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アイテムボックスが最強すぎて廃村を立て直すなんて余裕でした?ウソです超大変です!  作者: 河津乃毒袋
VSプリース王国編

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第111話〜人と人との繋がり〜

 ――三足鴉に運んでもらい、エルフの里があった山へと向かうエータ一行。


「大丈夫ですか? セイジ様」

「どうぞ水を⋯⋯」


 その中には、黒髪おさげのメイド長・デイジーとブライの妹リラ。

 そして、


「う、うむ⋯⋯しょ、しょしょ少々揺れるな⋯⋯」


 完全に腰がくだけ、カゴの中で震えているセイジの姿が。


 というのも、エータの能力をその目で見なければならないセイジは、


「その三足鴉の乗り物、私もご一緒させていただこう」


 と、領主らしい堂々たる面持(おもも)ちで搭乗。


 したのだが⋯⋯彼は『高所恐怖症』であることを、齢四十五歳にして知ってしまった。


 このような高所に来る機会がなく『乗った後に知ってしまった』と言うのが、事の顛末(てんまつ)である。


「ままままだ着かないのか?」


「あと二十分ほどかかるね」


「ま、ままだ、じゅ、じゅじゅじゅ十分しか、たたた経っていないとは」


 セイジの顔は、それはもう真っ青である。


「たとえ落ちたとしても、鴉天狗のみなさんが居るから大丈夫だよ。セイジ」


「ふ、ふふ不吉なことを言うなブライ⋯⋯」


 セイジはゆっくりと水を飲み、心を落ち着かせている。



 ――そんなトラブルもありつつ、エータたちの眼前に悲しい山が見えてきた。



 セイジは、カゴのふちから恐るおそる顔を出している。

 しかし、腰は完全にへっぴりっていた。


「それでは行きます」


 エータは地質調査(ジオロジカルサーベイ)を発動し、山が消えることで、なにか問題が起きないかを調べた。


 すると『むしろ無くなった方が周囲の山や森が活気づく』という結果が⋯⋯。


「完全に、死んでたんだな⋯⋯」


 植林して緑を戻す手も考えていたが、どうやらマナの都合上そうもいかないらしい。


 そして『どこまで回収するべきか』も調べ、その通りにイメージしていく。



「アイテムボックス!」



 セイジやメイドたちが見守るなか、その山はフツと消えた。


「なんと⋯⋯」

「この規模、普通ではありませんね」

「本当に、バスティ様の使徒⋯⋯」


 三人は開いた口がふさがらないでいる。


 山の中には大量の鉱石があり、炎で変質してしまったのだろう、炎魔石があった。


(これはエルフの怒りの炎だな⋯⋯)


 エータはそっと脳内のウィンドウを閉じた。


 アイテムボックスと地質調査(ジオロジカルサーベイ)で土地を整える。


 アイテムボックスがマナを消費せず、エータのMPマナポイントが非常に多いこともあり、広範囲を一度に調査することができる。


 『畑を作るための土壌』はすぐに完成した。


「よし、あとは領主邸に戻りつつ、道を整備しますね」


 エータは、空から地質調査(ジオロジカルサーベイ)で地面の状態をみつつ、アイテムボックスでウチコ領までの道を石畳で整備していく。


「なんと立派な道⋯⋯」

「領内でもこれほど整備されたものはありませんね」


 リラとデイジーは感嘆の声をあげる。


 セイジはカゴのすみで「あ、あとで確認しに行く⋯⋯」と、身体を震わせている。

 もう外は見たくないようだ。

 なんだか申し訳ないことをした。



 ――こうして、エータがバスティ様の使徒であることは、セイジたちにも無事に伝わった。



 屋敷へと帰ってきた面々は、話し合いを再開する。


「エータ殿がバスティ様の使徒であることはわかりました。此度(こたび)の件、誠に感謝いたします」


 セイジは言葉をつむぐ。


「して、私になにをお望みでしょうか。先ほどお伝えした通り、私にはもう大したチカラは残っておりません」


 それを聞いて、ブライはフッと笑った。


「いや、残っているよセイジ。君は、他の貴族たちから慕われている。その人徳がチカラさ」


 セイジは困ったような表情を見せる。


「ブライ⋯⋯それは、この領が栄えていたときの話だ。王宮へ呼ばれなくなるほどに落ちぶれた私を慕ってくれている者などもはや⋯⋯」


 ブライは顔を横に振る。


「あなたのおこなった多方面への大幅なギコム支援で、いったいいくつの領地が救われたと思っている。私が王宮にいるとき、ウチコ領出身というだけで感謝を伝えに来る者までいたよ」


 そして、指を折り、数えはじめた。


「オウノガ、ミカワ、クマコーゲ⋯⋯少なくとも、この三つの貴族は、セイジ、あなたを慕っている」


 セイジの目をまっすぐと見つめるブライ。


「あなたが一筆したためてくれれば、かならずチカラを貸してくれる。鬼の住処へ逃げるときも、コクシカルストの道中で私たちを支援してくれたのは、この貴族たちなんだ」


「なんと⋯⋯!」


 セイジ自身も知らなかった事実。

 彼はたいそう喜び、目頭が熱くなった。


「そうか⋯⋯ハロルド様が王になってから、この国はおかしくなってしまったと思っていたが⋯⋯」


 セイジは、歳の割におおきくシワの刻まれた手のひらを見る。


「人と人との繋がりこそ、プリース王国最大の美徳と信じてきた私は⋯⋯間違っていなかったのだな」


 そう言って、一粒の大きな涙をこぼした。


「取り返そう。私たちの美しい国を」



 ――こうして、ウチコ領・領主セイジ・ウチコの説得に成功したエータたちは、彼の『ブバスティスを支持する』という書状を三つたずさえ、その地をあとにした。


 彼らが、領民の腹を三ヶ月は満たすであろう保存食と、来年の春まで持つであろう大量の塩をプレゼントしていったのは、言うまでもない。

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