
ボクと春奈が、市内のショッピング街へ行ってくるってディアに言ったら――
「街に出向くのですか? それは私も興味があります。 それにフォリンからも街に出ることがあったら色々、お店のチェックをしてきて欲しいとの要望もありましたから」
なんてこと言って一緒に行くって言い出したわけで。
それにしてもフォリン。
あんた、ほんとにボクたちの地球の監視者なの? ボクにはまるで観光かショッピングに来た旅行者っぽい……変な異星人としか思えなくなってきたよ――。
ちなみにディアにも、「ずっとここにいて船は大丈夫なの?」って聞いてみたことあるんだけど……帰ってきた返事といえば。
「私はクラウディア。 私は一つ所のみに存在するにあらず。 あらゆる所に存在しえる、まさに地球で言うところの神と呼ばれても……」
などとまた中二発言をしかけたので、慌てて「もういい!」ってそれ以上の発言をやめてもらったりしたのは、なかったことにしたい記憶の一つだ。
要は、船にもディアはちゃんと居て、こっちのディアとは相互補完される存在らしい。 まぁ、よくわかんないけどね。
ともかく、まるで保護者のごとく付いてきたディアのアバターは、中身はともかく見た目はモデル体型、きれいな銀髪の長い髪にエメラルドグリーンの目、おまけに無表情とはいえ超のつく美人さんで、年齢的にも20才前後の大学生くらいに見える外見なわけで。
それがどういうことになるかというと……
目的地である、お洋服のお店が並ぶショッピング街につくまでに、ナンパを仕掛けてきたお兄さんたち多数。
ボクはそのたびに春奈の腕を両腕で抱えるようにして怯えてしまってた。
「ちょっとお姉ちゃん。 何怖がってるわけぇ? それに妹の脇に隠れる姉ってどうなの? だいたい、お姉ちゃんが本気出したらこんなやつらちょちょいのパッってとこじゃない~?」
春奈が呆れてそんなことをボクに言ってきたりしたけど、そんなこと言ったってナンパしてくる男の子たちってなんか……いやなんだもん。
「ねぇねぇ、お茶でも飲みに行こうよ?」
「キミたち、かわいいよねぇ? お姉さんと買い物~? いいとこ知ってるから案内してあげよっか?」
「彼氏いるの? どこ住んでるの? 今度一緒に遊びたいからアド教えてよ~」
「わぁ変わった目の色してるねぇ? カラコン? どう、今から一緒にお話ししない~」
もうほんと、鬱陶しいったらなかった。
だいたいディアのことお姉さんって……、ディアはどう見ても外国人でしょ? って、ああ、ボクもぱっと見、日本人っぽくない……かも?
だいたいは、「まだ中学生です」とか、「急いでるんで」、「待ち合わせに遅れますから」とか言ってかわしてたんだけど、中にはしつこく絡んでくる子たちもいた。
そんなときにはディアが感情を押し殺したような顔をし、エメラルドグリーンの目でみつめながら、日本語じゃないどこの言葉とも知れない言葉でもって早口でまくしたてると、逃げるように去っていった。(どうやらそれがディアの星系での共通語らしい)
まぁ、強行手段に出てきたとしても、ほんとのほんとに危なくなったらディアがいるから転移も出来るし……やりたくないけど、実力行使だって出来る。
春奈を傷付ける奴がいたら……その時は、容赦なんてしてあげないんだから……。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「これなんかイメージにぴったりって感じ、どうどう?」
ほんと、どうしてこうなったの~?
春奈ったらよくこんなお店知ってるよね? って思い、入って早々聞いてみたら、こんちくしょう! ディアから聞いたらしいんだけど……それってどーせフォリン情報だよね。
っとにあの、イケメンボイス異星人め~。 いや、イケメンボイス改め、オタク異星人だよ。
あっ、あと沙希ちゃん情報もちょっと入ってるらしい。
沙希ちゃんっていうのは、ボクが小学校のころ骨折して入院したときに知り合った女の子で、中学は違うけど今もたまにウチに遊びにきたりしてて、春奈とも仲良くしてる。 そして、何しろかなりのアニオタぶりを発揮してる子なのだ。
で、それを踏まえてここに来た理由っていうのが、
「お姉ちゃん、魔法少女をイメージしてるにしてはさ、あんな白のワンピじゃ寂しすぎだよ! やっぱ、もっとふわふわしたスカートとか、かわい~デザインのワンピやブラウスとかさぁ……」
なんてことを言うわけで……ボクはがっくり来てしまった。
ナンパにまであって街に出てきた理由がこれって……どうなの?
今思い起こせば、沙希ちゃんにもボクはしょっちゅう魔法少女のコスを着せてみたいって言われてた気がする……。 絶対いやって断ってたけど、まさか実際着せられるハメになるなんて……。
そんな訳でボクは春奈に、やたらフリルの付いたふわっとした感じの短めのバルーンスカートや、原色をふんだんに使ったウエストのやたら細い、肩口はパフスリーブになったワンピースとか……俗にいう、こ、コスプレっぽい感じのお洋服を、次々あてがわれては姿見の前に立たされてる。
どうやらここはそれ系統のお洋服を扱うお店らしく、ちょっと非現実的な、かわいすぎな衣装っていったほうがいいような服がたくさん並べられてた。
そして驚いたことに、店内にはボクみたいに黒髪じゃない女の子とかもいたりして、自分のことを棚に上げてまじビックリしちゃった。 だって、中には緑や紫色した髪の女の子とかまでいたし……、それに目の色も違ってる子もいて、青や、赤っぽい色の子とかもいたりする。
驚いてるボクに春奈は笑って、
「お姉ちゃん、驚きすぎ。 あんなのウィッグに決まってるじゃん。 お姉ちゃんみたいに天然でそんな髪の色の子なんてまず居ないって」
ううっ、ウィッグってカツラのことらしい。
それに目の色もカラコンはめてるだけだって……。 ど、どうせそんなことだとは思ったけどさ、でも、ちょっとボクとおんなじ見た目の子が居るかと思ってうれしかったのに……。
「あのお客さま。 よければ試着されてはいかがですか?」
春奈にお洋服を色々あてがわれてたボクを目ざとく見つけたようで、店員さんが声をかけてくる。 その若い女の子の店員さんも、見れば赤っぽい髪に青い目をして、制服はメイドさんみたいなデザインだ。
ちぇ。 はいはい、これもウィッグにカラコンなんだよね? あ、髪は染めてるってこともあるかな?
はぁ……ボクちょっとなげやりになっちゃってるかな?
「ほら、お姉ちゃん、店員さんもそう言ってくれてるし着て見せてよ? さぁさぁ」
春奈はボクがたまたま手に取ってた(色々ある中じゃ、それが一番落ち着いた感じの衣装に見えたんだけど、後から聞いた話だとゴスロリって言われてる衣装だった)黒基調のワンピースと一緒にボクを試着室に押し込んだ。
ボクはもうあきらめて中に入り、手渡された黒いワンピースに着替えるため服を脱ぐ。
今のボクはお母さんが買って来てくれたパンツをはき、女の子用のAカップのブラを付けてる。 最初はそんな女の子の下着なんて付けたくないって抵抗してみたんだけど、初潮を迎えたような子がそんなわがまま言ってどうするの? って笑顔のまま叱られちゃった。
あの時のお母さん、怖かったな。
そんなことを考えながらも黒いワンピに袖を通す。
それにしても何? この服。 やたらとレースのフリフリがいっぱい付いたふわっとしたスカート。 肘から袖口にかけてもふわっと膨らんでて、もちろんここにもフリルが付いてたりする。 腰からスカートにかけては花柄の淡いピンク色をした、前が開いたオーバースカートのようなものまで付いてたりする。
とりあえず着てみたものの、これでいいのか良くわからないまま、とりあえず試着室のカーテンを開ける。
「わぁ、お姉ちゃん、すっごく似合ってる! 何その姿~、反則だよ!」
春奈がそういってやたら褒めてくれる。
そして店員さんまで、
「ほんとにすごくかわいくてお似合いです! それにそのきれいな紫がかった白い髪が黒い衣装に映えて素敵です。 すごくきれいなウィッグですねぇ? その目も透き通るかのようにとってもきれいで、しかもオッドアイ。 なのにまるでほんとの目のようで……どこでお求めになったのか教えて欲しいくらいです!」
ううっ、店員さん。 ボクの髪ウィッグじゃないし……それに実際ほんとの目だし。 ボクが店員さんの言葉に内心グチってると、
「ふふふ、店員さん、何いってるんだか? お姉ちゃんの髪はホンモノだよ? 目だってカラコンじゃないほんとの目なんだから~」
うわっ、春奈! 何わざわざばらしちゃってるの?
ボクは恐る恐る店員さんを見る。 はわっ、店員さんの目がキラキラしてる!
「ほ、ほんとなんですか? こ、この紫がかった白い髪、ほんとの髪なの? この赤と碧のきれーなオッドアイも? すごい、すっごーい! きゃー」
もう店員さんってば、接客中だってこと忘れてボクの見た目に夢中になっちゃった。 そうやってその子が騒ぐもんだから他の店員さんや、お客さんまで集まってきて、口々にボクの髪や目の話しが伝わっていく。
ボクは春奈を恨みがましくにらんでやった。
「えへへっ、ごめんなさい、お姉ちゃん。 お姉ちゃんのかわいさ、つい自慢したくなっちゃって」
そう言って舌をペロっと出して謝ってくる春奈。
ちなみにディアは店内にまでは入ってきてなくて、どこか外をうろついてるみたいだ。 まぁ、交感できるから迷子になることはないし、どうせフォリンの変態視察ってやつの手伝いでもしてるんだろけどさ。
それにしてもこの状況。 どうしたものか?
「うわぁ、ほんとかわい~」
「ええっ、あれホンモノの髪に目なのぉ? まるでホントのアニメのキャラみたい~」
「ロー○ンメイ○ンのお人形さんみたい!」
そう言いながら勝手に写メ撮ってる子までいるし。
「はぅ……」
ボクはもういたたまれなくなって、試着室の中に入ってもうこれ以上はないってくらいの速さで元のお洋服に着替え、試着室を出る。
出てきたボクを春奈がちょっとバツが悪そうに見て、騒ぎの元の店員さんも申し訳無さそうな顔をして、調子にのったことを謝ってくれた。
周りではまだ、多少ざわめきは残ってるもののだいぶ落ち着いてきたみたい。 お店の人たちがどうにか静まるよう動いてくれたみたいだ。
「お姉ちゃん、ほんとごめん。 まさかこんなに騒ぎになるとは思わなかったよ、反省してます」
そう言って今度は手を顔の前で合わせ、ちゃんと謝ってきた春奈。
うん、素直な妹はきらいじゃない。
「もういいから。 でも今度からは気をつけてよね? もう」
ボクはそう言って春奈のアタマをコツンとたたく。 春奈のほうが妹のくせに背が高いから、叩くにしてもちょっと伸びしなきゃなんないのがシャクだけど……。
「はーい」
春奈はそういいながら、ボクに怒られてるのになぜかうれしそうに笑ってた。
変なやつ。
で、結局、試着させてもらったその衣装と、それに合わせるオーバーニーを買ってそのお店を出た。 店員さんからはぜひ写真を撮らせて欲しいって懇願されちゃったけど、それは丁重にお断りした。
これ以上騒がれるのはゴメンだよ。 ボクは目立つのはきらいなの。 それになんか見世物みたいだしさ。
春奈はボクと逆みたいで、せっかく言ってくれてるんだから撮ってもらえばいいのにって言って、残念がってた。
姉妹とはいえ、ほんと正反対の性格だよね。 ボクお姉ちゃんなのに……なんかほんと頼りないし。
いくら強い力を手に入れたってこんな性格じゃあんまり意味ないかもしんないよね。
でも、春奈を……妹一人守るくらいの力なら、なんとか出せるようがんばれるとも思う。
そんなとりとめのないことをつらつら考えてたら、春奈が言う。
「今度からフォリンさんとかに頼まれてどっか行くときはこの衣装着て行ってよね? かわいいだろうなぁ、コレ着て翼を広げて飛んでるお姉ちゃんの姿! くぅ~、想像するだけで鼻血でてきそう!」
「春奈ったら、こ、この変態! おまえまでフォリンの真似してどうすんのさ?」
ボクがあきれてそう言ってたら、
「お任せください。 その入手した衣装、この私が強化し、蒼空の動きやその環境に耐えられるものにして差し上げましょう! いや、それよりも強化服のようなものにしたほうがいいでしょうか? それならばいっそ、エネルギーパックを装備できるようにして、蒼空単独でも粒子砲が撃てるように……」
「ちょ、ちょっとディア、おまえいつの間に戻って? つうか、いいから! そんなことしなくても! 今日の衣装になるのはいいけど、せめて普通のままの衣装でお願い……」
ボクは春奈、ディア、二人を見比べ、そしてどこまでも続く青い空、ボクの名前の元になったその空を見上げて嘆息をついた。
そして――。
神様お願い、ボクに平穏な日々をください。
思わずそう願わずにはいられない……そんな一日だった。
出来てすぐ投稿。
ごめんなさい、推敲ほぼなしです。




