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第059話〜人とエルフとハーピーと〜

 ――ブライの村。西の集会所にて。


「さぁぁー! みんなドンッドンッ食べてねぇー!」


 ピグリアムが炎と踊るようにエッサホイサと調理場を駆けまわっている。


 エータもアイテムボックスをフル活用し、先ほど討伐したグガランナの肉を、野菜と共に鉄の串へと通し、塩を振りかけていく。


「グガランナって食べて大丈夫なんですの? 飢餓の象徴ですわよね?」


「エータとピグリアムが食べられるって言ってたから大丈夫じゃないか? あの二人は食材の鑑定が出来るようだし⋯⋯」


 ドロシーとフィエルが、グガランナ串を片手に固まっている。


「お肉、たくさん、嬉しいー!」


「なーに心配そうなツラしてんだドロシー、フィエル! 喰えるモンは喰う! 喰えるときに喰う! これ、ハンターの鉄則(てっそく)な!!」


「あっはっはっ! ちげぇねぇぜ小僧! 喰え喰え! 喰って死んだらそんときゃそんときだ!」


 ビートとマスジェロは肩を組んで肉をほおばっている。


「いや、わたくしたちハンターじゃありませんし⋯⋯」


 ドロシーは呆れながらも、グガランナの肉を一口食べてみた。


「あら? 美味しいですわ」


「わ、私は遠慮しておこう。そもそも肉が得意じゃないしな⋯⋯」


 フィエルは串をそっとビートたちの皿に置いた。


「死んだらディアンヌに蘇生してもらおーっと〜」


「さ、さすがに死者の蘇生は⋯⋯というか、解毒はケイミィの領分なんじゃ⋯⋯」


 ケイミィとディアンヌは恐る恐るグガランナを食している。


 たくさんの人でにぎわう集会所。


 村人たちは、出来たばかりの果実酒を片手に、楽しそうに大騒ぎ。



 ――そんな集会所の片隅で、ハゴノキの鴉天狗たちは小さく固まっていた。


 彼らを見て、ブライは大きな声で話し始める。


「みんな! 今日ここに! 新たな友を紹介しよう!! エータたちと共に強力なモンスター! グガランナを討伐した! 有翼族(ハーピー)の鴉天狗たちだ!!」


 ブライは「責任者はどなたかな?」と、鴉天狗たちに呼びかける。

 クロウガは「拙僧だ」と、名乗りをあげた。


「この方が! 鴉天狗たちの長だそうだ!!」


 ブライはクロウガに「なにか一言」と無茶ぶりをする。

 困ったクロウガだったが「名乗らねば失礼であるな」と、村人たちに向かって声をはりあげた。


「紹介に預かった! ハゴノキに居を構える! 北の山のハーピー、鴉天狗である! 拙僧はそこで長を務めているクロウガと申す! 本日、我々は! グガランナという強大なモンスターに襲われた! あわや里が壊滅すると思ったその時! この村の若き勇者たちが我らを救ってくれたのだ!! 深く深く!! 感謝の意を伝えたい! ありがとう!!」


 クロウガが深々と頭を下げる。

 と、村人たちから割れんばかりの拍手が起きた。


 ブライが「ありがとう」と、クロウガと握手を交わす。そして、また村人たちに向かって大声で話し始めた。


「今日はハゴノキの鴉天狗という新たな友を得た記念すべき日だ! みなの者! 酒は持ったか!!」


 村人たちは「もう飲んでまーす!」と叫ぶ。


 戸惑う鴉天狗たちに、村人たちが「さぁ! あんたらも!!」と、酒の入ったタンブラーを次々と渡していく。


 ブライは大きく息を吸い込み! 叫んだ!!



「飲めや歌えや! 宴だーー!!」



 ――おおおおぉぉぉー!!!!



 村中に地響きが鳴るほどの雄叫びをあげ、人間とエルフとハーピーの宴が始まった!!


 鴉天狗たちは「お、おい⋯⋯これ、本当に食べていいのか?」と、戸惑っている様子だ。


 それを見て、ギノーとサクべが焼けた肉と野菜の串を鴉天狗たちに渡す。


「ほれ、ウチで取れた野菜だ! 食え!」


「美味しいわよ〜! ほっぺ落ちちゃったらごめんなさいね!」


 鴉天狗たちは顔を見合わせ、恐る恐る一本の串を手に取る。


 いつぶりかもわからない『まともな食べ物』。

 芳ばしい肉の香りが鼻腔(びこう)をくすぐる。


 クロウガをはじめ、ハコノギの鴉天狗たちは、エータの言葉を思い出していた。



(お礼は『日没までに俺たちを安全に村まで送ること』そして、『一緒にごはんを食べること』と言うことでお願いします。食事はみんなで一緒に食べた方が美味しいですから)



 ――ぐぅ。


 ご馳走様を前に、鴉天狗たちは勇気をだして一口ほおばった。



「おいしい⋯⋯」



 その目からは涙があふれていた。


「エータたちから軽く事情は聞いてる。大変だったな。腹いっぱいになるまで食ってくれ。オラ達みんなで、しばらくおめぇたちのメシは見る」


 そうなのだ。エータたちが食事を減らし、その分を鴉天狗たちに渡すことを知った村人たちは、


「俺も乗るぞ」

「子供たちがやってんのに大人がやらない訳にはいかないよ」

「フィエルの件で、亜人種にも良いヤツは居るってわかったしな」


 と、次々と立候補してくれたのだ。


「一緒にごはん食べて、一緒にお酒を飲んだら友達よね。これからよろしくね、カラスさんたち? テングさんたち? あら、どう呼んだら良いかしら!」


 鴉天狗たちは涙を流しながら笑っている。


 その姿に村人たちも、


「おめぇは身篭ってんだから飲めねぇだろうが!」

「サクべさんは本当にもう〜!」

「あら! イヤだわ〜!」


 などと笑い合った。


「助かった⋯⋯のか?」

「まさか人間に助けられるとは⋯⋯」

「この村の人たちはなんとお優しいのだ」


 鴉天狗たちの緊張も、すこしずつ解けているようだ。

 


 ――――――



「エータ殿」


 宴も後半を過ぎた頃、クロウガから話しかけられたエータ。


「バスティ様の使徒という話、拙僧らは信じますぞ」


「ありがとうございます! こうやって、人間と亜人種との壁がどんどん無くなっていけば良いですね」


「誠に」


 深々と頭を下げるクロウガに、エータは困ってしまう。


「クロウガさん! 俺たちはもう友達です! これからは対等に付き合いましょう!」


「エータ殿⋯⋯その事なのですが⋯⋯」


 クロウガは真剣な眼差しでエータを見る。


「な、なんでしょう?」


「我ら鴉天狗、ハコノギ一族。貴方様とこの村にお仕えしとうございます」



 ⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯。



「はい?」

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