第149話〜粘着王・海満月〜
ブバスティス帝国が誕生した瞬間。
それは、突然あらわれた。
「え、エータ! あれはなんだ!!?」
北の海から飛来する巨大な『なにか』を見たフィエルは、あわててエータの肩を叩く。
「なっ⋯⋯!」
遠くからでもわかる蒼い月のような巨大な『なにか』。エータは言いようのない悪寒を感じた。
「あれは⋯⋯まずい! 絶対に普通じゃない!! みんな! 家の中に隠れろ!!」
エータはとっさに叫びアイテムボックスからウォーハンマーを取り出す!!
「うううぅぁぁぁぁあああ!!!!」
大きく心を乱しながらもバチバチとマナを込め、青い物体へとアーツドライブを放つ!!
――凱竜天成――
巨大なマナの龍が、海の上で青い物体へと着弾する。
すると、それは被弾を回避するようにビチャビチャとはじけ飛び、ブバスティス帝国へとふりそそいだ。
「うわっ!」
「フィエル! 危ない!!」
フィエルを押し、飛来する青い物体を腕に受けるエータ。
――ジュゥゥゥゥウ!!
「う⋯⋯あぁっ!!」
衣服を貫通して溶けていく。
エータの腕は酸を浴びたように赤くただれた。
「エータ!!」
「だ、大丈夫だ⋯⋯!」
――治癒――
神官から税収していた能力で、すぐさま回復。
しかし、この青い物体がとてつもなく危険であることは把握した。
回復したとはいえ、青い物体が残る場所はまた皮膚が溶けている。
これはマズイ、すぐさま国民に呼びかける。
「北の海から謎の物体が飛んできた! 触れたら皮膚が溶けるぞ! みんな! しばらく家の中に避難しててくれ! 外にいる人が居たら入れてやってくれ!!」
エータがちらりとブバスティスを見ると、青い物体に触れてしまいダメージを負った人々の姿が⋯⋯。
「くそっ!!」
――広域極大治癒――
エータは背中にマナの円環をつくりだし、全力でブバスティスに治癒の魔法を放った。
その光はケガや病気で動けない人にも効果を発揮したようだ。
ブバスティスの地に落ちた青い物体は、30センチほどの球体となって人々を襲い始めた。
「みんな逃げろ! 早く建物の中へ!」
大パニックとなるブバスティス。
大人しく家屋の中に逃げてくれる者はまだ良い。
しかし、本当に大丈夫なのか不安な者や、これもエータの攻撃なのでは無いかと疑った者が、家屋から出て城壁の外へ行こうと走り出してしまっている。
バラバラに飛び散った青い物体は、うねうねと動き、ターゲットを外にいる人たちに絞って襲いかかっている!
「みんな! 外はダメだ!! な、中へ⋯⋯!」
目の前で傷つけられていく、たくさんの人々。
エータの鼓動は早くなり、呼吸は荒く、視界がブレていく。
(ど、どうする!?)
完全にパニック状態。
自分の判断で人が死ぬ。
たくさんの命がかかっている。
と、エータの顔をフィエルが両手で包み、強くひいた。
「しっかりしろ! エータ!!」
「フィエル⋯⋯」
視界がすべてフィエルの美しい顔で埋まる。
サファイアのような瞳を見つめていると、思考が段々とクリアになった。
「大丈夫だ、エータ。私たちが居る!」
「そうだ⋯⋯そうだよな! ありがとう!」
自分の成すべきことに気付いたエータは、もう一度、国民たちに呼びかけた。
「全員! 戦闘態勢へ入れ! 謎の敵が襲来した! 青いドロドロのスライムだ! 直接触れると身体が溶けるぞ! 出来るだけ魔法やアーツドライブで対処しろ!」
そして、エータは集めていたジョブやアーツをすべて返した。
エータの身体から金色の光が人々の中へと飛んでいく。
「最後の仕上げだ! 全員! 生き残るぞ!!」
その言葉を聞いたバトルジョブの面々は、青いスライムに襲われている人々を助けんと、行動を開始した!




