第17話:陰キャ後輩と温泉
「いい湯ですね、先輩」
もくもくと湯気が立ち込め、熱気が私たちの疲労を吸い取ってくれます。
やっぱり温泉に来てよかったですね。
「ああ、そうだね。これは色々と癒える」
含みのある言葉と、気持ちの悪い視線を感じます。
じーっ……
「なんですか…?」
ニコニコして、あまりに飽きずに私を凝視してきます。
「いや、可愛いなと思っただけだよ」
先輩はよく私を褒めてくれますけど、未だに自分の魅力を理解できません。
この際です、ちょっと聞いてみましょうか。
「先輩は私のどこが好きなんですか?」
口を閉じて、しばらく思考して出された答えは
「顔」
……最低すぎます。
「あ、あとはありますか?」
「体かな」
「最低ですね…」
さっきまで格好の良いスパダリに見えていた先輩が、今では最低クズ男にしか見えないです。
しかし先輩が微笑みます。
「冗談だよ、性格も人柄も、キミの全てが好きだ」
…恋人なので当たり前です。
「そういうキミは聖奈のどこが好きなんだい?」
先輩の好きなところ、ですか。
「私のことを大切にしてくれるところ、ですかね」
「それは聖奈もキミに感じているさ」
なんだか良い感じの雰囲気になってきました、これこそ恋人ですよね。
もっと語り合いたかったのですが、少しのぼせてきました。
「私、あがりますね。先輩はまだ入ってても良いですよ」
そして、私が湯船から出ます。
「おお、眼福だ」
「やっぱり体目的じゃないですか…?」
その後、私たちは伊豆のグルメ等を堪能したのち、気付けば日が暮れていました。
「そろそろ帰らなくちゃですね」
こんな突発的な旅をしていますが、明日から学校が始まるのです。
「新幹線乗らなくちゃですよね」
「いや、その必要はない」
その言葉と、ドンピシャのタイミングで先輩の背後にリムジンが止まります。
「お嬢様、篠原様、お迎えに参りました」
車から降りてきたのは黒スーツの女性でした。
後に聞いた話によると、先輩専属の運転手らしいです。
「さあ、帰ろう」
先輩の手を、私は掴みました。
冬休みもとうとう終わり、学校生活が始まるのです。




