孤児院編 その11 くっ・・・殺せっ!!
・・・
・・・
・・・
いやいやいやいや
いやいやいやいやいや
どうして追い打ちでヤラカシてるんだよ!馬鹿かよ俺!!後あんまりイヤイヤ言ってると古い時代の邪神様とか呼び出しちゃう!!!
あ、あれは『いやいや』じゃなくて『いあいあ』だった。
俺の見上げた先に立つ人物。
お高そうな毛羽立ち一つ無い外套に付いたフードをかぶっていても光り輝くような美貌は隠しきれず、少し稚気なきょとんとした顔でこちらを見つめる超スーパー美少女。
外套の中に右手を入れると・・・薄紫に染められた(おそらく絹製の)扇子取り出し音をたてながらバサッと広げ口元を覆う。
てかいきなり懐に手を入れるのとか止めてくれるかな?刺されるかと思って体が防衛反応起こしちゃうからね?美少女って気付いてなかったら右手掴んで投げ飛ばしてるとこだぞ?
「ふっ、ぷふっ、くふふふくふっ・・・」
「ええっと・・・何と言いますか、ほら、あの魔法がですね、そう、昔回復の魔法をお願いする機会があったようななかったような?そこはかとなくお姫さま(おひぃさま)をぞんじあげてありおりはべり?」
「ちょっ・・・ちょっと・・・まっ・・・あったのかしらなかったのかしらどっちなの・・・ふふっ・・・ふふふふふふふふふ・・・」
何がツボに入ったのか分からないが笑い続ける美少女。
「いや、あの、なんといいますか、お初にお目にかかりますといいますか、いや、そうじゃなく、本当に・・・ご無礼いたしましたぁぁぁぁぁぁ!!」
「ぶふっ!ふっ、ぐふっ、ちょっ、ちょっと、どうして飛び上がったのかしら、この子・・・くるし・・・ふっくっ・・・」
俺氏、あぐらをかいた状態からのジャンピング土下座をかます。例えるなら空気でピョンピョン跳ねるカエルのおもちゃ?
しかしまぁ何と言いますか、お笑いになられているお顔がとてもお美しいですね。てか大丈夫かなお嬢様?お腹抱えたまま呼吸困難起こしてるけど・・・。
それから十分程が経過し、なんとか息を整えられたお嬢様と改めてご対面。むしろそっと立ち去ろうとしたらお付きの騎士様に左手をガッチリと掴まれてむっちゃ睨まれた。
てか騎士様、女騎士様なんですね。細身で黒髪ショートカットの性格のキツそうな美人。
なんかこう・・・むっちゃテンション上がる!そう、女騎士はこうでなくちゃ!アレだよね?ア○ルとか弱いんだよね!?・・・いかん、落ち着け俺。
「お嬢様、この者が私を見る目がすこぶる気持ちが悪いです」
「誤解です騎士様!気持ちが悪いのは目ではなく顔全部です!」
「ごふっ・・・」
うん、今まで女騎士イコール『オークorトロール?』みたいなどちらを選択しても何の得もない人かどうかも怪しい連中しか見てこなかったからちょっとね?
性的な目で見つめちゃってごめんね?
そしてちょっとした自虐ジョークでまたお嬢様が呼吸困難になりかける。はたまた女騎士に睨まれる俺。
「くっ・・・殺せ!」
「いいだろう、望み通り手打ちにしてやろう」
「殿中でござる!殿中でござる!」
様式美でいらんことを言って危うく刃傷沙汰とか勘弁してつかぁさい。
そしてさらに十分経過。
冷静になると少々どころかかなりはっちゃけちゃった俺。だって女騎士様ノリがいいんだもん。横でお嬢様が爆笑してくれるモノだから日本人としてはついついね?
改めて最敬礼の形を取り挨拶する。最敬礼、アレな『斜め45度』のヤツな。さすがに片膝を突いたヤツはこの顔ではカッコがつかないのでやらない。
「改まりましてご挨拶させていただきます。この様な場所でお姫さま(おひぃさま)のご尊顔を拝し奉ります栄誉に浴しましたること身に余る光栄にございます」
「あら、これはご丁寧なご挨拶痛み入りますわ。失礼ですが私わたくし、あなたのお顔を拝見したことがございませんの。お名前を伺ってもよろしくて?」
「下賤の身なれば名乗るのも烏滸がましくはございますがハリスと申します」
「ハリス・・・ハリス・・・どこかで・・・ああ、あなたがあの!」
さすがに『顔、見たことあっても火傷で見分けつかないよね?』とは言わない。空気は読まないとな!
そしてあのがどのなのか物凄く興味があるけど碌な物ではなさそうなので聞き返すことはしない。リリアナ嬢のお知り合いだからね?
てか隠れて『何してんのあいつ?』って顔でこっちを観察してるちびっこ連中と教会関係者、見てないで助けろ下さい。
「ふふっ、そう・・・今日はこれから新年の礼拝がありますのでご挨拶だけにさせて頂きますわね?」
「これはお急ぎのところお時間おかけいたしましたこと誠に申し訳ございません」
お互いにちゃんとした貴族のご挨拶をして離れる。
どうやらいろいろな失言失敗失態は見逃してもらえそうだ。
・・・新年そうそうなかなかにハードな出だしだったな・・・。
あ、そう言えばさっきの美少女についての情報がまったく出てないな。
まずお名前は『フィオーラ』嬢、歳はたしか俺より4つ年上で御年『18歳』・・・のはず。
結婚したとは聞かないからまだ未婚だったと思う。むしろ婚約したとも聞かないから上級貴族にしてはそこそこの行き遅・・・ゲフンゲフン。
家名は『キーファー』。
うん、そうだね、名前だけは既に出てきてるよね。
俺がいつも彫っている女神様の元ネタ、公爵令嬢の聖女様ご本人のご登場である。
公爵令嬢と言えば悪役令嬢のイメージが強い昨今(?)では有るが彼女に関して悪い噂など一切聞かない。まぁ何かあっても公爵家が握りつぶすだろうが。
澄んだ月光の様なリリアナ嬢の銀髪と対を成す太陽の光の様な輝く金髪、見つめられただけでひれ伏してしまいそうな神秘的な美しい瞳、そして貧・・・賓乳。
キルシブリテ三大美女の一人で『光の聖女様』と呼ばれる王国一の回復魔法の使い手だ。
うん、どう考えても恋愛物語ならメインヒロインだな。
まぁ俺の好みはお付きの女騎士ちゃんだけどな!あのキツそうな瞳、はっきり言って最高である。




