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アイテムボックスが最強すぎて廃村を立て直すなんて余裕でした?ウソです超大変です!  作者: 河津乃毒袋
VSプリース王国編

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第145話〜誰かを信頼していれば〜

 パイナス上空で起きた大爆発を、ハロルドの絶対王政によりカラカラになったオリオンが力なく見つめていた。彼は老人のように干からびた手で亡き王の輪郭をなぞる。


「ハロルド様⋯⋯なぜ⋯⋯」


 爆発で散らばった光が舞い落ち、すこしずつステータスが戻ってきた騎士団長オリオン。彼はハロルドに想いを馳せ、とめどなく涙を流した。


「なぜ、ひとりで立ち向かってしまわれたのですか⋯⋯? 私を待っていただければ⋯⋯もっと私を信じていただければ⋯⋯なぜ、なぜ⋯⋯」


 ハロルドが他者を信頼していれば結末は変わっていたかも知れない。



 しかし、そんな世界は存在しない。



 なぜなら、ハロルドに少しでも他者を信じる心があったなら、プリース王国を滅ぼそうなどという(やから)は、そもそも現れなかったのだから。



 ――――――



 ハロルドを倒したエータは言いようもないやるせなさを感じていた。そこに達成感はない。あまりにも失った物が多すぎた。


「本当にバカヤローだよ⋯⋯お前は⋯⋯」


 まだ、人を殺すことには慣れない。

 きっと、この先も慣れることは無い。

 だが、それで良い。

 ハロルドの死すらも背負って、彼は進む。


「ビート、シロウ⋯⋯いま、行くからな」


 エータはほとんど原型を残していない王城のガレキをどけながら、地下の牢獄を目指した。



 ――――――



 パイナス城・地下監獄。

 王家の通路。


 イーリンとディアンヌは迷子になっていた!


「ここ、どこ?」

「入り組んでて、もはや来た道すらわかりませんね⋯⋯」


 彼女たちは監獄の先にある謎の通路を発見し「王女が連れ去ったということは、こういう秘密っぽいところに居るのでは!?」と、後先考えず、ズンズンと進んでしまったのだ。


 彼女たちの考えはほぼ正解だったのだが⋯⋯。

 王家が使う通路というのは、追っ手をまどわせる為に入り組んでいるのが定石(じょうせき)である。


 イーリンとディアンヌは、それはもう迷いに迷い、北の闘技場へと続く道ではなく、王族が首都から逃げる際につかう通路へと侵入。

 そのまま東の貧民街にある民家の床下から、ひょっこりとその顔をのぞかせたのであった。


「誰かのおうち?」

「こ、これって王家が脱出するための道ですね。昔から繋がりのある家が代々守るっていう⋯⋯」


 てん、てん、てん⋯⋯。


「い、一度外へ出て方角を確かめませんか? 北に向かっては居ると思うのですが⋯⋯」

「そーしよ」


 二人は仲良く民家から出て、キョロキョロと辺りを見回す。


 すると、天空へと向かう巨大な龍の姿が見えた。

 それは大爆発を起こし、キラキラと光を舞い散らせている。


「あれは⋯⋯凱竜天⋯⋯?」

「きっとそう、エータが勝った」


 二人はしばらくそれに見蕩(みと)れた後。


「ほ、方角が全然ちがいましたね⋯⋯」

「うん⋯⋯」


 と、肩を落とし、すごすごと通路の中へと戻って行った。



 ――――――



 プリース王国・首都パイナス北。

 地下闘技場。


 ロウルに勝利したドロシー。


 彼女は地面にめり込んだロウルが後生大事(ごしょうだいじ)に握りしめている『紅孔雀(べにくじゃく)』に手をかける。


「なんて馬鹿力ですの⋯⋯」


 気を失っているはずなのに、なかなか手を離そうとしないロウル。彼女の手と溶接されているようにピッタリとくっついた紅孔雀にイラだつドロシー。


 そんな彼女の元へアイチェが歩んでいく。



 ――変化(アートオブチェンジ)――



 彼女はロウルへと変化し、紅孔雀へと手を伸ばす。

 紅孔雀は主と間違えたのか、すんなりとアイチェの手にその身をゆだねた。


「なるほど、魔石を使った魔武具は持ち主を選ぶのですわね⋯⋯」


 変化を解いたアイチェは、紅孔雀の持ち手をそっとドロシーへと向けた。


「ありがとう⋯⋯ドロシー」


 まだ傷心しているはずなのに必死に笑顔で取りつくろうアイチェ、そんな彼女を見てドロシーは目から涙があふれた。


(ダメ⋯⋯ここで泣いてしまっては、アイチェの心意気に水をさしますわ)


 ドロシーはグッと、瞳を閉じ。


「いいえ、当然のことをしたまでですわ。だって⋯⋯」


 ドロシーは紅孔雀を受け取りながら、アイチェの手を両手で握る。


「友達のためですもの⋯⋯」


 その言葉に、アイチェは「うぅ⋯⋯!」と、涙をこぼした。その涙は、悔しい、悲しいなど、負の感情で産まれたものではない。

 とめどなく溢れる胸の暖かさが、彼女の涙腺をひたすらに叩いていたのだ。


「ドロシぃぃぃー⋯⋯!」


 ドロシーの胸を借り、声をあげて泣く彼女。

 そんな彼女を撫でながら、ドロシーは聖母のように優しくほほえんだ。

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