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祝 1万pt達成! 義妹が真の聖女? 法的根拠はあるのかしら

誤字報告ありがとうございます!


6/15 とうとうポイントが初の一万台に☆ 応援して下さったみなさまのおかげです!

6/29 月間コメディー短編部門の1位になりました☆*: .。. o(≧▽≦)o .。.:*☆

7/30  四半期ランキングコメディー部門で1位に! 応援ありがとうございます!


 寒さが消えてコートが必要なくなったとある日の午後、私は婚約者の王太子に呼び出された。

 なぜか義妹(いもうと)のマルガリッタが隣にいる。


「ねえお義姉(ねえ)様、わたくしに殿下と聖女の肩書を譲ってくれません?」


 義妹は唐突におねだりをしてきた。

 まるでアクセサリーでもねだるかのような気軽さだ。



 私はため息をつく。


「そんな簡単に上げられるものじゃなくてよ。あなただって分かっているでしょう」


 妹はにんまりした。

 殿下が重々しく口を開く。


「ルイーズ、僕は君との婚約を破棄して、真の聖女であるマルガリッタと結婚したい」

「お義姉様、ご自分を聖女だなんて、もう王家や民を偽るのをやめて」



 なるほど、私を偽物にするのか。恋愛小説みたいな流れだな。

 そんなテンプレセリフ、口にして恥ずかしくないのだろうか?




 ここは王宮の広間である。当然人の目は多いのに。

 ほらみんなザワザワしてきた。



「聖女を偽称したルイーズは国外へ追放とする」



 そして彼は私が婚約者を放って王都を留守にしている間、いかに義妹が優しく民と自分に寄りそったかをとうとうと語りだす。


 王太子の腕に絡みつく義妹がニヤニヤこちらを見てきて、私はイラっとした。




 私は二人と戦う覚悟を決めた。背筋と腹に力をこめて声を上げる。


「はい、了解いたしました」


 ニッコリする私と動きが止まる王子。



「では聖女解任の手続きを」


「そんなこと必要ない、その魔女を今すぐ連れ出せ!」


 命令する王太子と、困惑する近衛兵。

 そりゃそうだ。今まで聖女として尊重されてきた私をつまみ出すなんて、紳士な彼らには無理だろう。



「お待ちください、殿下!」



 メガネ君が小走りで近づいてくる。

 彼は、えーっと宰相補佐兼殿下の側近の‥名前は忘れた。



「聖女解任には、陛下と宰相と神殿の了承が必要です! もし追い出しては殿下と言えども罪に問われます!」


「はぁ?」



 メガネ君のおかげで納得させる手間がはぶけた。



「わたくし二十年ぶりの聖女ですから、国も大事を取ったのでしょう。勝手にやめることができませんの、たとえ偽物でも」



 王子も義妹も口を開いている。二人とも知らなかったようだ。



「ですので、手続きを踏んでいただけますか? 聖女と殿下の婚約者の立場は義妹に譲るので。どうぞ義妹を幸せにして下さいね。あ、違約金などは伯爵家に請求を」



 どうせ親にも相談しないで二人だけで決めたのだろうから、盛大に怒られろ。




 広間のザワザワはいっそう大きくなった。




「お義姉様はどうしてそんなに冷酷なの、殿下はいつもさみしそうだったわ。伝染病が広がった時も、すぐに神殿にこもって全然出てきませんでしたわ」


 うん義妹は私をしっかりディスる。

 広間の空気が変わった。いつもさすがだ。


 あの子が本気でたらしこんだら、殿下と言えどイチコロだろう。



「まあ誤解よ。わたくし 神殿と王家の仕事で目の回るような忙しさだったの。殿下と親睦を深める余裕もないくらい」


 私はさも心外とばかりに反論する。



「君が? 忙しい? 我々が病人の慰問や炊き出しをしていた時、君は姿も見せなかった!」

「そうよ、お義姉様がただお祈りをしている間、わたくしたち大変だったのよ。まさか王都から逃げ出したなんてうわさは本当なのかしら」



 妹はニヤッとする。

 ああ、あのうわさはこいつが出どころか。



 スッと息を吸いこんだ。

 ここが正念場だ。



「存じております、王立病院の慰問と城前広場での炊き出しでしたね」


 とりあえずこいつらが安全な場所にしか(おもむ)いていないことは強調する。



「感謝しておりますよ。わたくしが王国の各地を回って魔女や薬師たちに応援を頼んでいた間のお話ですよね」



 私は嫌味ったらしく言葉を吐く。


「貴族の方々に要請されて、地方の病院に薬を配ったり穀物の流通調節とかもしていたから、確かに王都にはいませんでしたわ。みなさんご存じの通り」


 広間の貴族たちがうなずいた。地方領主の面々だろうな。



「殿下は私が睡眠時間をけずって駆けずり回っていた時、ずっと王都で義妹とイチャイチャ慈善活動をされていたのですよね」


 疫病が収束するまで、本当に頑張った。何回か吐いたなぁ。





「まさか‥そんな報告は受けていない」

「知らないわ! お義姉さまの嘘じゃなくて」


 婚約者と義妹はたらたら汗をかいている。

 自分たちが悪者にならないよう必死だね。




「あのう‥報告書には記入しましたけれど」

 メガネ君がメガネをふきながら殿下に耳打ちする。


 まあ報告していないとかありえないし。



「そんなの毎回は読んでいない! 大事なことは口頭で報告しろ!」



 読めよ。

 メガネ君には同情しちゃう。



「殿下、情報は自分から集めないと集まりませんよ。我が家の家族なんて、わたくしが何か月も留守にしたのに何も聞かれませんでしたもの」


 だから義妹も『私が出かけていたこと』しか知らない。




「この間一緒にお茶を飲んだだろう、その時に君が報告すればいいじゃないか」


「そうですね、報告しようとは試みたのですが」

 それについては私も文句を言いたい。


「私が何度も話しかけたのに殿下は見向きもしなかったじゃありませんか。義妹にばかり夢中で」

「それは‥」


「まあ確かに、睡眠不足で目は充血でお肌荒れ放題、ドレスを新調する暇も予算もなくて着まわしてばかりの私より、高価な宝石やドレスで美しく着飾っているマルガリッタの方が気に入るのは分かりますが」



 まわりの使用人たちが殿下と義妹を残念な目で見始める。


 これで我が家での私の立場が、鈍感な殿下にも理解できたかな。




「お義姉様ひどいわ、殿下を悪く言わないで」

 義妹はまだ反撃の余地があると思っているらしい。


「せめて正直に、見た目で婚約者を選びたいとおっしゃって欲しかったのよ」


 まあ聖女との破談など陛下に断れるのが目に見えているから、私を偽聖女にしようとしたのだろう。




「殿下、そのあたりでお収め下さい、人の目も多くございます」


 メガネ君が必死に殿下を諫める。

 まあこっちは収めてあげないけど。



「大体、殿下はわたくしを偽物で魔女と断言いたしましたが、我が国では魔女と聖女はそもそも同じ存在です」


「え、そうなのか」

「まさか、お義姉様の嘘よ」



 側近が真っ青な顔で告げる。

「国が管理している魔女を聖女と呼びまして、そのほかに国家が認定した魔女と無免許の魔女もおります」

 


「聖女の資格をはく奪するにはそれなりに面倒な手続きが必要ですわ。何を根拠に偽称とおっしゃるのか、分かりませんわね」


 メガネ君はこくこくうなずく。




 私はとどめを刺しにかかる。


「それに‥義妹が真の聖女らしいのですが、法的な根拠はどこにあるのでしょう?」


「法的な根拠?」

 義妹と王太子がそろって首をかしげた。


「ご存じと思いますが、この国で聖女に認定されるには、三年の修行を経て神殿に証明書を発行させてもらうか、元聖女か認定魔女の推薦状が必要になります。わたくしは魔女トルベからの推薦があったにもかかわらず定められた修行も修めました」


 修行をしたのは「お姉さまが聖女だなんて嘘よ」と義妹が騒ぎ、実の父親まで同調したからだ。





「それで? 義妹はどちらの条件を満たしたのでしょう?」




 殿下も義妹も黙ってしまった。

 二人とも、ガクガク震えている。



「法的な手続きが必要だって、知らなかったのね」


 私は優雅にお辞儀をして、その場を立ち去る。




     * * * *




「ごめんなさいね」


 花が咲き乱れるある日、私は王妃様とお茶をしていた。

 理由はあの日の騒ぎの謝罪だ。


「あの子にはきつく叱っておいたわ」


 その後、殿下はおろかな判断の責任を問われ王太子の立場をはく奪された。

 もちろん私との婚約も破棄だ。向こうの有責で。


 実は、別に王子に恨みはない。

 そのことは王妃様にも伝えていたのに。


「他の子に目移りするなんて、いけないわ」

 らしい。


 まあ法律も覚えていないし部下の報告書もろくろく読んでいなかったらね。

 しょうがないか。




「それで、マルガリッタ嬢の処罰なのだけど、あんなに軽くてあなたは良いのかしら」



 彼女の罪は王族をたばかったこと。

 まだ十代の小娘ではあるが、これは重罪だ。



 本人は義姉が聖女とは思えなかった、殿下を愛するゆえに事件を起こしてしまったと言い続けているらしい。

 


 両親は義妹の計画は知らなかったようだ。

 まあ、知っていたら止めるだろうし。あんな茶番に賛成するほど愚かではないだろう。



 だから我が家に対する処分は父の引退ですんだ。


 しかしあの日、言葉は濁したが全部ぶちまけたせいで、前妻の娘をないがしろにする伯爵の悪評は瞬く間に社交界に広まった。


 現在領地で父は義母と一緒に引きこもっている。



 今は私が伯爵だ。


 

 

 そして王家からの迷惑料として私は求めた。義妹への処罰を決めさせて欲しいと。


 受け入れてくれた陛下と宰相閣下の前で私は刑を宣言した。




「あの子にはわたくしと同じ修行をしてもらいますわ」



 あの子の罪は、自分こそが真の聖女であると殿下を騙したことである。


 だったらそれを本当にしてしまえば罪は消える。




 私の要求は、義妹が()()()()()()修行することだけだった。

 




 そして私が課された修行‥‥それは険しい山の岩壁に建つ神殿に寝泊まりし、祈りをささげること。

 

 近くに村さえないから、生活はほとんど自給自足。

 特に水汲みは苦行である。


 

 果たしてあの子に耐えられるかどうか。




 そして三年の修業が終わっても、当主の私はあの子を勘当している。

 義母の実家にも圧力をかけたから、だれも迎えに行かないだろう。


 

 

 身寄りのない平民が、あの場所から自力で抜け出すことは不可能だ。


 おそらく一生を聖女として神殿ですごす。




 そんなの流刑とどこが違うんだろう?




 きっと私は義妹が言う通り、冷酷なのだ。


「あの子にとっては、十分な罰です」


 私は優雅にほほ笑んだ。


聖女ものに挑戦したけど難しい。


私には健気なヒロインなんて書けないわ!



よろしければ、 ヒロイン、我に返る も読んでみて下さい♪

残念ヒロインが活躍します。

(リンクの張り方がいまだに分かりません(-_-;))

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― 新着の感想 ―
コメント返信ありがとうございます。 >なので義妹も三年修行すれば、確実に聖女として認められます。 あ~、義妹ちゃんは魔女ではないから修行しようが推薦を得ようが聖女にはなれないのにねって言いたかった…
魔女と聖女は同じもの。 まず魔女であることが必要で、三年間修行するかあるいは先代の聖女、または複数の魔女による推薦が必要なのですよね? 義妹ちゃんは修行しても聖女になんてなれないし、でも勘違いして私も…
まぁ所謂「修道院送り」にある種の懲役刑が加算されただけみたいなとこはありますね…… 多分無理なんだろうけど刑期明けがある分流刑より扱いが軽くなると思うので、 主人公が慈悲深いと判断されるメリットはある…
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