第26話:スパダリ先輩とソファドン
「先輩、ちょっとリモコン取ってください」
先輩の入試から数日、束の間の休暇を謳歌していました。
「ああ」
ソファの向かいに座る先輩が、リモコンを手に取って、私へ渡そうとした時でした。
ズルッ
カーペットが滑り、あろうことか、先輩が私に向かってダイブしてきます。
「えっ!?」
私は咄嗟に、顔前に手を出して衝突を防ごうとしました。
「…大丈夫かい?」
反射的に閉じた瞳を、ゆっくりと開けると、整った先輩の顔がありました。
「…近いです」
ソファドンの形になってしまい、気まずい雰囲気が流れます。
「あの…」
何も発さずに口角だけ上げて、先輩は退いてくれません。
「先輩…!」
「はは、やっぱりキミは可愛いね」
「…バカにしてるんですか?」
あんまりにも先輩が動いてくれないので、私は両手で先輩の肩を軽く突き飛ばしました。
トンッ
「あっ」
それと同時、先輩があっけない声を出しました。
そして次に鳴ったのは、リモコンが床と衝突する音でした。
バンッ!
ようやく動いて、リモコンを拾おうとした先輩が止まります。
「先輩…?どうしましたか?」
先輩は、小さく低い声で言いました。
「落ちた…」
「え?」
「この時期に物を“落とす“のは何だか縁起が悪いじゃないか」
「自業自得です」




