東の果て編 その12 君の手料理が食べてみたいかな?
騒ぎ縋り付こうとする商人共を無視して四人で広間から出ていく。
うん、もう少し煽りたおして引っ張ってやった方が楽しかったかも知れないと思う俺は性格が悪いのだろう。
場所は変わって奥の部屋。と言っても最初の日に通された謁見の待合室なんだけどさ。
室内には俺と幼女と美少年と女海賊。パッと見では何の集団かわかんねぇなこれ。
「いやぁ、君がいつ暴れだすかとドキドキしながら見てたよ」
「エオリア卿は俺を一体何だと・・・ちょっと2、3人血祭りにあげようかと確かに思ってたけれども」
「いや、マジで勘弁してね?商人呼び出して簀巻きにした死体で返すとか世間体悪すぎるからね?」
「あ、あの、なんと言いますか・・・お二人は仲がよろしいのですね?」
緊張した面持ちで恐る恐るエオリアに声を掛けるペルーサ。なんなのその女の顔は?やっぱり美少年が好きなの?あれだぞ?俺も世間一般ではそこそこ可愛い稚児さんで通ってるんだぞ!!うん、子供扱いの時点で勝負になってねぇ。
「ああ、彼とは友人だからね。君もそんなに緊張しなくていいよ、これからはヴァイデ家だけじゃなくうちとの取引も増えるだろうからね。そもそも緊張するなら僕ではなく彼にするべきだしね?しかし君はなんてもの持ってるんだよ、さすがに塩の交易特権証書なんて予想も出来なかったよ」
「まぁ公爵家の御令嬢とたまたま少しだけ面識が有ったからな、その伝手でなんとかかんとか?」
「普通は公爵令嬢とたまたま知り合わないし少しくらい面識がある御令嬢が取り次いでくれた程度でどうにかなるようなシロモノじゃないんだけどねぇ・・・ちなみに塩と砂糖はうちにも融通してもらえるのかな?いや、他にもいろいろと隠してるモノがあるんでしょ?」
「んー・・・有るような無いような?今回は世話になったし何か入り用なものがあれば聞くくらいは聞いておくぞ?発表は発送を持って代えさせていただくけど」
だってたまたまで知り合った公爵令嬢が二人いるんだからそれはもうたまたまだろう?意味はわからないけど。
ちなみにリリアナ嬢もたまたまだしアリシア王女は強制エンカウントだ。それもボス戦。
「それは嬉しいなぁ。ああ、友人としてはぜひ一度君の手料理が食べてみたいかな?ほら、君がお手伝いしていた料理屋さんの料理、クシカツだっけ?さすがにお店に僕が食べに行くと騒ぎになるからさ」
「手料理が食いたいとかお前は俺の彼女か・・・まぁそれくらいならいつでも。てか、俺と卿がいつまでも二人で話してたら何も進まないからね?ペルーサ、とりあえず頼みたいことは・・・」
頼みたいこと、しばらくは食料の購入と領地までの輸送だな。あとはお金に余裕ができたら鉱石類の仕入れとか。いや、別に鉱石である必要もないのかな?そもそも安く仕入れられればいいんだから。廃品回収業者的な?
食料はこれからも領内への輸入が必要だから輸送の必要があるけど他の物はこの街の倉庫にでも置いといてもらったら俺が勝手にリサイクルして売れるものは売って資金の調達も出来るし。
ガラスは砂があれば生産出来るから魔水晶の破片はもう集めなくてもいいかな?
「そうだな、何にしても食料、小麦、保存の効く加工食料の購入と輸送から頼みたい。ペルーサ、この街で、いや、港が有るんだしその辺の船で交易してる商会を下請けで利用するのも有りか?儲けが大きくて売れるものは何だ?」
「船を持ってる様な大商会を下請け扱い・・・ふふふっ、ハリス、あんたいい男だねぇ。うーん・・・そうだね、聞いた感じじゃ最近は輸入が何もかも減ってきてる様なんだよねぇ。だから塩も砂糖も今なら大人気商品になると思うよ?他だと特に鉄や銅なんかかねぇ?」
おおう・・・またまた曰く有りげなきな臭い話が出てきたな・・・。魔物で荒れた領内、売り渋られる軍事物資。
そうだね?戦争だね?
いや、まぁまだそこまで情報が揃ってないからなんともかんともだけどさ。
たった一つ言えるのは『俺には関係ない』これだな!
「よし、じゃあその路線で行こう。塩は領内の商人には塩組合と同じ卸値で、国外の商人には倍の値段。ああ、大きな倉庫あるのかな?」
「昔はそこそこの大店だったからね、それなりの倉庫は・・・あったんだけどねぇ・・・今は店の裏に空き地が有るだけさ」
「なら直ぐに案内してもらおう、資源ごみの回収もしてもらって詰め込まないとならないからな」
「ご、ごみを集めるのかい?お貴族様の考えることは訳がわからないねぇ・・・」
もちろん生ゴミは・・・使い道がなくもないけど臭いから今はいらない。ほら、急いで急いでと女海賊を急がせながら店舗へと向かう。
ん?エオリア付いてくるの?いや、そんな寂しそうな顔しなくてもいいけどさ。
ちなみに伯爵家の馬車を出してもらったので楽ちん移動である。
「窓から顔だして『伯爵様のお通りであるっ!ひかえおろうこの下民共がああああっ!!』って叫んでもいい?」
「絶対に駄目だからね?」
そして到着したディアノ商会。
「うん、まぁどこぞの准男爵家よりは綺麗なんじゃね?」
「・・・悪かったわね、そ、そこまでかわらないわよ!」
と、どこぞの准男爵様が少しスネちゃったけども放置しておくとして。
「アレだな、倉庫だけじゃなく本館の方も建て替えたほうが良さそうだなコレ」
「いや、さすがにそんな金はないからね?むしろ倉庫建てる金もないよ?」
「んー、そうだな面倒だから全部で金貨500枚の貸しな?」
てことで建物内に居た人間に外に出てもらう。
「・・・特に何も言葉にする必要もないけど一応・・・収納!」
建物や倉庫の残骸から回りをくるりと囲む崩れかけの壁まで全て取っ払う。その後はもちろん整地作業、そして設計。
「商館の本館は元々有ったものを煉瓦造りで強化すればいいか?外周部は最初有った壁の三倍程度の高さにして倉庫は広さ的に3つが限度かな。設計、商館――」
うん、どっから見ても大商会の趣。
「後は内装・・・どうした?中に入るぞ?」
「・・・いやいやいやいやいやいや、何?今の何?いきなり建物が消えたと思ったらいきなり建物が新しくなって現れたんだけど?!?!?!」
「落ち着け、色男が台無しだぞエオリア。これはあれだ、そう、王都の魔法使いにとってこれくらいは造作もないんだよ」
「王都ってすごいんだねぇ・・・」
「ふふん、私はもう何回も見てるから別に驚かないわよ?」
何故か一人胸をはる幼女だった。




