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2-17 謎の男

気がつくと俺とフィアは黄色みがかった透明な円盤に乗って、空に浮かんでいた。


足元を見ると、闇色のブレスが凄まじい勢いで通過している。


目の前に長杖を持ったメガネで日本人風の男。長杖を円盤に突き立てていて、不思議なことにその体は半透明だった。


「どこで道草を食っていたのかと思えば…。迷い過ぎではないか?ここは地理的にはもう街の外だぞ?」


「えっと。迷ってしまって…」


「限度があるだろう」


冷たく呆れるような声色。流し目でギロッと睨まれて背筋が凍る。


突然現れた男を少し警戒しながら質問を投げかけようと顔を上げると、スカルドラゴンがブレスの第二射を準備しているのが見えた。


「や、やば。まほう、でない…」


フィアが防御魔法を出そうとしている。しかし、先程の第一射を防ぐのが限界だった彼女にはもう魔力が残っていなかった。


すると、何かに感づいたのか男がこちらを振り向く。


「何をしている?僕は敵ではないぞ」


「どらごん。やばくて」


「なんだそんなことか」


焦ったように言うフィアに落ち着くように言うと、男の持つ長杖から一筋の閃光が走る。


その光は一瞬の間にスカルドラゴンの眉間を撃ち抜いた。力を失ったかのように体を構成していた骨が崩れていく。


カラカラと乾いた音を立てて地面に落ちていった骨にはもう魔法の力は感じられなかった。


「これでいいか?」


「あ、はい。ありがとうございます」


「そんなことよりここに何のようだ?そなたたちは王城を目指しているはずじゃなかったのか?まさか本当に迷ったとは言うまい?」


「えっと…」


男と正面から向き合う。黒髪に黒色の切れ目で理知的な顔つきをしていて、上側にだけフレームのついた眼鏡がよく似合っている。


しかし、その目には怒りとも呆れとも取れる色が浮かんでいて、少し萎縮してしまう。言葉に詰まっていると、フィアが代わりにこたえてくれた。


「ん。まよった。ひろいのがわるい。ここはじめてくる」


……。それはだめだろう。


俺がなんとか言葉を選んでいる間にフィアが言い切ってしまった。しかし、返事は好意的なものだった。


「はぁ。初めて来るならたしかに迷うのも頷ける。が、どうやったら王城と反対方向の果てまで迷い込めるのか知りたいね」


「ごめん。なさい」


「ふん。それとお前。そうお前に話がある」


男はこちらを向いて声を上げた。自分のことかと確認すると、どうやら俺に用事があるようだ。


「えっと。何のようでしょう?」


「質問に答えろ。答えたら王城まで送ってやる」


ありがたい。俺はその話を受けることにした。


どんな質問だ!と身構える俺に、予想外の質問が飛んでくる。


「”横浜”。この言葉に聞き覚えは?…その反応で十分だ」


「えっ?横浜ってあの?」


思わず聞き返してしまう。


”横浜”それは俺が日本にいたときに住んでいた街だったからだ。黒髪黒目を見たときからほんのりと浮かんでいた疑問。「彼は異世界人なのではないか」というのが膨れ上がってくる。


「あの!それって!」


カァァン!


床に長杖が打ち込まれる。いつの間にか浮かんでいた円盤が地面についていた。男が円盤から長杖を離すとふっと円盤は消えてしまう。


「その質問に僕が答える義理はないね。それに……」


……僕は君が嫌いだ。


「すみません。うまく聞き取れなかったんですけど…」


「知らなくていいと言った。城に行くのだろう?ついてこい」


「は、はい!フィア。行こう」


……不安はあっても、今は頼らないといけない。


フィアの手を握って少し先で待っていた男についていくと、彼はなぜか俺達を羨ましそうな目で見ていた。


「何でも無い……行くぞ」


少し浮くようにして移動する男。俺達はおいていかれないように小走りになりながら付いて行った。


メガネ…冷静…あれ、どこかで……?

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