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【書籍化】 使い潰された勇者は二度目、いや、三度目の人生を自由に謳歌したいようです  作者: あかむらさき
新しい同居人編

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新しい同居人編 その12 と言うような事がありまして

 勝手知ったる、と言うよりも俺が設計して建て替えた商館なんだから知ってて当たり前な建物の応接室と言うか会頭室に


「ペルーサ、久しいな!・・・ん?ああ、すまないな、どうやら商談中だったみたいだな」


 聞いていたけどあくまでも『あ、誰かいたんだ?』ってていで入っていく。

 まぁこちとら貴族様だからね?特にここ(ディアノ商会)の後ろ盾は俺だって認知されてるからこう言う態度でもそれほど問題はないのだ。

 そして何やら難しそうな顔をしていたペルーサの顔がホッとしたような笑顔に。


「これはこれは閣下、ようこそお越しくださいました。ええ、商談と言いますかなんと言いますか・・・ねぇ?」


 ペルーサの対面、紅茶の入ったカップの置かれたテーブルを挟んだ向かい側に座る男をじっと視る。

『グラン・カーネ』。先に聞いていた様に『ノルド商会』の人間の様だ。・・・この国では。


「失礼ですがアプフェル伯爵様とお見受けいたします」

「・・・ああ、そうだ、アプフェル伯ハリスである。そちらは?」

「これはこれは、ご挨拶が遅くなり申し訳ございません。私はノルド商会のグラン・カーネと申します、以後お見知りおきを」


 椅子から立ち上がり慇懃に挨拶を返す男。歳は・・・30前後くらいか?ギラギラとしたいやらしい目付きが非常に気に障る。

 仲良くは出来ないタイプだなぁ。いや、そもそも仲良くする理由は一切ないんだけどさ。


 だってコイツ・・・明確に『敵』だからね?



 ディアノ商会の会頭室、室内に入った俺はペルーサの隣の椅子に腰掛ける。


「それで天下のノルド商会の支部長様がこのような弱小商会に何か御用でも?」

「弱小などとんでもございません。閣下がこちらにお手を貸されてからはまさに飛ぶ鳥を落とす勢いで成長して押しも押されぬ商会になられた」


 成長してるのに飛ぶ鳥を落とすとか縁起が良いのか悪いのか。

 お互いに目の笑っていない笑顔で微笑みながら話を進める。

 まぁ何か御用も何もここでおおっぴらに扱ってるのは塩と鋼しか無いわけで。

 塩は普通に売り出してるんだからこいつの目的は鋼だけだろう。


「実はこちらで扱っておられる鋼をぜひとも我が商会にも取り扱わせていだだけないかとお願いにまいった次第で」

「ほう・・・流石に王都一の大商会、なかなか情報と行動がお早い」


 知り合いの大貴族様――キーファー家、フリューネ家、ヴァンブス家――に伝えてからひと月たらずでやって来るとか本当に早すぎである。


「商家にとりましては情報と他の方との繋がりだけが力ですので・・・もちろん閣下にも損のないお取引を、いえ、閣下にお望みいただけるならこの先我がノルド商会で大々的に取り扱いをさせていただきたく思いまして」

「ほう、それは痛み入る・・・が、気遣いは無用だ。そもそも鋼に関しては三都(北都、東都、西都)の方及びその繋累の方との直接取引のみとなっているのでね」

「・・・それは『やんごとなき』身分の方とのお取引であっても受けて頂けないと?」

「そうだな、付き合いのない信用のならない人間との取引は望んでいないのでな」


『やんごとなき』ねぇ?そもそも俺も伯爵閣下とか呼ばれるやんごとなき身分なんだけどねぇ?

 ・・・さて、少々困ったな。

 うん、もう先にぶっちゃけちゃうけど部屋に入って直ぐにこの男のことを『視た』んだよね、魔眼で。

 そしたら『ノルド(ノルデン)商会 グラン・カーネ(グランドル・フント) 皇国人』とか書いてるわけさ。

 どう考えても北の工作員じゃないですか?・・・北の工作員、不穏過ぎる響きだなこれ。


 てか大商会の人間なら国内のどこに居てもそれほど怪しまれないし色々とやりたい放題出来るよね?手段さえあれば『僻地の迷宮を氾濫させる』とかさ。

 もちろん商人なんだから他国からの品物の荷留も国内での物資の買い占めもやりたい放題である。

 もちろん現状では俺の妄想だけで証拠が何もないんだけどね。

 ・・・いや、そもそもさ、証拠、必要かな?捕まえて拷問しちゃえば良くね?大丈夫、どれだけ怪我しようが肉体的には死なせないから!

 いかん、完全に思考がそっち側の人間になってる。

 何にしても一度国家の重鎮の方々に相談しないとだな。


「まぁ一応こちらも公爵閣下の紐付きなものでな、好き勝手な事は出来んのだ。そうだな、王族の方のお言葉でもあれば何遠慮なくそちらともいい関係を築くことも出来るのだが?」

「・・・そうでございますか?いや、確かに閣下は北部のお方であらせられますものね。畏まりました、早急にこちらで手配させていただきましょう」




「と言うような事がありまして」

「いや、君本当にどうなってるんだい?こちらでは全く掴めなかった皇国の間諜、いや、工作員の情報をこうもあっさり掴んでくるとか・・・」

「・・・しかし、ノルド商会が、か。卿の言葉を疑うつもりは毛頭ないが・・・確かに辻褄は合う、と言うよりもよくよく考えればそれ以上に怪しい者が居ないほどではあるがな」

「確かに最近の塩不足の流れから見ても納得の出来る話であるな。ノルド商会が他所から持ってこない上に国内で買い上げた分を他国に持っていく、あっという間に国中で塩不足だ。・・・しかし証拠が無い」


 おっさん臭い空間で話をする俺。もちろんここは公爵家、そして集まってるのはいつものメンバーである。


「そもそも・・・お前はどうやってその商人が皇国人だと見抜いたのだ?」

「それはですね・・・まぁもうぶっちゃけますけどそう言うスキルを持ってますので」

「本当にお前と言う奴は・・・それで、どうしたいんだ?」


 ガイウス様が半ば呆れたようにため息を付く。

 そしてどうしたいか聞きたいのは俺の方なんだけどなぁ・・・。

 まぁ取れる策は2つしか無いんだけどさ。


「まぁこのまま泳がせるか捕らえるかしか無いかと。問題は泳がせた場合はこれからどの様な不利益が発生するか分からないですし、捕らえるなら一度で商会の上層部を一網打尽にして皇国との繋がりを示す何らかの証拠品を見つけないと大事になりかねません」


 いくら王政の国でも罪のない大商会を取り潰すとか国内どころか国外からも大顰蹙を買うからね?


「そうだね、さすがにこのまま放置は・・・頂けないな。足を引っ張られ続けながら泳ぐのは疲れるからね」

「しかし一網打尽と言っても・・・どうするのだ?」

「それはそんなに難しくはないかと。いや、何にしても先に裏を取るべきですけどね?もちろん状況証拠の積み重ねにしかなりませんけど・・・。さすがに偽名の人間が1人居たってだけで商会全部がグルだと言うのは少々乱暴ですし」


 簡単に言えば


 北都、東都、西都、港街エルドベーレの4箇所でいつでも動かせるように軍を待機させておく。もちろんこの時点では情報が漏れないように何の為かは伝えない。

 それぞれの領主館でご領主の方々に待機してもらいノルド商会の支部長や副支部長などを2~3人商談のためだと呼び出してもらう。そして俺がそこにいる人間を『視る』。

 4箇所全てを確認――いや、エルトベーレのあいつは黒だから確認は必要ないな)した後3箇所の人間が黒なら全員捕らえて各地の商館も占拠の上で証拠品を探す。

 そして最後に王都の商館を押さえれば終了である。


「どうでしょう?西都には訪れた事がないのでそこまでの移動時間はいただきますが、後は私が飛んで移動しますので」

「確かに手堅い方法だね。決行は出来るだけ早く・・・10日後くらいかな?」

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