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エピローグ 死亡


 33歳、独身。

 名前は工藤ハヤト。

 現在東京都にある中学で体育教師をやっている。

 そんな、しがない俺の人生について語るとしよう。


 俺は昔から子供が好きだった。

 もちろん、変な意味でではない。

 良くも悪くも周りの影響を受けやすく、些細なことでも傷ついてしまうそんな時期。

 それでも大人になるため、夢を叶えるために前へ進もうとする、そんな彼らが好きだったのだ。



 子供に何かを教えようと思ったのは、大学2回生の頃。

 当時は夢も希望もなく、ただ生きているだけの人生だった。

 そんな俺を変えてくれたのは家庭教師先での中学生だ。


 大学2回生なんてのは大人と子供の間で彷徨っているそんな年。


 しかし俺は子供でいたいと思っていた。


 だが、家庭教師で生徒を教える時に気付かされた。

 自分はもう、与えられる立場ではなく与える立場なのだと。

 それに気づいてからは、教えるのが楽しくなり、気づけば子供を好きになっていた。


 だから、その後勉強に勉強を重ね教員免許を取った。

 得意な科目とかはなかったが、生徒を熱心に考えてくれる体育教師が自分の中学にいた事を思いだし、体育を専攻する事にした。

 その先生は、時に厳しくそして強く怒ってくれるような先生だ。


 昔はうざがってはいたが今思うと自分のためになり誤った道へと進ませないでくれたのだとわかる。


 その先生に憧れ自分もそうなろうと思った……



 が、時代が良くなかった。


 今の時代では、体罰はもってのほか。キツく注意するだけでも周りの目を気にしなければならない。


 それもあってか、同じ学校の先生たちはどれだけ楽に無難に生徒を送り出せるかしか考えていない。


 でも……


 俺だけは生徒のことを考えていたい。


 そう思った。


 ある年、地元で有名な不良少年たちが中学に進学してきた。

 周りの先生たちは絶句し、その生徒たちを煙たがっていた。


 だが、俺だけは燃えていた。

 中学生なんてのは物事の良し悪しが分からない年だ。

 周りの大人のせいでこうなってしまったに違いない。

 俺だけはこいつらのこと見捨てないそう思った。


 ある時は、タバコを吸っていることを注意し、殴られ。

 ある時は、喧嘩で警察に補導された生徒たちを迎えに行き、謝り。

 ある時は、学校で生徒をいじめている所を止めに入り強く叱った。

 

 手を出しそうになった時もあったし、酷いいじめをしたときはいじめられた子の考え彼らを諦め冷めた目で見たくもなった……


 でも……でも、


 そうしなかった。


 いじめられた子のケアはほかの先生に任せ、俺はいじめた彼らを更生させようと躍起になった。

 

 頑張って頑張って頑張って…すり減りながらも彼らに寄り添う。


 それを続けていたらいつしか不良少年だった彼らの目に光を戻し始めていた。


 そして遂にいじめていた生徒に謝ったのだ。

 もちろん、それでどうこうなる話ではない。

 いくら中学生とはいえいじめた過去は消えないし、いじめられた生徒の心は癒えることはない。


 それでも彼らに俺の言葉が通じて前を向かせられたのだと思った。


 いつしか、不良少年だった彼らは自分の過去と向き合うことのできる、若者へと変わっていたのだ。


 ある時、その中の一人の生徒に相談を受けた。


「自分が真面目に生きようとすることをよく思わない人がいる。」と。


「相手はヤクザの事務所に出入りするような大学生らしくどうしても逃れられない。だから助けてほしい。」

 

 そう相談してきたのだ。

 中学生が大人に頼るなんてのは当たり前だし、ここからは大人の両分だ。


 まず、周りの先生に相談してみたが全員が自業自得だと口を揃えて言う。

 ならば警察だと、警察に相談に行くもヤクザと間接的にも関わりがあるのならその生徒も徹底的に絞るだの何なのと言われた。


 過去の過ちが消えないことも、それを一生かけても償えない事も分かっている。

 それでも誰かが手を差し伸べて正しい道へ導かないとそれこそ取り返しのつかないことになるのだ。


 だから、俺ご何とかしなければならないと思った。


 その生徒に詳しい話を聞き、その大学生へ直談判することにした。


 俺だって一人の人間だ。

 自分がかわいい。

 ここで逃げ出せば自分だけは表の世界で飄々と暮らしていける。


 ……がそんな事、知ったことではない。


 一人の生徒が俺を頼ったのだ、それに応えなければならないに決まっている。



「どうか、うちの生徒と関わらないでくれ。」


 そう頭を下げた。

 何度も殴られ、蹴られ、それでも「うちの生徒とは……」と呟き続けた。


 今思うとこの大学生も周りの大人が手を差し伸べてくれなかった彼らの未来だと思うとなぜだか我慢できた。


 しつこく引き下がらない俺に痺れを切らしたのかある一本の電話をその大学生は掛ける。

 もちろん誰にかけているかは想像ができた。


 その後、現れたのは俺に相談してきた生徒だった。


 俺を見て「先生……」と涙を浮かべてくれた。


 その姿だけで俺が殴られた甲斐があったってもんだ。


「この先公、お前が殺れよ。」


 大学生の男はナイフを取り出しそう言った。


 ふざけるなよ。

 うちの可愛い生徒が頑張って更生しようとしてるんだ。


 それをお前は……


 震える俺の生徒を見て俺はニヤリと笑った。

 いや、その大学生にも向けた笑顔だったかもしれない。


 謎の笑顔に困惑した大学生は手元がナイフを持つ手元がおろそかになる。


 俺は咄嗟にそのナイフを奪った。


「大人を信じて信頼してくれ。自分を信じてやれ。正しいことが何なのか分からないのは俺達大人の責任だ。それでも俺達を諦めないでくれ。」


 俺は説教臭いことを言い始めた。


 こんな場面でも説教だなんて、俺も先生になれたんだな……


「それとな……大人を舐めるなよ!!」


 そう叫ぶ。

 このナイフを突きつけるべき相手は分かっている。


 この大学生か……


 否!!!


 大人を信頼できないでいるこの大学生も見捨てない。


 二人とも"心"から救うにはこれしかない……


 俺は手に持っていたナイフを自分のはらに突き刺した。


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