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第021話〜活路〜

 ジュゥゥゥッという音と焼けた肉の匂いが広がる。

 ビートたちの視線の先には、体高4メートルのベヒモスの巨体を受け止める老兵、ダストンの姿があった。


 しかし、その左腕はドロドロに溶けて空をまい、どちゃりと地面に叩きつけられている。

 キズだらけのヘルムと豪華な装飾品がなされたアーマーは熱で赤く変色し、その形を保つのがやっとという様相。


 そんな絶対絶命の瞬間でも、ダストンの瞳は一切ひるむことなくギロリとベヒモスを睨みつけている。

 その目は眼光だけで生物を死にいたらしめんとするほど鋭く、激しい気迫のこもった物だった。


(なんなんだ、コイツ)


 ベヒモスは驚愕していた。

 陸上で自分の突進を受け止められる者など存在するはずがない。

 ましてやコイツはクソ人間。ただの汚ぇ肉の塊。

 原型を保つことなど不可能。


 だが、居る。


 コイツは自分を受け止め、そこに居る。

 間違いなく存在している。

 お前を殺してやるぞと言わんばかりの瞳で。

 そんなダストンの姿を見て、ベヒモスはこう思った。



(キモっ)



 そこにダストンへの賞賛など皆無。

 それはそうだ。

 リヴァイアサンやベヒモスにとって、この世に居る生物は等しく無価値。虫けら以下の存在である。


 うるさくブンブン飛びまわる蚊を両手でパチンと叩いたら、間違いなく潰したはずなのに手の隙間でビクビクと生きている。


 ベヒモスにとってはその程度のことなのだ。


 ベヒモスはこのまま体重をかけ、熱と重さでダストンを確実に亡き者にしようとする。


「ぐっ⋯⋯おおぉぉ!!」


 たまらず苦痛の声を漏らすダストン。


「アイテムボックス!」


 突然、ベヒモスの頭上から大量の水が降りそそいだ。

 赤く隆起するベヒモスの身体に触れるやいなや、蒸気となって次々と消えていく。

 ベヒモスが「なんだ!?」と、力を抜いたその瞬間だった。



 ――濃霧蜃気楼(ミストミラージュ)――



 ぶわっと、辺り一面に広がる濃い霧。

 さっきまでそこに居たはずのクソ人間の身体がフッと消え、ベヒモスは体勢を崩した。

 うざってぇなぁ。本当によぉ。そう言いたげにベヒモスは身体を起こし、走りさる影を目で追った。



 ――――――



 ダストンの巨体を背負って走るドロシー、イーリンを背負って走るビート。

 イーリンはダストンの傷口に氷魔法を唱えて止血を試みている。


 そんな彼らの後ろに居るのは、息も絶えだえに走る中身42歳ことエータ!!情けないエータ!!


 度重なる死の恐怖、いまなお続くピンチ、走り続けて酸素不足な脳みそ。彼の心身はもう限界であった。


 しかし、生きる事を諦めない。


 エータは思考を切りかえた。


 一応、ダストンさんの左腕はアイテムボックスに入れてきた。浜辺で試したときから勘づいていたが、この能力は『生物』は入れられないらしい。

 ただ、死体は入っていたので、ちぎれた腕ならどうかと、試してみたらビンゴだった。


(この世界はアーツっていうトンデモ能力がある。治癒魔法をかけるかどうか〜なんて話もしてたから、ワンチャン腕が戻る可能性があるんじゃないか⋯⋯?)


 エータは小さな希望にかけ、脳内のアイテムボックスに表示された『ダストンの左腕』という文字を眺めた。


 なお続くピンチの中、すがる物はアイテムボックスしかない。逆転の一手を探すため、エータは脳内に表示された文字をスクロールしていく。


――――――

海水×126000ℓ

飲料水×96900ℓ

塩×3230kg

貝殻×25kg

貝の死骸(可食)×36kg

・アサリ

・ギライマ

・エレキマイマイ

・オカグリ

貝の死骸(非可食)×120kg

魚の死骸(可食)×5200kg

・アジ

・カサゴ

・エルテルク

・イワカガネ

・イワダイ

・ヒョウケツサビキ

・フトメ

魚の死骸(非可食)×3280kg

海藻×520kg

鉄×620kg

銅×480kg

サンダーイールの電気器官×1個

イビルテンタクルの残骸(可食)×200g

リヴァイアサンの鱗×1枚

シーサーペントの鱗×36枚

海魔石×3kg

エレキマイマイの発電殻×32個

バクハルゴの破裂殻×60個

土×170kg

ワージマの木×158本

ケシムの木×27本

モンレの木×5本

・モンレの実(可食)×80個

カヌミの木×3本

・カヌミの実(可食)×28個

ツタ×32kg

動物のフン×1kg

コックァの卵(可食)×34個

シメジ(可食)×720g

クエンタケ(非可食)×500g

シイタケ(可食)×1kg

マジカルケミカルマッシュ(非可食)×200g

⋯⋯etc。

――――――


 リヴァイアサンの攻撃に巻き込まれたであろう様々な資材たち。しかし⋯⋯。


(うん!! わからん!! なにが使えるのかまっったくわからん!! みんなに聞いてみるか? いや、無理! 走りながら話すなんて無理!!)


 異世界人であるエータに使える物などわかるはずもない。

 と、その時だった。



 ――メキメキメキィ!!――



 ベヒモスが木々をなぎ倒しながら追いついてきた!

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