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2-2 スライムは意外と強かった

今回少し短めです

 ピコーン!レベルが上がりました!


「どうしてこうなった……」


 俺、ナギサは、木々の間にある開けた空間で夕焼けを見ながら途方に暮れていた。




 時間は遡る。



 意気揚々と門の外に出た俺は、街より徒歩三十分ほどの位置にある雑木林のような場所に来ていた。


 スライムは落ち葉や腐葉土などの有機物を分解して食べていて、木の陰など暗がりに多く生息している。とクエストの依頼書に書いてあったからだ。


 程よく人の手が入っていると思われるその林に入りしばらく探すと、視界の端にぽよぽよと震える謎の影が見えた。


 出たか!と振り返り、呼び出した短杖を構えると、目の前にある木の裏からスライムが現れた。スイカほどの大きさで、青いゼリー状の体の中には、消しゴムサイズの四角い魔石がかすかに見える。


 俺は、先手必勝!とばかりに使える攻撃魔術すべてを連続して発射した。


「うぉぉぉお!吹き飛べ!『ウォーターショット!』『ウォーターチェイン!』『ウォータースプラッシュ!』トドメだ!『ウォーターカッター!』!!!」


 ビシャ。ベシャ。プシャー。バシャン。


 沢山の魔術の余波によって舞い上げられた落ち葉がスライムを覆い隠す。


「やったか!?」


 初めて魔物を討伐した。という嬉しさに心を踊らせて、舞い上がった落ち葉が落ちきるのを待つとそこには……。たくさんの水でビショビショになって地面から吹き出した水に打ち上げられ浮かんでいる、無傷のスライムの姿が!


「なんで!?」


 しかし考えてみれば当然のことである。今放った魔術はすべて”水型のなにか”を飛ばすだけのものだ。これが火なら相手を燃やしたり、風なら相手を切り裂いたりできるのだろうが、所詮はただの水。相手が濡れる以外のことが起きるはずもなかった。


『ウォータースプラッシュ』によって地面から30センチほどの位置に打ち上げられているびしょ濡れのスライムを見ながら俺は一つのことに気がついた。


 そしてどうやらこの魔術では「1!1!」というようにかすかにダメージが発生しているらしく、他の魔術ではろくにダメージが入らない以上は、ゼリー状のものが削り切るまで待ってから魔石を取り出すしかなかった。その証拠に、スライムの体の下側。魔術と接触している部分を見ると、少しずつ削れて行っているのが見える。


「マジでちょっとずつって感じだな…水魔法ってどんだけ弱いんだよ。でも、このまま行けばいずれ倒せるだろうし、あと10分くらいかな?オジサマをあんまり待たせずに済みそうだ」


 ……そして話は冒頭へ……


「本当にどうしてこうなった…」


 あれから一匹倒すのに2時間かかった。途中から危機を感じたスライムが、体中のゼリーを接触面に送って防御し始めたからだ。


 時刻は午後五時。木々の間から、きれいな夕焼けが見える。


「やべぇ、さっさと戻らないとオジサマが待ってる!」


 やっとの思いで手に入れた魔石を手に握りしめて俺は街へと駆け出した

 

 門を素早くくぐり抜け、冒険者ギルドにまっすぐ向かっていく。中に入るとオジサマがカウンターに頬杖をつきながら待っていてくれた!


「おじさん!戻りました!」


 声を掛けると嬉しそうな、安心したような顔を向けてくる。


「おお!坊主!大丈夫だったか!」


「はい!ちゃんと一つ、魔石を持ってきました!」


「すげえじゃねぇか!初級の水魔法一つでスライムを倒すたぁな」


 オジサマが感心したような声を出しながら、渡した魔石を見ている。


「おう。納品にも問題はねえな。これで晴れて坊主も冒険者だ」


 魔石と一緒に渡していたカードに彼が水晶のようなものを当てると、カートの色が青色へと変化した。


「ほれ、報酬だ」と硬貨といっしょにカードが渡される。そこには以前まではなかった数字の羅列が並んでいた。


「ああ、それは会員番号だ。正式に登録したぞって印だな。再発行のときにいるから覚えとけよ。てかカードはなくすな。ダルいから」


「了解です。なくしません。絶対」


 心底めんどくさそうに顔を歪めるオジサマの様子からなくすのだけは、やめておこうと心に決め、大事にポケットにしまう。


「そうだ、この王都で一番安い宿ってどこですか?」


 そう。俺には金がないのだ。できるだけ節約しながら生活する必要がある以上、安く泊まれる場所の存在は必要だった。


「安い宿?それならここにあるぜ」


「おう、宿っていうか雑魚寝部屋って感じだけどな。ギルドの会員なら無料で使えるぜ?

それ以外なら馬小屋になるが、この季節はあんまおすすめしねぇな」


「無料なんですか!?助かります!」


「おう、苦労するかもしれんが、頑張れよ。」


 そう言うと、彼は「話は終わりだっ」というふうに背を向けて伸びをしながら離れていった。


 するとアドレナリンが切れたのか、一気に疲れを感じた俺は近くにいた職員に場所を聞き、今夜の宿になるであろう場所に向かった。


 ……ドアを開けるとそこは魔境だった……


 学校の教室ほどのスペースにむさ苦しい男たちが雑魚寝をしていた。


 響くいびき。立ちこめる男臭さ、誰かの寝言が聞こえる。


「……しょうがない……無料だし……」


 そばに積まれていた毛布をを手に空いている隙間に体を横たえると、思ったより疲れていたのか俺はすぐに眠りについた。


 




 次の日から3日間。俺は、お金を稼ぐことに必死になっていた。


 もちろんあのじごk……ギルドの無料の宿から抜け出したいという気持ちはあったものの、やはり一番の懸念は城での出来事である。


「いつ指名手配とかになって王都を追われるかわからない。なら今のうちに蓄えを持っておかないと」



 そのことを考えると金銭はいくらあっても足りたようには思えなかった。


 この3日で集まったお金は約銀貨5枚、50,000Fほどである。二日目のお昼に倒したスライムがはぐれたメタル的な存在のやつだったらしく、その魔石に高値がついたのだ。


 懐に余裕が出てきて「今夜はちゃんと宿に泊まるかな〜」と浮かれて歩いていると、正面にステージがあり、人だかりができているのに気がついた。


 そこではどうやら奴隷の競りが行われているようだった。


テンプレをしたいけど、テンプレだけだと面白くない。その瀬戸際を攻めました。


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