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第046話〜創造神プタラムとは〜

「ん、ここは?」


 ブライの屋敷、自分の部屋で目が覚めたエータ。


「エータくん!」


 ディアンヌが心配そうにエータの手を握る。その周りにはクルト、ブライ、ビートが同じく心配そうに彼を見つめていた。


「あれ? 俺、神託受けてなかったっけ」


 一同は顔を見合せ、クルトがエータに言う。


「覚えてないのかい? 神託を受けたときにバスティ様の像が爆発して、あんたは吹っ飛ばされたらしいんさ、エータ」


「爆発⋯⋯?」


 エータが無事だったことを確認したブライは、もう聞いても良いだろうと本題に入る。


「エータ、バスティ様はなんて仰ってたんだい?」


「バスティ様は⋯⋯」


 エータは、神託で起きたことを思い出してきていた。



 ――――――



「その紙を持って、目をつむって」


(よし、これでバスティ様に感謝を捧げれば良いんだよな。感謝かぁ、そうだなぁ。バスティ様には、前の世界で絶望してた俺をここに連れてきて貰ったし、リヴァイアサンの時には守って貰ったし、そして何よりもアイテムボックスを授かったし⋯⋯考えれば考えるほど感謝しかないな)


 エータは改めて、ありがとうございます。と、バスティ様に感謝した。


(それにしても、あの紙に描いてある人⋯⋯。あれは誰なんだろう。像も絶対にバスティ様じゃないし。あんなスラッとした人間の女性じゃないと思うんだよな)


 と、そんな事を考えていると、真っ暗闇のエータの視界⋯⋯いや、脳内に、ぼうっと光り輝く球のような物が出現した。



 ――お前は何者だ?



(えっ?)



 ――私が造ったモノでは無いな?



(誰だ? 女?)



 ――穢らわしい。私たちが創った世界に土足であがりおって!



(なんだ? 光のなかに誰か居る?)



 ――異分子め!消え失せろ!!!



 エータは、皮膚が焼けるような全身の痛みと共に、意識を飛ばされた。

 


 ――――――



「私が造ったモノでは無い⋯⋯?」


 エータは思わず呟いた。ディアンヌ達は目を合わせあっている。と、ブライが口を開いた。


「造ったって事は、まさか創造神プタラム? エータ、プタラムと話したのかい?」


「消えろって言われて攻撃されたんで⋯⋯たぶんプタラムって神様かも⋯⋯」


「なんでバスティ様に祈ったらプタラムが出てくんだ?」


 ビートは不思議そうに聞く。


「さぁ⋯⋯ただ、紙に描いてある女性だったから、バスティ様なのかプタラムなのか⋯⋯」


「プタラムは男神だよ、エータ」


「えっ!?」


(何がどうなってるんだ? バスティ様を思って祈ったら肖像画通りの女性が出てきて⋯⋯。でも、使徒である俺を攻撃してきて⋯⋯。邪神に堕ちたっていうプタラムかと思いきや、プタラムは男神? じゃあさっきの女性は⋯⋯?)


 首をかしげるエータに、ブライは続ける。


「それに、エータくん。通常、神託を受ける際はバスティ様の姿は拝見出来ないよ。光の球となって現れたり、声が聞こえたりするだけだからね」


「えっ、そうなの? ⋯⋯でも、ハッキリとあの絵の女性が出てきたけど⋯⋯」


 何がなにやらわからなくなるエータたち。


「これは⋯⋯かなり厄介な事になってるかも知れないね」


 ブライは深刻そうな顔でいう。


「神託のときに使う紙は、コクシ大陸南東の神聖マクシト国という宗教国家が絡んでる。そこはバスティ様を唯一神として崇め、人間至上主義をかかげた最初の国だ」


「亜人種迫害のきっかけを作った国って事?」


「思惑はわからないが結果的にはそうなっているね。そして、バスティ様の使徒であるエータの話とこの状況を見るに⋯⋯。マクシト国はむしろバスティ様になんらかの悪影響をおよぼして居るんじゃ⋯⋯?」


「そんな! 有り得ません!!」


 ディアンヌが大声で叫ぶ。


「神聖マクシト国は、バスティ様の加護を強く受ける国です!! 神官(プリースト)を多く排出し、一人一人の能力も高い!! バスティ様が愛想を尽かし始めた世界で、今なおバスティ様の神託を多く受ける国ですよ!? あなたがそう教えてくださったんじゃないですか、ブライさん!」


 ブライは、珍しく感情的になっているディアンヌをたしなめるように、優しい声で返す。


「だが、事実。エータは紙に描かれたプタラムらしき女性に攻撃されている。バスティ様の使徒であるエータが、だ。これをどう説明する?」


「それは⋯⋯」


 ディアンヌは黙ってしまう。


「まぁまぁ、ここで話しあっても答えは出んさね。私たちの手に負える話でも無し。いつかあんた達がマクシトに行った時に調べて見たらえぇさ」


「だなぁ。俺はよくわかんねーし! しょーじき!」


「今は⋯⋯そうするしか無いね」


 ブライは顎に手を当てて考えている。


(私が今まで読んだ文献すべてが改ざんされている可能性も? ⋯⋯一体いつから? そして、そんな事が出来る人物⋯⋯いや、組織は⋯⋯)


「そーいやよぉ!」


「ん?」


「結局、エータのジョブってなんなんだ?(キング)じゃないんだろ?」


「そうだね、(キング)の場合、プリース姫と同じくパーティにステータスアップが発動するはずだから、ビートくんが何も感じてないなら(キング)じゃないと思うよ」


「なにも感じねー! じゃあ無職(ニート)って事か!」


「に、にににニート!?」


 エータはとてつもないショックを受けた。42歳で⋯⋯ニート⋯⋯?

 その姿を見て、ブライやディアンヌが「気にしなくて良い」と、励ましてくれるのだが⋯⋯。


 その優しさが余計にエータを辛くさせた。


 宮下瑛太(みやしたえいた)、42歳。

 異世界で無職になりました。

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