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第005話〜おうちを作ろう〜

「アイテムボックス!」



 ――ピコンッ!



――――――

土×150kg

ワージマの木×120本

ケシムの木×25本

モンレの木×5本

・モンレの実(可食)×80個

カヌミの木×2本

・カヌミの実(可食)×30個

ツタ×300kg

動物のフン×1kg

スーツ上×1着

スーツ下×1着

革のベルト×1本

コックァの卵(可食)×34個

シメジ(可食)×700g

クエンタケ(非可食)×500g

シイタケ(可食)×1kg

マジカルケミカルマッシュ(非可食)×200g

 ⋯⋯etc。

――――――



「うわぁ⋯⋯」



 ドン引きレベルである。

 もう食べ物を探す必要がない。コタツの中で寝そべりながらスッと手を伸ばせばみかんが食べられる、そんな感覚で食料がベリーイージーにゲッツできる。しかも、食べられるかどうかの判定付き。


「俺のいた世界の物が混じってるのも助かるな」


 頭の中でイメージすると、収納されている物の見た目や細かい状態が表示された。そこで、アジやシイタケなど聞き慣れた食材が元の世界とおなじである事が確認できたのだ。


 それと、どうやらこのアイテムボックス内にある物は時間が止まっているらしい。これはアイテムボックス内の詳細を見てわかった事だ。なんとまぁ至れり尽くせりな能力ですこと!


 海にあるアイテムボックスのゲートも繋がり続け、貯水量はすでに一般男性が一ヶ月暮らせるほど貯まっている。飲料水があるのは大変心強い。


「本格的にやっべぇなおい。収納上限とかあるのかな? 海水はもう1000リットルは超えちゃってる。底なしですか〜? 俺のアイテムボックスちゃんは!」


 さて、これで食料問題は十分すぎるほどに解決できた。次は安全な寝床である。すでに角有りのオオカミに襲われている以上、食料よりもよっぽど重要だ。寝ている間にケモノに喰われてあの世行き〜なんてのはシャレにならない。


「こ、これで家なんかも勝手に作ってくれたら楽なんだけどなぁ〜」


 エータはあからさまに、かつ、さりげな〜く呟いてみた。



 ⋯⋯。



 アイテムボックスからの返答は無い。


(さすがにムリか。こう、木を四角い箱みたいに囲ってくれるだけでも助かるんだけどな)



 ――シュンッ!――



 突然、あらわれる暗闇。エータは「えっ、なんだ!? 暗っ!!」と、狼狽えた後、すぐにこれがアイテムボックスの仕業だと気付いた。


 空に手をかかげ、上にある物を収納するイメージをしながらアイテムボックスと叫ぶ。そして、太陽のまぶしい光に照らされたことにより、彼はようやく状況を理解した。


 できた。出来てしまったのだ。六畳一間。木と木のつなぎ目がまったく見当たらない謎の真四角な建造物が。そして、その中央にたたずむようにエータは居た。


「家っていうか⋯⋯とんでもなくデカい(マス)だなコレ⋯⋯。つなぎ目どこだ? つか、木目すら無いぞ?」


 家なのか(ます)なのか、よく分からない物にそっと触れてみる。


「まるで、超巨大な木から一気に作ったみたいな滑らかさだ。ログハウス的な物じゃなくて、木そのものをアイテムボックス内で融合させて一つの物体として取り出した⋯⋯ってことか?」


 マインでクラフトな某箱庭ゲームの豆腐建築をイメージしていたせいか、現実ではありえない物を造ってしまったらしい。天井をアイテムボックスで収納する前は、空洞な四角い木だったという事だろう。


 それにしても、1平方メートルの四角い木材が積み上げられた物が出てこなくてよかった。もし、そんな物が出ていたら出現と同時に天井が崩れて大ケガでは済まなかったはず⋯⋯。


(おーこわっ)


 エータは自らの想像力の欠如に救われた。


「屋根は雨が降らないかぎりツタと葉っぱをかぶせるだけで良さそうだな。さっきみたいに完全に木でふさぐと空気が無くなるだろうし。⋯⋯ドアが無いけど出入りのときに家自体をアイテムボックスで出し入れすれば問題ないか? さっきのオオカミが来たとき、出入口が無いほうが防衛としては強いもんな」


 家が必要になったらその都度アイテムボックスから取り出す。なんてメチャクチャなパワープレイなんでしょう。しかし、いま現在その方法が一番安全なのは確かである。


 そうこうしている内に太陽が水平線の彼方に溶けはじめた。日没。異世界転生はじめての夜。


 火が無いことに気付いた彼は慌ててモンレとカヌミの実を取りだした。可食と表示されているとは言え、さすがに生の魚とキノコを食べる勇気はない。火をおこす時間も道具もない状況。


「こういう時は木の実が安牌(あんぱい)だよな」


 エータはモンレとカヌミを物色しはじめた。


 モンレはグレープフルーツのような見た目をしている。ただ、色が毒々しい紫。大丈夫なのか、これ。と、おそるおそる果肉を舌先にちょんっと付けてみる。すると、強い酸味が彼を襲った!!


「んんんんー!! ダメだ! 完全にレモンだ!」


 食べられることは食べられるのだろうが、単体では厳しい。これはいつか料理ができる環境になるまでは封印しておこう。ということで、一旦モンレという木の実はアイテムボックスにしまう事にした。


 次はカヌミに手を出してみる。カヌミは桃のような見た目。色も鮮やかなピンク。しかし、むいてみると中はパーフェクトなほどにみかん。現世の人が見たら全員が全員「これみかんでしょ」と答えるレベルの鮮やかなオレンジ色をしたみかんだった。


「うん。みかんだ。普通のみかん」


 エータはほんの少しだけ(異世界の物を食べてる気がしないなぁ⋯⋯)と思ったが、食べ物があるだけマシだと思い、ありがたくカヌミを二個たいらげた。

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