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第094話〜会議〜

 エータの暴走により、なんの話し合いもなく建国が決まってしまったブバスティス。


 ブライの提案により『一度、要人(ようじん)だけで話し合おう』という事になり、食事が済んだ村人は解散となった。


 エルフたちの仮住まいを村の端につくり、破壊された柵や水路もひき直す。


 ジョブに目覚めたエータにとって、それは10分とかからない軽作業。


 一瞬で、強固なブバスティスが帰ってきた。


 ――――――


「さて、何から話そうか」


 がらりとした集会所で、みなはテーブルを囲んだ。


 ブバスティスは

 エータ、ブライ、クルト、ビート、ドロシー、ディアンヌ、イーリン、フィエル、ケイミィ、ピグリアム。


 エルフは

 ドラシル、エルドラ。


 ハコノギは

 クロウガ、セツナ。


 ユキヒメは

 ライオ、シロウ。


 この面々が居る。


 イーリンやディアンヌが居るのは『王都に侵攻する際、必要になるから』である。

 彼女たちはすでに、ブバスティスの最高戦力なのだ。


 ピグリアムは、キッチンで静かに食器を片付け、耳を傾けている。


「まずは地盤からが良いさね。他国のことより、自国のことさ」


 クルトが言う。


「私もそう思う、ブバスティスをどうするか。これから決めよう」


 ブライの言葉により、まずブバスティスをどうするかが議題となった。


 エータは腕を組み、話す。


「ブバスティスはエルフを受け入れ、鬼の住処一帯を国土とする。鴉天狗たちの空路はそのままに、各村につづく陸路もつくる。すべて石畳でね」


「⋯⋯いまのエータなら可能、という訳だね」


「あぁ、半日で出来ると思う。護衛さえ居れば、陸路からでも物資が運べるようにしたい。そしたら、俺が居なくてもたくさんの物が荷車で運べるから」


「良いと思う、住み慣れた土地を離れたくない者も居るだろうからね。ブバスティス、ハコノギ、ユキヒメ、ナトゥーメ。すべてが等しく豊かになるようにしよう」


「なんとお優しい⋯⋯」


 ドラシルはぽつりとこぼした。

 その言葉に、ひそかにクロウガは得意気だ。


「すこし良いでござるか」


 シロウが手をあげた。


「コクシ大陸を渡り歩き、限界集落となった亜人たちを保護したのだが、彼らをブバスティスの一員とすることは可能でござるか?」


「さっき居た、リスやオオカミの亜人ですね? もちろん」


「かたじけない。感謝する」


 エータは微笑んだ後、みんなを見ていう。


「これからも、どんどん亜人たちを受け入れていこう」


 『人間と亜人の共存』

 ブバスティスの方針はブレない。


「エータ、首都パイナスを落とした場合はどうする?」


 ブライが問う。


「ブバスティスは狭い、首都としての機能を考えるなら、首都を移しかえるべきだと思う」


「では、ラ・プリースという国名をブバスティスに、パイナスという地名をブバスティアに変えよう。革命を起こすんだ、歴史に残るようにこれくらいはしないとね」


「じゃあ、ここの地名はどーすんだ?」


 ビートが問う。

 すると、エルドラが口を開いた。


「この鬼の住処は、かつて『キホク』と呼ばれていたそうです。なので、キホクとしてはいかがでしょうか」


「キホク⋯⋯?」


 エータはその名をどこかで聞いた気がした。


「⋯⋯エータ?」


 フィエルが心配そうにエータの名を呼ぶ。


「あぁ、ごめん。⋯⋯よし、キホクにしよう」


「国王のハロルドとは、どうやって話をするんさ?」


 クルトが問う。


「それについては考えがある」


 エータがにやりと笑った。


 ――――――


 こうして話し合いは進み、ハロルドとどう話すのか、首都パイナスを落とすにはどうするか、などが決まった。


「エータ、私も行こう」


「ブライも? ブライには、俺が居ない間ここを管理して欲しいんだけど」


「それはクルト先生に任せるよ」


 クルトは「えっ!?」という顔をしている。


「国を落とすのは簡単じゃない。ハロルドを討ち、首都パイナスを制圧しても、領地を任された貴族達をどうにかしなければ終わらない」


「た、確かに⋯⋯」


「なので、王宮で情報を集めていた私が『ハロルドに不満を持っていた者たち』にかけ合ってみようと思う。つまり、根回しだね」


「この革命を本当の意味で勝つには、最重要といっても過言ではないでござるな」


 シロウがマフラーの上から顎を触りつつ言う。


「わかった。ブライには進行ルートを決めてもらって、道中、領主たちとの架け橋になってもらおう」


 エータは力強く言う。


「根底から腐っている者がほとんどだが、ハロルドの圧倒的な(キング)の力に、仕方なく従っている者も居るからね」


 ブライはどこか嬉しそうだ。


 亡命するほど嫌いだった国。


 領民のために残らざるを得なかった領主たちを助けられるかも知れない。


 彼の心には、そんな期待があるのだろう。


 ――――――


「さて、次は君のことだ。エータ」


 ブライが言う。


「俺?」


 突然の名指しに驚くエータ。


「皇帝となる君の、一番重要な責務だ」


「一番重要な⋯⋯責務?」


 ゴクリと固唾をのみこむ。


 そんな緊迫した会議で、ブライは言い放った。


「エータ、子孫をつくるんだ」



 ⋯⋯⋯⋯⋯⋯。



「は?」

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