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地獄太夫  作者: 四谷軒
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05 見世

 托鉢をするでもなく、僧侶は川の水を飲み、そこらの残飯を食らい、くさいにおいをさせていた。

 町衆は眉をひそめていたが、そもそもこの時代、町の外に出ればそういう人はちらほらいる。

 地獄太夫のいた京の町には、ごまんといた。

「あないな糞坊主、早よ出てったらええのに」

 女郎屋は毒づいた。

 万が一にも自分の店に入られたら困る、と言う。

「一度でも来たら、そっから難癖つけられて、何度も何度も来る奴や……特に」

 女郎屋は地獄太夫を上から下まで眺めた。

 このような傾城傾国の女がいるのなら、なおのことと歎息した。

 そういうものか、と地獄太夫は首をかしげた。

 しかしそれもまた、そういう男の性なのかもしれないと思った。

「綺麗なべべを着て、うつくしゅう紅をさした女なら、さぞかしよかろうという気持ちがあるのかも」

 何だ、僧侶というたぐいの者でも、結局、今までの男と同じかと、地獄太夫も歎息した。



 女郎屋の建物は楼になっている。

 すなわち、上の方にいる女はそれだけ上玉で、遠くからでも見えるようになっている。

「まさに見世いうやっちゃ」

 女郎屋は堺の町一番の楼を誇る自分の店を鼻高々に自慢していた。

 その一番の高みに地獄太夫はいた。

 その夜。

 夜だが、堺の町は眠らない。

 灯火の絶えないこの町の路を。

 その影は、ゆらり、ゆらりと動いて来た。

「何え」

 地獄太夫は京言葉でその疑問を口にした。

 路を、黒い、何か蠢くものがいて、こちらを見ていた。

「……ふうん」

 地獄太夫の目が、その「もの」を捉え、正体を明かした。

 どうやら、うわさの僧侶らしい。

 堺の町で一番の楼の、その高み。

 そこにいれば、当然、地上の者たちから、目立つ。

「こういう時は、見せぬが花、なんだろうけど」

 大陸や、さらに遠方の南蛮の影響も入ってきている堺には、即物的に見せつけるという方が善いとされる風潮がある。

 その方が新しい、という意味で。

「……まあ見せぬも見せるも、みんなみんな、そういう風にした方が、楽しい、という考えだろうけど」

 結局のところ、やることは同じではないか。

 地獄太夫が如意山で初めてのそれをした時から、それは変わらない。

 そう、たとえあの黒い僧侶が自分にそうしたとしても、それは変わらない。

「…………」

 地獄太夫はふと、あの僧侶がどういうものか、試してみたくなった。

 あの僧侶が女犯をしたいというのなら、それもいいだろう。

 しかし。

「それは単に、堺で一番の女なら、さぞいいだろうという気持ちでそうしているのか」

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