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そらリゼーション  作者: ゆきのいつき
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第一話 非日常への招待? 

短期決戦で挑む所存です。

全10~12話くらい? の予定です。


読んでいただけるとうれしいです。

よろしくお願いします。

ソラリゼーションとは? (solarisation/solarization)


 露光過多によってモノクロ写真の黒と白が反転する現象……。


 あるいは、


 ある物質が高エネルギーの電磁波にさらされることにより、一時的に色が変化する物理学上の現象……。


 のことである!


 お互いつづりはちがうけど。




☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆




 それは予期せぬトラブルから地球に落ちてきた。


 その形は、世に数多ある某りんごのスマートフォンにソックリな外観をしていたが、もちろんそのサイズはスマフォとは一線を画する……こともなく、まさにそのものだった。


 が、そんな見た目やサイズはともかく、そのスマフォ……いや、その落下物はれっきとした星間宇宙船なのである。

 そんな星間宇宙船なのだが予期せぬ・・・・トラブルで地球に落ちてきている真っ最中なのである。どんなトラブルかは予期してなかったからわかっていないのだ。


 兎に角、落ちてきていた。


「うーん、なんかやばくないか?」

「ソウデスネ。ヤバイデスネ。イカガイタシマショウカ?」

「いや、おまえがそれいっちゃダメだろ! つうか何で片言?」

「イエ、ソノホウガフンイキガデルカト……思って!」

「意味わからんわっ!」


 微妙な掛け合いやっているのは、このスマフォ……いや、星間宇宙船の指揮官であり、クルーでもある、要はただ一人の乗組員……と、宇宙船全ての機能を司どる、制御用マザーコンピュータであり、乗員のあらゆる面倒を見てくれる管理人である、AI(人工知能)だ。


「とりあえずディア、お前に全て任すから……。頼む、なんとかしてくれっ!」


 なんとも頼りないやつである。


「了解です、フォリン。泥舟に乗ったつもりで安心シテクダサイ」

「だめだろ。 それ!」

「じょうだんの通じない人はキライです」

「……いいから、早くなんとかろ!」


「了解」


 素でそう答えたのを最後に、ディア(ディアは愛称であり、正式名称はAI=クラウディア。読み変えると、アイ=クラウ……いえ、たいした意味は)は船の制御に専念しだす。

 いや、正確にいえばマルチタスクなAIであるディアは、それこそずっと間断なく墜落回避にむけリカバリーを続けていたわけだが……。


 フォリンと呼ばれたその男? は、目の前にどんどん大きく広がって見えてくるその光景。大きく4つに別れた弧状列島に吸い込まれるように近づきつつある、その危機的状況に大きくタメ息をつくのであった。



 それにしてもあまり緊張感がないように見えるのは気のせいなのか?



☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



「はぁ、今日は3通……。もう、ほんと勘弁して欲しいよ。ボク男なのに、なんでおんなじ男からこんな手紙もらわなきゃなんないのさ~!」


 ボクは中学の帰り道、公園の自販機のそばにあるベンチに一人座り、ガッコに入って以来の恒例行事となりつつある、手紙の確認作業を行ないながら一人愚痴ってた。

 手紙というのは有り体に言えば、ラブレター。普通、ラブレターもらえばうれしいものだと思うでしょ? ボクだって女の子からもらえたら、そりゃうれしいよ!


 でも。


 ボクがもらうのは揃いもそろって男からばかり。ほんと……ばっかじゃないの?


 ボクはそれでも中身の確認もせず捨てるのはさすがに、アレなんでこうしてここで確認作業をしてるわけなのだ。それに、万が一、もしかして女の子からって可能性もゼロじゃない! ……かもしれないし?


「えーと、柚月ゆづき 蒼空そらさま……好きです。一目見たときから……なんたらかんたらと。はい、ありがとうっと」


 ボクは軽く流し見すると、次の手紙に移る。


「……男でも気にしません。というかどんな女の子よりかわいいです! 男同士だって出来ることはたくさんあります。付き合ってください~? うへぇ、これどーゆう意味なんだろ?」


 気持ち悪い!

 ボクはさっさと最後の手紙を見る。


「えっと、伊藤 美咲……。み、みさきぃ? わぁ! もしかして、お、女の子からだっ。マジなの?」


 なんと最後の手紙は予想外に女の子からのものだった。どうやら、いっこ下、妹の春奈はるなとおんなじ一年生の女子みたい。ボクは期待に胸を膨らませてその手紙を開封し、急ぎ中身を見る。


「私の先輩を返せ! 男のくせに私の先輩、横取りするだなんてサイテー! ば~か! おまえの□△◇」


 ううっ……この先、あまりの内容にとても読み返せない。女の子が書いたとは思えないよ。

 せっかく女の子からのラブレターかと思ったのに……。ひどいや。


 で、でも、やっぱここで見て正解だ。


 こんなのお家で見てて、春奈に見られたりなんかしたら目もあてられないよ。たぶん一週間は余裕でからかわれちゃう。

 ほんと妹のくせに、兄であるボクをからかうのが趣味みたいなもんなんだから困ったやつだよ……ったく。


 ボクは、ため息をつきながら何とはなしに空を仰ぎ見た。


「んっ? なんだろ、あれ?」


 ボクが見つめる先には、またたきながらやたら強く光り輝く、小さな……って、ええぇ?


「あ、あれ、なんかこっちに近づいてきてない?」


 その光点はみるみるその大きさを増し、増し……ということもなく、それでも今では目が眩むような輝きと勢いとなり、更に悪いことにボクの方に向って突き進んでくる。


 これなんかすっごくヤバイ気がする。


 に、逃げなくちゃ!


 そう思ったのが先か、まばゆいばかりの光に飲み込まれたのが先か。この際どっちでもいいことだけど……それは、気付いてからほんの一瞬の出来事で。


 ボクにはどうすることも出来ず、そこからの記憶がとぎれた。



☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



「状況を報告して、ディア」


 フォリンは先ほど起こってしまった、不可抗力的、偶発事故についてAIのディアに状況の報告を求めた。


 非常にまずいことになったことだけは確かである。


 なにしろ観察対象となっているこの惑星の原住民に、発見されるどころのレベルでなく、危害を加えてしまったのだから。それもあの状況からして間違いなくバラバラどころか蒸発してしまっていてもおかしくない。このことがアレ・・にばれたりなんかしたら……。


<ディア、どうした?>


 いつもなら即答のディアからめずらしくレスが返ってこない。いぶかしんだフォリンはもうひとつの会話手段である遠隔感応通信を使って呼びかける。


<すみません、フォリン。久しぶりに私の能力を発揮できる機会を得たものですからつい我を忘れ、作業に没頭していました>

<我を忘れてって……おまえなぁ、この船のAIであるお前がそんなことでどうするんだよ!>


 コンピュータとは思えない発言をするディアに思わず突っ込むディア。


<大丈夫です。船の制御はマルチタスクでしっかり管制していますので>

<なら、私の話にもすぐ対応できるだろーが>

<そういえばそうですね? いや、ついうっかり!>

<うっかりって、おまっ! ああっ、もういい、つうか普通に音声での会話でたのむ。遠隔感応通信はなんか頭がかゆくなってきて好かん>


「了解」

「それで、どうなっている? 原住民は」


 ようやく話しが進みそうな気配にフォリンはディアに再び問い直した。


「はい、先ほどの当船の状態異常の結果、この惑星の地表スレスレまで落下することになったことについては後ほど詳しく報告しますが。今問題とされているのは原住民を巻き込んでしまったことに関してだということですので、そちらの解説と成果をお見せいたします」


 ディアはそう告げると、フォリンの体が一瞬滲んだようにぼやけたかと思った刹那、その場からフォリンの姿は消失していた。

 そして時をほぼ同じにして、フォリンは別の場所へと転移する。

 転移した場所にあったのは、半透明なピンク色をした培養液? のようなものが入った直方体の容器。容器に付属するような装置も、開きそうな隙間も何もなく、まさにただの直方体である。


 その中には全裸で横たわるようにして浮いている、先ほど巻き込んでしまったであろう原住民(=蒼空)の姿。


 それにしてもその容器、どこかで支えられることもなくただ空中に浮いているように見える。いかな仕組みでそのようなことが可能なのか? 先ほどの転送といい、フォリンたちのテクノロジーは理解の範疇を超えるもののようだ。

 

「いや、それにしてもこの惑星の原住民にあのような能力があったとは、私のデータベースもまだまだ更新の余地がありますね。そっくりそのままの再現は難しかったのですが、現状、持ち得る全ての技術を使って再現する努力をしました。会心の出来といってもいいと思われます。いかがです?」


 そう問いかけてくるディアにフォリンは疑問を投げかける。


「ちょ、ちょっと待て! 何だその能力ってのは? この惑星の原住民にはこれといった能力はないはずだ。天の川銀河中、いや銀河群を見渡したとしても、もっともひ弱で、短命で、無能力な人類だったはず」


「おや? それはおかしいですね。私もこれ以上の失敗をおかしてはいけないと、この船の全データベースと資産・資源を駆使し、それこそ申し訳ありませんがあなた個人の秘匿データベースまで含め、完璧な情報をもとに、かの原住民の体を修復したのですが?

 まぁ、あなたの情報はかなり曖昧で漠然としたものでしたが、私の演算・解析能力をもってすれば、それからでも割り出すのは容易なことでしたが」


 フォリンのその言葉に訝しげな声とともに疑問を呈しながらも、自慢するディア。


「まてまて、ディア。最初から順序だてての説明を要求する。

 まずは原住民はどうなってしまって、それをどうして、そして今こうなったのか? 順番に説明してくれ!

 ……それにしても私の秘匿データベースにって、どうやって侵入したんだよ? それについてもあとでキッチリ説明を要求する!」


 いきなり結論ありきで説明しだしたディアにそう言って、順序立てた説明を求める、フォリン。勝手に自分のデータベースを覗かれ? 釈然としないものの、とりあえず現状把握が第一だ。


「これは失礼しました。あまりの自信作の完成に、つい我を忘れてしまいました。では説明させていただきます」


 とてもAIとは思えないディアの発言に頭が痛くなるフォリン。そんなフォリンにおかまいなしに説明を始めるディアなのであった。



「すると何か? 原住民と接触する、その直前に当船の不干渉フィールド内に取り込み蒸発はなんとか防いだと。しかし、それ以前にすでに当船が接近したことによるフィールドの影響で、生体組織が破壊され、生物としての活動はすでに停止していたと。そういうことなんだな?」

 

 フォリンはめずらしく険しい表情を見せディアに確認する。


「はい、他にも内骨格は全て粉砕され、その影響で体液の70%以上が流出、蒸発していました。そのため、例の申請をさせていただいたわけですが。なんでしたら船内に取り込んだ際のメモリーフォログラムがありますので確認しますか?」


 ディアのその言葉に思わず顔をゆがめるフォリン。だ、誰がそんなスプラッタフォログラムを見たがるっていうんだよっ! 内心激しく突っ込みを入れる。


「うくっ、いい! そ、それで、その原住民の修復に私の個人的な、その、秘匿データベースを使ったっていうのはどういうことなんだ?」


「どういうこともなにも、あなたがこちらの原住民の文化、特にこの落下した弧状列島のアニメといわれる文化にご執心だったようですから、その辺りから情報を入手するのが一番的確であろうと判断しました。

 いや、本当に驚きました。まさかこちらの原住民に空中を飛んだり、エネルギーを収束して打ち出すなどといった特殊能力があるなどとは。他にも空間転移など、我々の技術にも劣らない能力も見受けられましたし」


 フォリンはディアのその言葉に開いた口がふさがらない。そしてディアは尚も続ける。


「原住民の姿は、直前の船外映像から割り出すことが可能で、比較的簡単に再現出来たのですが性別の判別に苦慮しまして。

 外観的特長は雌のようなのですが、生殖器あたりは損傷もはげしく、無難なところで遺伝子情報から性別を入手しました。ですが、遺伝情報は雄だと判明はしたものの、フォリンのデータからこの星の原住民は雌のほうが優性で、この原住民も外見的特長はどう見ても雌でしたし、迷惑をかけたこともありますので雌として修復を進めました」


 最後の言葉にさらに言葉を失い青くなるフォリン。


「ちょ、おまえ、雄を雌にって……」


「まずかったでしょうか? 生物としては、強い存在になりたがるのではないのですか? ここの原住民はあなたがた雌雄同体の種と違って、自分では性別を選べないようではありませんか。

 それならば雌で再生したほうがこの原住民にとっても有益かと考えたのですが?」


 フォリンは頭をかかえた。


 まず、あろうことかこいつディアは、私のこちらでの趣味である原住民の文化調査で集めた資料であるところの……アニメ、しかも現地名でいう「魔法少女モノ」のアニメをベースとしたらしい。

 魔法少女モノ――私も始めて見たときはそのすばらしさに衝撃を覚えたものだ。あの年端もいかない少女たちが健気に目的にむかって立ち向かうさまは、異人種ながら感動を――っと、いかん。今はそんなことを考えている場合ではっ。


 それにしてもディアにはまだまだ、生物の雌雄の感情のようなものまでは理解できないか? まだ生まれて2年ほどしかたってない子供だからなぁ……。


「ディア、あのだな、生物の性別というものは、そう簡単に入れ替えていいものではないんだ。それで……その原住民の性別はもう確定してしまっているのか?」


「はい、それはもう確実に。まだ繁殖行為が可能となるまでにはいたってはいませんがその機能もしっかりと。

 いったいどこがご不満なのです? まだ何か足りなかったでしょうか? それでしたらご安心を。他にも色々と能力を付与してあります。それこそ私が確認したデータに入っていた能力は余すことなく網羅したと、自信を持って断言できます!」


 フォリンはもう何も言い返す気力も失ってしまったのだった。

 そして何よりも命を取り戻すために使わざる得なかった"例のモノ"。それを思えば今さら何があったとしてもたいしたこともないと思えるのだった。


 そしてその哀れな原住民の横たわるケースをおもむろに確認する。


 そこには全裸で横たわって培養液に浮かんでいる、抜けるように真っ白な体をもつ小さな女の子の姿。

 その小さい頭からは、紫がかった光の加減でキラキラと輝く白い髪が腰まで伸び、閉じられたかわいらしいまぶたには髪の毛同様に白いまつ毛。

 すっと通った鼻梁にちょんと上を向くかわいらしい鼻、そして開きかけの桜色をしたやわらかそうな小さな唇。

 そしてそれらのパーツはまるで美の女神が配置したかのように整えられ、それを収める輪郭は少女らしく張りがあり、それでいて滑らかな曲線を描きつつ、あごの先まで続いている。

 触れば折れてしまうのでは? と思える四肢が、まだ膨らみの少ない、でもきれいな曲線を描く少女の体に続いていて、まだその幼さの残る姿からは、すさまじいばかりの保護欲をかき立てられる。


 その姿に、すでに事故の影響は微塵も見つけることはかなわない。

 

 そんな少女にされてしまった蒼空は、今は当然意識もなく、力なくケース内で漂いながら死んでいるかのように眠っている。長い髪の毛は培養液の中で広がり、まるで白いケープをまとっているかのようだ。


 フォリンはそれを見て、あまりの美しさに異星人ながら驚いてしまう。

 異種人種とはいえ、彼の星系にも地球人類と同タイプの種族もいる。各種族の美的感覚の教育も受けているのだ。それにフォリンたちは比較的地球人類と類似の形態をしていて美意識も近い。見惚れても不思議はないのかもしれない。


 ディア……やってくれた。

 どうしろってんだ、まったく。


 フォリンはこれからのことを考えると憂鬱な気分になり、つい現実逃避をしてしまう。


「この際だ。 まじ魔法少女にでもなってもらうか」


 冗談半分につぶやいたこの言葉。

 それをしっかり聞き逃さず記録しているものがいる。



 もちろん……ディアなのだった。



懲りずにまた新作投入してしまうなんて……。



早く終わらせて楽になろ……う?

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