第048話〜北の山の大冒険〜
――村から出て北の山へ。
エータ、ビート、ドロシー、ディアンヌ、イーリン、フィエルの六人は険しい山道を進んでいた。
「こっちに来るの初めてだ」
木をくぐりながらエータが言う。
「あぁ、いつもは禁止されてるからな」
「ちょっとワクワクしますわね!」
先頭をあるくビートとドロシーの足取りは軽い。よほど楽しいのだろう。
「冒険! 冒険!!」
「みんな、無理はしないようにお願いしますね!」
「ディアンヌ、大丈夫だ。ビートの探知があるし、フィンにも周囲を見て貰っている」
イーリンが杖を振りまわし、それをディアンヌがたしなめている。
フィエルは斥候のクセが抜けないのか、歩きながらも周囲を注意ぶかく観察しているようだ。
意気揚々と進む六人。そのはるか後方でゼェゼェと息を切らし、今にもぶったおれそうな目隠れの女性が一人。
「き、君たち〜お姉さんを置いてかないでおくれ〜」
暑い中でも科学者のような上着を着ている緑髪の乙女、ケイミィだ。
「ケイミィ姉。遅い」
イーリンがケイミィの手を引きながら言う。
「もう三十路ちかい女には〜この山道はキツいって〜」
(童顔だからわかんなかったけど、ケイミィってアラサーだったのか)と、エータは思った。
「泣き言いうなよ。ブライから頼まれたんだろ? 俺たちがあんまり奥に行かないように」
ビートが言う。
そうなのだ。
北の山といえばプリース王国の首都パイナスのある方角。
しかも、オークやミノタウロスが出てくる危険地帯。
何が起きるか予測不能。と、言うわけで、お目付け役としてケイミィが同行することになったのだ。
「そ、そうだけど〜。あぁ〜ブライの頼みじゃなかったら断ってたのにぃ〜。ねぇ、ちょっと休憩しな〜い?」
「えぇ⋯⋯」
心底嫌そうな顔をするビート。
「まぁ良いじゃないか。時間はたくさんある、無理せずに行こう」
フィエルのその一言により小休止を取ることになった。
大きな岩に座り、水筒の中の水を「ふぃ〜」と飲むケイミィ。そんなケイミィにイーリンが冷たい風を作ってあげているようだ。
「今のところ、ケモノは西の山でも見かけるヤツだな。植物やキノコは珍しい物がたくさん採れたけどよ、食用には向かない薬草や毒キノコばっかだぜ」
「西の山とは大山脈で繋がって居るからな。獣に大きな変化は無いのだろう。植生に変化があるのは意外だったが⋯⋯。あっ、あと中型モンスターは本当に強いから気をつけてくれ」
フィエルのその言葉にエータたちは気合を入れる。
と、その時だった!!
「助けてぇ〜!!!」
後ろで声が!!振り返ると、ケイミィが大きなカラスに両肩を捕まれ、連れ去られていた!!
「なんだアイツは!?」
「あれは『三足鴉』じゃないか! あんなに大きいのは初めて見る! 群れのボスかも知れない!」
「俺の探知にもかからなかった! 敵じゃないのか!?」
「と、とにかく! ケイミィを助けましょう!!」
「そうですわね! あの高さから落とされたら危険ですわ!!」
――氷柱豪雨――
と、イーリンが魔法を放つ!!
「イーリン! ダメだよ! ケイミィに当たっちゃう!!」
慌てるディアンヌ!
「あっ、そっか、ごめん」
ツララを間一髪で避けた三本足のカラス。
しかし、その反動で⋯⋯。
「お、おい! ケイミィ落とされてないか!?」
「マジで!?」
目をこらすと、はるか上空で「あ〜れ〜〜!」と言いながら落ちているケイミィの姿が!
「あの高さから落ちたら死ぬぞ!!」
エータが叫んだ瞬間、ドロシーが身体強化で大地を強く踏みしめ、大空を駆けた!
「フィン!!」
フィエルも足に風をまとい、飛んでいく!!
三足鴉は飛んでくるドロシー達を迎えようと、大きく旋回している。
「やる気だな!? 喰らえ!」
――閃轢狼――
ビートの弓から五本の矢が同時に射出される!
その矢はケイミィを守るように、三足鴉に向かって弧を描きながら飛んでいった!!
その巨躯に似合わず、するりと交わす三足鴉。
その隙にドロシーがケイミィをキャッチ!
「無粋な奴だ! 堕ちろ!!」
ーー妖精之矢ーー
フィエルが弓を放つ!!
その矢は激しい風を螺旋状にまとい、三足鴉の翼を射抜いた!!
――クェェー!!
バランスを崩し、山の木々へ落ちていくカラス。
ドロシー達はケイミィを助け、ふわりと地上に舞い降りた。
「ケイミィ! 無事か!!」
エータたちは急いでドロシーたちの元へ向かう。
「な、なんとか命は〜。でも、上着持ってかれちゃった〜」
「「「えっ??」」」
一同の顔が青ざめる。
「上着って⋯⋯ヤバい薬がたくさん入ってる⋯⋯あの?」
「そだね〜。最悪、北の山が汚染されちゃうかも〜。たはは〜」
ケイミィの顔もみるみる真っ青になっていく。
「ど、どうしよ⋯⋯」
――け、ケイミィィィ!!!
「さ、さっきのカラスが落ちたところまで行って見ませんこと?」
「それしか無さそうだな」
「急ごう、これは北の山だけでなく、鬼の住処全体をゆるがす大事件だ!」
一同は大きくうなずく。
「みんなぁ〜ごめ〜ん」
ケイミィがショボショボと泣きそうになっている。
「大丈夫ですよ。ケイミィさんのせいではありませんから」
ディアンヌがケイミィを優しく抱きしめる。
「ディアンヌママ〜。ばぶぅ〜」
そう言ってケイミィはディアンヌの大きな胸に顔を埋めた。
それをエータたちは「だ、大丈夫かよ、この大人⋯⋯」と、冷ややかな目で見ていた。




