王都公爵邸編 その31 えっ?幼女??
今の所は世話になってるお家の息子なので深呼吸をして気を落ち着かせる俺。
腰を抜かして口をアワアワしてるバカに一応声もかけたし(返事はないが)もういいかとその場を後にしようとするも
「ま、待て!オレの護衛を放ってどこに行く気だ!?」
「どこって、お約束通り竜の死体の回収ですけど?」
何だよお前の護衛って?最初から俺は竜退治に来ただけでお前の事なんて一切感知してないぞ?
「竜の回収だと?・・・よし、本当に殺せたか確認に行って来い!回収には騎士団を回す!」
「いえ、私一人で回収出来るので必要ありませんが?」
「バカかお前は!!竜だぞ?アレを持って帰ればオレの力の誇示になるだろうが?ああ、心配するな、お前はオレの近衛兵として取り立ててやる!」
「・・・出発前のお約束をお忘れです?」
「ふんっ、お前のようなガキが本当に竜を退治するなんて普通は夢にも思わんだろうが!最初からちゃんと説明しなかったお前が悪いのにどうしてオレがそんな約束を守らないとならないのだ?ああ、それからそのお前が持っている魔道具だが平民が持つには少々危険過ぎる。今すぐオレ様に差し出せ!」
お、おう。ちょっと何いってんだかわからねぇ。あれか?疲労がポンっと飛んでいく薬でもやってるのかコイツ?
ちなみにこの世界ではそれを回復ポーションと呼ぶ。いや、呼ばねぇよ。
うすうすと言うかそこそこと言うか絶対にそうだろうなとは思ってたけどやっぱり約束を守る気はないかー・・・。
はぁ・・・まぁこれくらいで彼女から受けた恩は十分返せたかな?
「畏まりました、両方差し上げますので『ハリスは恩をすべて返した』と署名捺印を添えて一筆願えますか?」
「恩?まぁよかろう、おい、誰か書くものを出せ!!」
てことでこれで俺も自由の身である!
とくに修飾も何もなく汚い字で本当に『ハリスは恩をすべて返した』の一言だけを書いた羊皮紙を受け取り時空庫にしまう。
そして『魔導ライフル』をバカのお供に投げて渡す・・・受け取ろうとした奴が抱えきれずに足の上に落として転げ回ってるけど俺のせいではない。
普通に軽々と扱ってるけどそれ要するに『鉄の塊』だからな?本体の軽量化とかは一切してない。おそらく30キロくらいはあるんじゃないだろうか。
「では、今度こそこれにて失礼」
「おい、どこに行く?お前は俺の家来だろうが!勝手な行動は許さんぞ!!」
後ろでバカが何やら言っているがスルー。
会話の成り立たない人間と長々と会話を続ける意義を見いだせないからな。
「では我々もこれにて。第三騎士団出立用意!!」
「お、お前ら!フザケているのか!?!?俺の命令が聞こえないのか!!オレを誰だと思っている!!おい、お前ら、あいつを捕まえろ!!」
誰って・・・声の大きいバカだろう?そうだな、お前のことはこれから『ノイジークレイジー』とでも呼んでやろう。いや、長いからバカのままでいいや。
てか捕まえるって・・・そこのお前の取り巻きが?俺を?ビ○コの真ん中の白いクリームくらい甘いわ。
いや、アレは甘さ控えめだな。美味しいよねビス○。バターのきいたのちょっと高そうなのが好きだった。
「・・・もしも私に喧嘩を売りたいというのならそれはそれで構いませんが『公爵家に受けた恩は既に返し終えた』ので遠慮なくお相手させていただきますよ?」
満面の笑顔で答えてやったら取り巻き連中が後ずさりしていった。
取り巻き、何人かはまともな人も居るんだけどね?集団になると知能が下がっちゃう現象発動中なのか。
そんなこんなでお馬にまたがり闊歩闊歩と向かうは・・・どこにしよう?
いや、とりあえずは北都だな。そんなに余分な食料も路銀も持ち合わせてないし。
食べ物は買えばいいとしてお金・・・どうしようか?
Cさんの実家が確か魔水晶を扱ってるって言ってたしそこで火とか水の魔水晶を幾つか売っちゃうか?
「ミヅキ、もうヒトガタに戻っても・・・いや、そもそも蛇がデフォだから今のままのほうがいいのか?」
「そうでもないぞ?」
「うお!?いきなり首筋からストンと膝の上に落ちてくるんじゃない、馬がビックリするだろうが」
ほぼひと月の間俺の首に巻き付きっぱなしだった蛇。
最初は巻き付いている事に違和感があったが無くなったら無くなったでまた違和感があるという不思議。
てか後ろっからパカラッパカラッと速度の揃った騎馬隊が追いかけてくる足音がする。
「・・・子爵様ー!・・・って、えっ?幼女??」
追いついてきたのはもちろん第三騎士団、隣にならびかけるのは騎士団長。
「ええと・・・そちらのお子様は?」
「・・・拾った?」
「いえ、王都のお屋敷でもお見かけしたことがある方なのですが」
「・・・企業秘密で」
まさかずっと一緒に居て最初から幼女は首に巻き付いていましたって言っても信用してくれないだろうしなぁ。
「ま、まぁそれは・・・良くないですが結構です。今回は子爵様のおかげ様を持ちまして騎士団人員に誰一人欠員を出すこと無く任務を終えることが出来ました!ありがとうございます!!」
「礼の言葉とお気持ち、確かに、しっかりといただきました。でも私も一応職務でしたから。あんまりお気になさらずに」
「はっ!ありがとうございます!・・・しかし、私のような者が言うことではありませんが、あのような男にあのように強大な力を持った魔道具を渡してもよろしかったのですか?」
「魔道具?ああ、私が使ったアレのことでしたら大丈夫ですよ?むしろあの男には似合いの武器でしょう。アレ、使い捨ての魔道具で一度使っちゃえばただ重いだけの鋼の棍棒ですから」
「それは・・・はははっ、確かにあの男にはピッタリの装備品ですな!」
そこから第三騎士団と一緒に野営しながら北都へと戻る。
うん、帰り道は半分の日数で戻れたよ。訓練の行き届いた兵隊さんは行軍に無駄が無くてとても素晴らしい。
久しぶりの北都、城塞都市の門を潜ると住民による出迎え。
何事だ?あ、騎士団が先触れを出して竜を退治したって伝えてあるからなんだ。
まぁほっといたらここまで来ちゃってたかも知れないもんね、ドラゴン。
お馬で移動してたからそこそこ遠いように見えるけど飛んだら一日もかからないくらいしかない距離だもんね。
そりゃ嬉しそうに皆で笑顔で出迎えくらいはしてくれるか。
てか俺先頭で騎士団長と並んで入場しちゃったんだけど?さすがに騎士団の花舞台に他人が同席するのは・・・えっ?
「竜殺しのハリス子爵様万歳!!」
・・・おい、どうして俺の名前を出した!!
騎士団長、そんな『どうですか?ちゃんと報告は上げてますよ!褒めて?』みたいな顔でこっち見られても・・・。
残念だけど俺にはおっさんんをなでなでするような趣味はないんだ。
仕方がないので騎士団長の隣でキリッとした顔をしながら出迎えてくれた人たちに手を振って応える。
膝には満更でもない顔をした幼女を乗せて。いや、今回に関しては蛇、何もしてないからな?
何ていうか・・・こういう光景にちょこっとトラウマがあるんだよなぁ・・・。ほら前世でさ。
まぁ今回は完全なる善意でのお出迎えなので一人だけ盛り下がるわけにもいかないしな。
あ、知った顔がいた!まぁシーナちゃんなんだけどさ。
表情を笑顔に変えてシーナちゃんに大きく手を振って挨拶。あ、俺だって知らなかったのか。
今気付いたようでビックリした顔でオロオロとしながらも慌てて両手を振り返してくれた。うん、元気そうで何よりだ。




