表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
海軍王女アンネの異世界探検航海  作者: 海の向こうからのエレジー
チャプター4~タシフォーネの砦
83/159

4-APPENDIX(3) ギーアル半島の海軍戦術と艦船種類


飛び道具に軌道修正機能を追加する「照準」の付与魔法はギーアル半島の北にある島国ハインフェーカ王国で誕生した。海賊との終わりなき闘争でハインフェーカの海軍戦術が発展して独特な戦い方を練りだした。カリスラントが来るまでは西の大陸北部で一番先進的な海軍を保有していたから、周辺諸国の模倣対象でもあった。80年ほど前から、ギーアル半島の海上貿易成長によってハインフェーカの海賊たちが半島に流れて、それからギーアル半島の海軍戦術もほぼそのハインフェーカのと同じになった。


「照準」の魔法を最大限に活用するために設計された兵器は魔導バリスタ(ハインフェーカの言葉での本来の名前はあるがわかりやすさ重視でアンネの安直な名付けで統一する)。長さ9Mの、非常に大型なもの。それで3KM先への射程と破壊力を確保する。ここまで大型化すると弦を引くのも大変だが、それをハインフェーカで取れる「リチュスム」というワーム型の魔物からの素材を加工して作った、魔力の糸を生成する魔道具で解決した。魔導バリスタ1基を運用するには、矢弾に「照準」をかける付与魔法士と、射角調整のために回転台座を人力で操縦する水夫2人、最低でも3人が必要。後は弦を引く魔道具に魔力を供給する役だが、専門技術が必要ないので多くの場合は付与魔法士が兼任か、他の手が空いている人がやる。軍艦の場合、防御魔法士一人にその役割をやらせてバリスタ組の守りも兼ねる事が多い。魔力レーダーが登場するまで、「照準」を付与する時攻撃目標を目視する必要があるから、基本的に「照準」の魔法士が敵艦を目視して直接魔法をかける。地上の防御施設などを攻撃する場合、戦う前に高所から目標を見て「照準」の魔法を予め用意するのも可能。船を攻撃する場合、マストを狙って相手の航行能力を奪うのが一番多い。相手の意表を突きたいなら船楼やラダー(舵)を狙う時もある。矢弾のスピードと威力が高いが、攻撃魔法での迎撃は可能。接近すればするほど反応時間が短くなり迎撃の難易度が上がる。そこは魔法戦主体の内海の海軍戦術と同じ。


魔導バリスタを最初に見た時から、アンネはその誘導性能のポテンシャルに目をつけた。それを使って魔導砲を改良したり、新しい兵器を作ることができるじゃないかと考えている。それで「照準」の魔法を砲弾にかけて精密攻撃する試みは、ジレンディスの嵐の戦いで初めて実戦に投入した。付与魔法士が魔力レーダーによる位置情報を使って、目視できない状況でも攻撃可能と実証された。しかし課題も残っている。「照準」は中級魔法だから習得に2~3年が必要。今から付与魔法士を育成してもすぐには使えない。それに魔力レーダーはブリッジに設置されているので、砲弾を人力でブリッジに運んでそこで付与魔法をかけるという非効率的なやり方になった。砲列甲板にも魔力レーダーを配備するのが一番だが、コストを考慮するとそれは非現実的。ブリッジから砲列甲板までの経路をクリアする、新しい船のデザインをアンネが考案している。


魔導バリスタでマストを撃ち倒して白兵戦するのが基本戦術だが、ギーアル半島の白兵戦は特に変わったところがない。西の大陸に汎用バリアがないから、弓矢も使われる。海での白兵戦と言えば南海のテランクジーレ人だから、その独特な近接戦法を学んで導入しようとする時期もあったが、海域と気候条件があまりにも違うから断念した。そもそもテランクジーレ人の戦法は何もかもシーサーペントを中心とするから、シーサーペントの生息に適する、水温が高い南海でないと使えない。


聖地の守護者ユールキ=ガーズルアには「盾持ち」と呼ばれる、タワーシールドを携行する重戦士たちがいる。彼らは元々地上戦で弓矢を防ぐのが役割だが、今は対魔導バリスタのスペシャリストになった。高度な身体強化と、靴に仕込んだ特殊な魔法金属で踏ん張りを強め、二人一組でタワーシールドを構えてバリスタの攻撃を防ぐ。「盾持ち」は七国同盟の要人たちが船を乗る時の護衛として重宝される。最悪の場合を想定して、要人をタワーシールドの下に匿え、海から脱出する「奥の手」を編み出した。それでカモフラージュカラーになるようにタワーシールドを紺色に塗装する。


ギーアル半島はハインフェーカを中心とする北海貿易地域と、ムサナシピルを中心とする東海貿易地域の間だから、艦船設計は両方からも強い影響を受けている。現在ギーアル半島で一番ポピュラーな船は2本マストの中型艦、ハインフェーカ発祥の「ダニシーサ」。通常は乗組員15人前後で運用。旅客と貨物の運送、そして魔導バリスタ1基搭載の軍艦としても採用される。そんな汎用性が高く、使い勝手がいい船。乗客のみ乗せる場合30人位が快適に過ごせる限界。フェインルーサ大公は作戦のために60人を詰め込んだが、あれは極端な短距離だからできるの、相当無茶な運用だった。現在本場ハインフェーカでは「ダニシーサ」の軍用カスタムや商業用発展型がだんだん主流になるが、ギーアル半島ではまだ一つ前の世代の「ダニシーサ」通常タイプが一番良く使われる。


同じく2本マストの中型艦、ギーアル半島古くから受け継いた設計の発展型「トゥミフラ」は、「ダニシーサ」が普及前の一番ポピュラーな船。「ダニシーサ」と比べると甲板の面積がやや狭く、魔導バリスタの運用は一応可能だが、あまり向いてないので、「ダニシーサ」にシェアを奪われた。近年まで残存した「トゥミフラ」は6年前テュークリム共和国が主導したタシフォーネ海賊討伐戦でほとんどがロスト、そのまま表舞台から消えた。


他によく見る艦船なら、「スルーピア」と「ティカミア」が挙げられる。2本マストの小型艦、ムサナシピルのルファークレク人がよく使う「スルーピア」は、ユールキ=ガーズルアなどが要人の旅行や小規模戦力の輸送のために正式採用されている。小型艦の割にちょっと無理すれば魔導バリスタ1基を運用できるのが「スルーピア」が特に評価されるところだ。3本マストで、船尾楼が高いのが特徴な大型艦、同じくルファークレク人、そしてテランクジーレ人がよく使う「リースクラック」もたまに見かける。ギーアル半島で一番ポピュラーな大型艦は3本マスト、貿易と軍事両方にも使われる大型艦「ティカミア」。成長する半島南部貿易のために、テュークリム共和国とストリュア神聖帝国東側諸侯が共同で開発した。高い積載量と、魔導バリスタ2基を同時運用できる火力がセールスポイントだが、貨物満載の時相当鈍足になるのが大きな欠点。それに急激な風向変動に弱いから、悪天候での航行能力が低い。それでテュークリム共和国では「ティカミア」の改良型を開発するか、それとも全く新しいデザインの次世代大型艦を設計するかの議論をしている。


ちなみに探検艦隊のテルエミレス級は「リースクラック」や「ティカミア」より一回り大きい大型艦。ギーアル半島でここまで大きい船はこれまで見る機会がほぼないので、シーリンタに初めて堂々と姿を表した時相当なインパクトがあった。


タシフォーネの支配を確立したところでチャプター4が終わります。チャプター5が始まると作中の時間が少し進むので、ここで一段落するのがちょうどいいと思って、一旦完結とさせていただきます。スタックが貯まったら再開します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ