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使い潰された勇者は二度目、いや、三度目の人生を自由に謳歌したいようです  作者: あかむらさき
王都公爵邸編

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王都公爵邸編 その6 姫騎士VS暗黒卿

 王都に到着してからそろそろ1週間になる。午前中に出掛けて夕方帰ってくるフィオーラ嬢とはあまり顔も合わせられていない今日此頃。

 おそらくはリリアナ嬢の治療に出向いているのだと思われるが、そんな毎日出向かなければいけないほどの、言い換えるならば『治癒魔法が効かない』ないしは『治療を阻害される』ような状態なのだろうか?

 少なくともクマが憑いてる・・・じゃなく付いて行ってるんだからそれこそ死んでなければどうとでもなるはずなんだけどなぁ。


 ・・・リリアナ嬢の事を思うとドクンと俺の心臓が跳ねる。

 まぁ本当にそこまで状態が悪ければ相談してくれるんじゃないだろうかと思うのでこちらからは聞かない。

 美少女二人、かなり仲が良さそうだし無理はしないはず。


 忙しそうなフィオーラ嬢に対して俺が何をしているのかと言えば


「あんこくきょう、かくごー!」

「ふはははは!この暗黒卿、まだまだ若者には負けるわけにはいかんのだー!」


 ・・・公爵家の中庭でお子様と遊んでいた。


 最初の晩餐の翌日の晩餐会――到着初日の晩ご飯で料理にちょこっと辛い点数つけたら翌日に料理を作らされたヤツな――で知見を得た次期公爵『コーネリウス』様・・・の2人のおこちゃま。

 その時に出したソルベ(シャーベット)が非常にお気に召したらしく作り方を教えてくれとキラキラした目で懇願された。


 小汚いこまっしゃくれたクソガキはあまり好きではないがお上品で素直そうなお子様には好意的な俺。

 てか下の男の子が(日本に居た頃の)甥っ子に雰囲気が似てるもんだから無下にも出来ず・・・。

 まぁ作り方も何も『手動のアイスクリームメイカー』の魔道具を使っただけなんだけどさ。筒の外側冷やして真ん中でクルクルまわすだけのアレ。


 で使い方を教えてあげたら凄く嬉しそうにするんだよね。むしろその日はお子様2人で一日中シャーベット作ってた。腱鞘炎になりそうなほどハンドルクルクルしてた。

 もちろんそんなに食べたらお腹壊すのだがそのへんは育ちの良い貴族様の御令嬢と御令息、『下々の者(欠食児童の様にその様子を見つめるメイドさん(北都組含む))』に分け与えていたので大丈夫。


 2人でキャッキャと『ハリス凄い!!』コールしてくれるもんだから調子に乗って「おじさんこんなのも作れるぞ―」と『ガラス細工の薔薇(割れると怪我しちゃうからむっちゃ強化して縁も丸めたガラス製)』とか『ガラス細工の子供たち(お子様2人のフィギュアサイズの彫像)』とか『ガラス細工の』・・・ガラス細工ばっかりかよ!って言われそうだな。

 だって王都の公爵家にも使用済み魔水晶の廃棄物がそれなりにあって全部貰っても構わないって言うからさ・・・。


 で、男の子ならむっちゃ喜ぶだろうと食堂の壁に掛かっていた『竜殺しの騎士の絵画』で描かれていた騎士の装備のコピー商品・・・じゃなくレプリカの武具を子供用を作ってあげたのさ。

 素材は革と布。金属製は流石に子供には危ないからね?


 そしたら当然のようにものすごい勢いで食いついてきた!


 ・・・ご長女が。


 おい、男の子、どうした!?あ、フィギュアの方が良いんですか?

 え?フィオーラ嬢が持っていた精霊様のヌイグルミ?ええ、まぁ、アレも作れますが。欲しい?

 わかりました、素材が整い次第ご用意させていただきます。


 で、男の子用をサイズ調整してご長女にお渡しするとまぁ小さいのに凛々しいのなんの。

 おそらく将来はフィオーラ嬢にまさるとも劣らない美女になること請け合いである。

 二人共お父様はあんな(野蛮人とインテリヤクザ)なのにお母様の血だけで美形になられるとか・・・いや、もしかしたらキーファー公爵家男子の血には美少女因子が含まれている可能性も微妙なレヴェルで存在しているのかも・・・。


 最初はメルちゃんがお相手してたんだけどね?女騎士と姫騎士様の対決!超燃える!いや、萌える!

 でもほら・・・メルちゃんってあれじゃん?融通とか利かないし?子供の相手なんてしたこと無さそうというか無いみたいだし。

 ご長女に聖剣(革製、スポーツチャンバラの刀みたいなの)でポコポコ叩かれてたんだけどオロオロするだけで何も出来ない。

 見る見る下がっていくご長女のテンション・・・。


 あれだよ?子供と遊ぶ時は全力で相手をするのが大切なんだよ?孤児院にいた時は全力で働いてた(スキル経験値を稼いでた)だけの俺が言うのもなんだけどさ。

 せっかく遊び道具を作っておいてアレ(挙動不審なポンコツ相手)では少々可愛そうだと、仕方がないので俺がお相手で悪役を演ることに。

 同じく革製品で作った真っ黒な全身鎧と裾の長いマントに身を包みお屋敷の二階の窓からさっそうと飛び降りて一言


「ふははははは、そんな雑魚の相手でご満足かな聖剣の姫騎士よ!さぁ、その腕前を私に見せるが良い!!」


 ・・・どうなったと思う?次時代の公爵家を担うお世継ぎの前にいきなり現れた真っ黒な格好の不審者に公爵邸の警備の騎士が総動員されたのである。

 いや、お子様たちは全員声で分かってくれてたんだよ!


 それなのにポンコツ女騎士が


「曲者!?はっ!?若君達のお命を狙っての狼藉者か!!皆の者、出合え!出合え出合えぇい!!」


 なんて叫ぶものだから俺が「えっ?あの、ちょっ!?」とか言ってるうちに50人ほどが集まる。さすが公爵家、末端まで訓練が行き届いて行動が素早いですね。

 そこから始まる大立ち回り。ちなみに俺の装備もご長女と同じく革製の剣(短いスポーツチャンバラ用)。鎧着た相手を叩いてもポコポコ言うだけ。

 そこから半時間、必死になって避けて避けて避けまくる。だって遊んでただけなのに公爵邸の兵隊さんに怪我させるとか出来ないもん。

 半時間経って騎士隊長みたいな人が「あれ?コイツ不審者なんだよな?どうしてあんなくにゃくにゃした棒でポコポコ叩いてくるんだ?」と疑問を持つ。

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