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海軍王女アンネの異世界探検航海  作者: 海の向こうからのエレジー
チャプター4~タシフォーネの砦
72/159

4-17 作戦終了後の一時 3

――再誕の暦867年7月25日、タシフォーネの砦、アンネの私室――


「ねぇ、この部屋の防音は、本当に大丈夫?」


「……くすっ。もし、実は大丈夫じゃない、と言ったらアンネ様はどうします?」


「そんなの、決まっているじゃない。直ちに中止にしないと、きゃっ、いっ、いきなり、なにを……」


「ふふっ。やっぱり、こんな風に恥じらうアンネ様が愛しくてたまりません……大好きですよ」


 ベッドの上に縛られている私と、意地悪な笑みを浮かべ私の脇腹をくすぐるファルナ。たとえ縛られていないとしても、ファルナに「大好き」なんて耳元で囁かれると結局私は抵抗できなくなる。


「だ、だめ……声を聞いて、人が入ってきたら、どうするの……?」


「そうですね。アンネ様はどうしたいと思います?」


「……怖いから、やめて……きゃっ!あははっ、やっ、やめっ……」


 ファルナはやめるどころか、逆に攻めの手を強める。他のことを考える余裕を奪われて、私はファルナのなすがままに。


「……もう、ひどいよ。やめてって言ったのに……」


「申し訳ありません。アンネ様があまりにも可愛かったから、つい……」


 プレイが終わって、拘束を解いて私を膝の上に抱きしめるファルナ。言葉では謝ってるのに、顔がニコニコしてまったく自分が悪いと思ってない。私が本気で怒ったわけじゃないのを知ってるから。


「大丈夫ですよ。みんながこの部屋の近くにいないのを確認しました。もし緊急状況があっても、わたくしは一瞬でアンネ様の口を塞ぐことができます。アンネ様に恥をかかせませんから」


 私の私室となったこの部屋は、砦の中央にある館の最上階、執務室の奥にある寝室。海賊たちの痕跡を消して最低限の快適さを確保しただけ。もしタシフォーネを放棄する必要がある場合を考えて、レーダーなど軍事機密とカネミング石の石版のような貴重品はまだ島に設置していないし、居住環境の整備もあまり進んでいない。


「ねぇ、一緒に夜景を見ない?」


「よい考えですね」


 ファルナと窓際に立って外を見ると、澄み渡る空に無数の星々がきれいに並んでいる。翠緑に輝く海峡が月明かりに照らされて、すごく幻想的な景色になる。夏になると水生植物が増殖するのがこの景色の原因らしい。その中に代表的なのは「シーリン」という名の海草。そのまま地名になった。


「ねぇ、ファルナ……あなたから見て、今のみんなのコンディションはどう?」


「悪くないと思いますよ。少なくともアンネ様が心配する必要はありません」


「本当に?街に遊びに行けないのを、不満に思ってない?」


 タシフォーネ島は探検艦隊にとって安心して休息できる拠点になった。クルジリオンの協力を得て酒場と茶屋が一つずつ開業して、最低限の娯楽を提供できるようになった。しかしタシフォーネ島の本質は軍事拠点のまま。本当の意味でリフレッシュするのが難しい。やはりみんなを街に行かせるのが一番だが、フェインルーサと敵対関係に入ったせいで今はできない。海峡自由航行保証作戦の初日でフェインルーサの海軍が深刻な被害を受けた。それ以降はこっちに挑むことなく、大人しくしているが、空中観測の偵察によるとシーリンタにはまだ30隻くらいの軍艦が駐在している。引き続き監視しないといけない。僅か19KM先、目に見えるところにシーリンタのような繁華な港町があるのに、そこに行けない現状にみんながストレスを感じるじゃないか、私はずっと心配してる。


「アンネ様はもう少しみんなを信用してあげましょう。アンネ様のためなら、これくらいの辛抱なんて全然苦に思わないでしょう」


「わかった。ファルナの言う事を信じよう。でもやっぱり、辛抱なんだね。ファルナから見ても」


「アンネ様がわたくしに教えたではありませんか?平常時になるべく兵士たちにゆとりを持たせることで、非常時になれば重要性の低いものから切り捨てることができます。それで苦境を乗り越えます」


「確かに、そんなことは言ったけど……」


「いつもの悪い癖が出ていますよ、アンネ様」


 私がまたネガティブに考えすぎてると、ファルナがそう言いたいのね。


「……はぁ。そう言っても、結局私の予想通りに、事態が悪い方向に向かっているじゃない?」


 海賊を滅ぼしたことで当地の権力者と敵対関係に。島を守るために探検艦隊は動けない。唯一予想より安心できるのは外交関係。クルジリオンを通じて、七国同盟の中のテュークリム共和国を味方に引き入れた。でも私たちが不利になるとクルジリオンはきっと見捨てる。そんなビジネスな関係だから。まぁそれをわかっているから不利にならないように慎重に立ち回っているから本当は心配する必要はないけど……


「補給品は一昨日無事受け取ることができました。言い換えると本国からタシフォーネまでの航路は確立しました。そう遠くないうちに二回目の補給と共に増援が来てくれます。そうなると探検艦隊はある程度動けるようになりますし、フェインルーサ大公も島の奪還を諦めざるを得ません。クルジリオンが仲介してくれるから、まだ時間がかかるが話し合いによる解決も見えてきます――わたくしが見る限りでは、すべてが順調に進んでいますよ」


「……本当にファルナはすごいね。どうしてそこまで楽観的になれるのかな」


「アンネ様と違う観点を提供するのも、わたくしの責務ですから」


 またため息をつく私だけど、ファルナが言ってることも何も間違っていない。数日前に連絡のために東に行った2番艦分隊は補給品を運んでくれる海軍の輸送艦隊と合流して、タシフォーネまで案内した。補給品が届いたのは非常に大きい。特に弾薬は海峡自由航行保証作戦で大量に消耗したから、補充できてすごく安心した。クルジリオンの外交協力も順調だ。テュークリム共和国はもう私たちのタシフォーネ占領を追認した。私たちが有利になるように、七国同盟議会での工作も進展があったと聞いている。直接な関係者であるカーチマス王国以外はひとまず様子見すると決めた。そのカーチマス王国も島の奪還が困難だと考えて、他に方法がないかを模索している。フェインルーサ大公は自分の失敗を隠蔽しようと情報操作しているみたいが、私たちは七国同盟議会経由でタシフォーネの現状を直接カーチマス王にリークしてやった。それでカーチマス国内の対立と責任問題に発展すればこちらの状況がさらに好転するだろう。


 夜景を眺めながら、私たちは艦隊の現状について色々意見交換した。一番気になるのはやっぱりフェインルーサの艦隊だ。自由航行保証作戦で半壊したが、他の領地から船を集めて、今シーリンタの港の中に30隻くらいの軍艦が待機している。まだそれなりの戦力を保持しているのに、今まで全然目立つ動きがなく、大人しくしてる。ちょっと不気味なくらいに。


「本当に、このままで大丈夫だろうか?何かすべきことがあるんじゃないかな?それとも、何かを見落としているじゃないか?」


「大丈夫です。わたくしも一緒に考えますから。約束通り、貴女の不安と恐怖はわたくしが引き受けます」


 しかし私たちはまだ知らない。カリスラント海軍創設以来の、最も苦しい戦いはもう始まろうとしていることを。


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