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2-20 勇者だった人達



広間から出て俺は廊下をひたすら走る。目指すは謁見の間。そこにドアスやマモルがいるはずだ。


幸いにも妨害はなく謁見の間の前、巨大な扉にたどり着く。この奥にいるのは前までは手も足も出なかった強敵たち。緊張で手が震える。


「うっし!やるか!」


パァン!と頬を叩いて自分にかつをいれる。それを待っていたかのように、巨大な扉がゆっくりと動き始めた。


呼び出した短杖を腰だめに構えて魔法を放つ準備をする。


構えているのは、セレナールワンド。放つのは『セレノアサージ』。


そう。魔力をためて一気に発射する魔法だ。そして、今この短杖にはこの城に入る前にフィアに貯めてもらった強力な炎の魔力が詰まっている。


つまり…。


「せぇ、のっ!!」


ドウッ!


地獄の業火が吹き荒れた。


扉が開いた瞬間に、俺は中に『セレノアサージ』をぶち込んだのだ。豪華なカーペット、カーテンは一瞬で灰になり、石像はあまりの高温に耐えられず溶けてしまう。


並の人間なら近づくこともできないような死の領域。しかし、中で待つ者がこの程度で倒れるわけがなかった。


「あぁぁぁあ!『ワールドエンダー』!」


世界が二分される。


部屋の奥から聞こえた男の掛け声と同時に、そう錯覚させられるほどの強力なバリアが展開された。


床に突き刺された長杖を起点に左右に部屋を両断する水色のバリア。発動させていたのはラナの魂を持っているはずの人物。マモルだった。


炎はバリアによって阻まれたあとも荒れ狂っていたが、やがて沈静化。炎も小さくなっていき、余熱を残すのみになってしまった。


部屋の中が明らかになる。


中で生きていたのは三人だった。バリアを張っていたマモル。玉座に座っているドアス。そしてそのそばに控えるセバスチャンだ。


焼け焦げた死体が周囲に散らばっていることから、雑兵はあらかた片付けられたらしい。三人と戦っている時に邪魔が入らない事に少し安心する。


「貴様ッ!ここはドアス様の居城だぞッ!何をしたのかわかっているのかッ!」


床から杖を離してバリアを解除したマモルが声を荒らげてくる。


しかし、俺の返答は決まっていた。


「いいからラナを返せ。俺からはそれだけだ」


「ハッ。そんな事か。…… 壊した、と言ったらどうする?」


身体中から血液が失われたかのような感覚。気がつくと俺はマモルに向かって駆け出していた。


「おまえぇぇぇぇえ!」


手にセレナールワンドを握りしめての特攻。魔法を使うことなど頭になく、もうこの短杖でつき殺してやると言わんばかりの勢いだ。


魂を奪われていてもマモルは元勇者。それも俺なんかとは違う本物の勇者だった男だ。長杖を余裕を持って構えると、俺に向かって魔法を撃ってくる。


「無様だな。吹き飛ぶがいい!『ソニックフォー』!」


マモルが長杖の先端を俺に向けると、そこから青色の光線が発射された。


風属性の最上級魔法である『ソニックフォー』。命中してしまえば、吹き飛ぶどころか体に大穴が空いておしまいだろう。


俺はそれを見て笑ってしまった。


「吸え!杖よ!」


『ソニックフォー』の弾道にセレナールワンドを滑り込ませる。魔力を吸収する素材で出来たこの杖は、マモルの魔法が命中する端から吸い取って行ってくれている!


マモルの顔が一気に険しいものとなる。元々10メートルほどあった距離はもう半分程まで縮まっていて、マモルは俺の間合いの中にいた。


「お返しだ!『コピー・ソニックフォー』!」


マモルに向けた短杖の先端から青色の光線。ソニックフォーが飛び出す。部屋に入る時にぶち込んだ『セレノアサージ』のもう一つの使い方。受けた魔法をそっくりそのまま跳ね返す力だ。


「くそッ!偽勇者如きがッ!」


マモルが魔法の盾を召喚する。しかし急いで召喚したからだろう。強度は低く、『コピー・ソニックフォー』を弾いただけで砕けていた。


俺にとってはまたとないチャンス。短杖をヴィラ=ファルに貰った物。肉体のみを傷つける杖に変えて、マモルへ突き刺した!


「「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」」


お互いの叫びが交差する。しかし、マモルはギリギリで魔法を完成させていた。


「がぁぁぁぁあ!『ウインドブラスト』ォォォ!」


お互いに吹き飛ばされる。


短杖が体に突き刺さっていたマモルはともかく、全体重をかけて押し倒しにかかっていた俺も受身をとることが出来ずに地面に倒れる。


追撃が来るかもしれない。慌てて起き上がった俺の目に飛び込んできたのは胸に空いた傷がどんどんふさがっていくマモルの姿だった。


「ふむ。こんなところか、これ以上手間取るでないぞ」


「あ゛りがたぎ!じあわ゛ぜ!ゲバッ!」


あっという間に傷はなかったことになってしまった。どうやら玉座に座っているドアスが何らかの魔法を行使したらしい。黒い魔力の残滓がドアスとマモルの間につながっていた。


ドアスに礼を言ったマモルは口の中に溜まっていたであろう血を吐き捨てると、ふらふらと猫背のまま起き上がって俺を睨んでくる。


まずいな。


そう思ったのは、敵にヒーラー。つまりは回復役が居ることがわかったからだ。


不意打ちで一度傷をつけることには成功したものの、元の実力では俺はマモルに大きく劣っている。加えて回復までされるとなれば、持久戦になると俺が不利だ。


一撃で仕留めるかそれとも……。いや、それしか道は無い。


セレナールワンドを構えてマモルからの魔法に備える。


しかしこの後、同時に二箇所で大きな変化が起こる。


その兆候は確かに見えていた。




さあ、何が起こるんでしょうね?


過去の話を少し修正しました。

言ったらこの後の展開がバレるので明日活動報告に出します。

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