北都・公爵館 その13 俺・・・これ以上は我慢できないんだっ!!
お風呂に入れるなら、少しくらいのデメリットなら、許容範囲でしょう!?だって3年間入ってないんだよ!?
それ以前にここん家に来てから3日間下着を着替えてなかったのもどうなんだって話だけどさ。身体は毎晩手ぬぐいで拭いてたから・・・。
日も暮れていき、着替えも用意できたので『お風呂っお風呂っ♪』とワクワクしながらその時を待つ、ひたすら待つ。
・・・が、特に誰も呼びには来てくれない。そもそも何時から誰から入るのかも知らないんだよなぁ・・・。
部屋の中で熊の様にウロウロとしてる間に晩御飯の時間である。御飯ついでに情報収集もするか。
「えっと、お風呂は明日ですけど」
丁度知り合い(Aさん)のお向かいの席が空いていたのでこれ幸いとごはんを受け取って着席する。
「えっと、お風呂って何時からなのかな?そもそもの所俺も入って大丈夫なんだよね?やっぱり順番的には最後になるのかな?石鹸とかシャンプーとか備品は完備?洗うビニールのタオルは無いよね?」
などと早口の質問を投げかけた俺に対するアンサーがその言葉であった。
・・・なん・・・だと。
三日後って、三日後って言ったじゃないですか!?『当日、明日、明後日』じゃなくて『明日、明後日、明々後日』の三日後だなんて聞いてないですよ!!
絶望、まさしく絶望である。
「無理・・・もう、もう俺・・・これ以上は我慢できないんだっ!!」
「それはもう絶対にエッチなお話ですよね!?う、受け入れる覚悟は出来ていますっ!!」
どう考えても風呂の話だろうがっ!!あとその覚悟が必要な時は来ないから捨ててしまえ。
てなわけでちゃんと最後まで御飯を頂いてごちそうさまでしたをしてからお風呂場に向かう。
食べ物の大切さとありがたさは孤児院暮らしで十分身にしみてるからね?残したり粗末にしたりはダメ、絶対!
なぜだかメイドさんがぞろぞろと後ろから付いて来てるけど・・・気にしてはいけない。
AさんとCさんとイカレメイドさんも混ざってるけど気にしてはいけないのだ。
さて、女子寮のお風呂場。初日に場所を教えてもらっただけで中には入って無かったけど・・・お昼に見せてもらった公爵家の家族風呂よりも狭い。
脱衣所、洗い場、湯船と全部が半分くらいの広さ。タイル張りではなく木の床に木の壁で湯船も木製とお金も掛かって無さそうだし。いや、檜風呂とかだと逆に高く付くのかな?
あ、鳥かごみたいなヤツ(火の魔道具)はここにも付いてた。
水は井戸から人力で往復して運ばなければならないが薪じゃなく魔道具で沸かす事が出来るので多少は楽・・・なんだろう、きっと。
竹筒みたいなのでフーフーしながら風呂沸かすのとかしたこと無いもん。
よく知らないけどあんなので吹くよりも団扇とかで扇いだ方が絶対に良い様な気もする。肺活量は鍛えられそうだけどさ。
「お湯の用意したら・・・一番に入っても大丈夫です?もちろん勝手に魔道具は使いませんので」
「えっ?それは・・・大丈夫だと思いますけど・・・でも魔道具使わないとお湯沸かせないですよ?この時間からお水を汲むのも大変ですし・・・」
困惑顔のメイドさん。しかし言質は取った!
「お湯、500リットルっっっ!!」
少々力が入りすぎている気もするがコマンドを唱えて魔法を発動させる。
前回とコマンドの内容が違うのは魔導板さんに新魔法として登録したから。初登録の魔法が『お湯』、熱湯ではなく42度のお湯なので温度的にお風呂専用魔法である。
発動してしまえば既に見慣れたクルクルと回りながら大きくなっていく水の玉。
湯船にゆっくりと下ろすと・・・うん、普通に溢れた。
よし、待ちに待ったお風呂タイムだ!!ヒャッハー!!
「「「「「・・・」」」」」
目を見開く(ついでに口もポカンと開いてる)見学組のメイドさん達。
いや、あの、みなさんとりあえず出ていって貰えますかね?裸になりますので・・・。
「ふぅ・・・」
うん、いい、実によかった。お風呂最強。
えっ入浴シーン?俺しか入ってないのにどこの層に需要があるんだよソレは・・・。
てか洗うタオルは無いし石鹸は油っ臭いしシャンプーは泥だしと色々問題点が見つかったので大至急改善しないと駄目だな公爵家(のメイド寮)の風呂。
そう、トイレに全力を出さなければいけない様に、風呂にも全力を出すのは仕方がないのだ!これはもう大自然の摂理と言えるかもしれない。
もちろん湯船に浸かる前にお昼に作った普通のタオルに石鹸をガシガシと擦りつけて身体を洗ったからね?
3年分の垢だからいっぱいだと思うじゃん?毎日ボロ濡れ手ぬぐいで擦ってたからそうでもなかった。それでも2回洗ったけどさ。
ついでに髪も石鹸で洗ったらキッシキシになった。あと油っくさい。
湯上がりのふわっとしたバスタオルの肌触り・・・パイル生地最高。もちろんスキルじゃなく手芸(手縫い?手織り?)で作れる気はしない。
脱衣所から廊下に出ると・・・そこそこの人数のメイドさんが立っていた。無言で囲んで見つめられるとか恐怖しか感じないんだけど?全員表情筋に仕事させて?
「お、お先です?あ、お湯が足りなければ呼んでもらったら足しますんで」
男の入った後なのでちゃんとお湯は張り替えてきた。
・・・そしてその後そこそこ遠慮のないメイドさんたちに5回も出させられた・・・もちろんお湯の話だからね?
てかさ、お湯を継ぎ足しに行くのは良いんだけどさ、どうして自分たちが風呂に入る前に呼びに来ないの?それも5回とも。
一応タオル・・・じゃなく手ぬぐいで隠してるけど・・・薄いから透けてるからね?
何なの?ギリギリのライン見極めてるの?黙ってたけどそこそこアウトの人居たからね?
薄布を透過して見える突起物とか茂みとか。ここが天国か・・・。




