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海軍王女アンネの異世界探検航海  作者: 海の向こうからのエレジー
チャプター4~タシフォーネの砦
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4-4 ファーストコンタクト 1

 ラズエム=セグネールの作戦室で、私は救助した西の大陸の住民二人と会話を試みる。私のそばには参謀たちがサポートを、男性二人の後ろに監視の海兵たちが控えている。


「すみません。寡聞にして、カリスラントという国には聞き覚えがありませんが……」


「まぁ、そうなりますね。カリスラントはここから遥か遠い東、海の向こうにありますから」


「海の向こう?ほぉ、これまた、スケールのでっけぇ話だな」


「我々カリスラントがこの場所に到達するのはこれが初めてです。この船はカリスラント探検艦隊の旗艦、私は艦隊司令を務めています。あなた方に色々聞きたいと思いますが、よろしいですか?それとも少し休んでからにしたほうがいい?」


「あっ、はい。僕は問題ありません。何なりとお聞きください」


「じゃ早速始めますね。そちらからも聞きたいことがあれば遠慮なく聞いて下さい」


 商人のレンダースはまだ困惑して何を聞けばいいかを考えてるみたい。それで私が先にいろいろ質問した。レンダースの新リミジタース商会は半島の西南にある大きな港町「クルジリオン」を拠点にしてる、位置的に多分先日2番艦が調査した範囲よりさらに西。彼の商会は海運が主な業務じゃなく、自前の船を持たない。必要なときだけレンタルサービスを利用する。当然普段は船に乗らない。今回は貴重な荷物を北の「トズルサ公国」へ輸送するため商会主自ら采配をとったが、まさかこんな事態になるとは……ってわけだ。


「あの……聞いてもよろしいですか?殿下が話している言葉に僕は全く聞き覚えがないですが、どうして意味がわかるのですか?」


「これはある特殊な魔道具による恩恵です。私にもあなたたちの言語がわかりませんが、その魔道具の力があれば理解できます。今はこの部屋にいる全員に効果があります」


「なるほど……それともう一つ、どうしてこの船には女性の方しかいないのですか?カリスラントは女性が支配地位に立つ国なんでしょうか?」


 もしかして、カリスラントを地球の伝承にあるアマゾネスみたいな、極端な母系社会だと思ってるのか?まぁこういうところがわからないと気づかないうちに失礼を働くこともあるから、早急に確かめたいのね。


「そんなことはありません。トラブルを避けるためカリスラント海軍では男性と女性が同じ船に乗りません。この艦隊の指揮官は私ですから、旗艦は自然と女性だけの船になりました。他の船は普通に男性のみで運用しています」


「ほぉ、ホンマにおなごだけで船を動かせるとは、大したもんだ。しかし、ホンマに大丈夫かい?」


 作戦室にいるほぼ全員に険しい目線を向けられてるのに全く気にせず、ガハハと豪気に笑うヒゲモジャ。ちょっとアレな言い方だけど、別に私たちのことを侮ってる様子はなく、純粋に興味と心配で聞いてるみたい。でも他のみんなはこれまでのフラスダーンの失礼な言動にすでに我慢の限界に達したから、そろそろ爆発しそう。特にティエミリアたち「姫様派」の反応が怖い。


「あの、皆さん……どうかフラスダーンさんの言動を大目に見てください。彼が所属する『ユールキ=ガーズルア』は『聖樹』の祝福を受けた、聖地『セルフェニ』の守護者。騎士団である同時に神職でもあります。この『七国同盟』では彼は王族に対しても普段からこんな態度で接します」


 いきなり初出の単語がいっぱい出てきて、参謀たちが急いでメモを取る。会話に集中する私が固有名詞がわからなくなったとき参照できるようにサポートしてくれる。


「高位の神職の方なんですね。レンダースさんもこう言いましたし、みんなはもっと異文化に対して理解を示してあげて」


「あたしは結構気に入ってるよ、こいつのこと。できればお手合わせしたいくらいだ」


「ガハハ、これまた勇ましいお嬢さんだ。実力も本物のようだし、ぜひとも……と言いたいところだが、すまんな。ワシの得物はさっきの戦いでなくした。今は満足に戦えん」


「そうか。実に残念だ」


「ジャイラお姉様。話が脱線するから、そのへんにしてください」


「へいへい」


 手が空いてる士官が熱いお茶を用意してくれた。今は真夏で気温が高いが、客人の二人はびしょ濡れになったからその配慮ね。


「先ほどの戦いについても聞きたいことがありますが、よろしいですか?」


「もちろん構いませんが……見ていたのか?一体どこから……」


「そこは我々カリスラント海軍の優れた情報収集能力の賜物ですね。まず聞きたいのは、どうしてフラスダーンさんは途中から参戦するのですか?それに、あのシールドを構えてマストを守る戦術は二人一組が基本なのに、どうして一人だけでやったのですか?」


「ほぉ、『ギーアル』の地が初めてと言う割には色々知ってるようだな。ワシは現役引退したばかりで、今回は故郷に帰るためにレンダース殿の船に乗せてもらった、ただの乗客に過ぎない。最初は乗組員だけで対処すると言われて大人しく引っ込んだが、形勢不利を見て助太刀すると決めた」


「それで、相方がいないまま出撃したのですね……もう一つ気になるのですが、どうして一番大きい船が残って、他の2隻を逃がしたのですか?」


「あぁ、いや、それはですね……あの2隻は僕の商会とは無関係です。ただ通行料節約のために同行したに過ぎません。奴らの狙いは僕だということがわかったから、無関係な人々を巻き込むのは忍びない、と言いますか……」


「どうしてあなたが狙われたことがわかるのですか?あなたの船にも、あの三本剣の黄色旗がありましたね?この海峡の海賊はあの旗を持つ船団を襲わないじゃないですか?」


「そんなことまで知っているのですか!?……ええ、そうですね。あの『フェインルーサの剣の誓い』の旗は海峡の通行証代わりです。あれを掲げれば、襲われることはない筈なんですが……」


「それでも狙われる自覚があるということは、もしかして……偽造の旗を使っていたのですか?」


「まさか!あの旗には細工が施されています。専用の魔力染料を使ってるから、奴らには判別できます。それに2ヶ月ほどで紋様が黒ばむから、期間切れの旗を使うと太陽の下では速攻でバレます」


 なるほど。視界不良によって座礁のリスクが上がるのに、夜間で海峡を通過しようとする船団が多いわけだ。そうやって期間切れの通行証を誤魔化しているのね。


「はぁ、どこから説明すればいいでしょうか……僕が商会主になったきっかけは、昔世話になった人が亡くなって、その人の商会にお家騒動が起きた際独立を選びました。結局その人の商会が二つに割れて、片方は経営不振で先日僕の商会に吸収されました。そしたら脅迫状が届きました。『恩人の息子を食い物にした罪は血で償うことになるだろう』、と」


「もう一人の息子からですか?」


「証拠はありませんが、彼の傘下に入れという要求を僕が断った直後に、例の脅迫状が来ましたからね……」


「それで海賊を動かしてあなたを襲撃したというのですか?彼にそんな力があります?」


「実は、前から噂があったんですね。『タシフォーネの海賊』は相応な報酬さえ貰えれば、海上での殺人依頼も請け負います。『フェインルーサの剣の誓い』を所持している船でもお構いなしに」


「そんな真似をして許されるのですか?あの海賊集団、本当は海峡の通行料を取るために鎮座していますね?それをやったらもうただの無法者じゃないですか?」


「本当に、どうやってそこまで調べたんですか?……ええ、『タシフォーネの海賊』の背後に『フェインルーサ大公』がいるのは公然の秘密です。大公があんな勝手を許すとは思いませんから、昨日まで僕も殺人依頼なんてただの噂だと思いましたが……やはり、蛇の道は蛇ですね。隠れて悪さをする分には、さすがの大公も完全に止められないでしょう」


「はぁ……海賊なんてを使う時点でこうなるのを予想できたんじゃないですか」


「まぁそこは今の大公の責任とは言えないかもしれませんね。『タシフォーネの海賊』が最初に現れましたのは、確か……20年以上前か。まだフェインルーサの先代の時でした」


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