3-APPENDIX(2) カリスラント海軍の組織構造変革
最初に、カリスラント海軍の権力、責任関係はかなりいい加減なところがあります。カリスラント自体がまだ中世的な封建王国だから、寧ろそうであるほうが自然と言えるでしょう。地球の知識があるアンネはもちろんそれを法律で明文化するメリットがわかっていますが、他にもやるべきことがたくさんあるし、他の人にその必要性を説くのが難しいから後回しにしました。
カリスラントの軍事の最高責任者は「国王」だが、直接命令を下すことは珍しいです。普段は「軍事大臣」と方針について議論し、その大臣が国王の意思を汲み取って軍団長、貴族領主、兵站関係の責任者などに具体的な指示を出します。海軍が成立すると同じく軍事大臣が国王の意思を伝えるようになりますが、「海軍総司令」アンネは軍事大臣の指示に従わずに別な行動を取ることが多いです。理由は大体二種類に分かれます。「その指示は現実的ではない」、もしくは「その目標を達成するにはもっといい方法がある」。軍事大臣は陸軍出身だから海のことがよくわからないし、アンネも指示に従わない理由についてちゃんと説明するから、問題になることはありませんが、結果的に海軍の立場が強くて独立性が高い現状を生み出しました。
アンネが作り上げた海軍の組織は以下3つの部門で構成されています:
<1>実働部隊の4艦隊(後に5艦隊に拡大)と付属の護衛艦隊
<2>育成機関の海軍士官学校
<3>後方支援の港など地上施設とサラサーレル造船所
その中でも、アンネが海軍士官学校との関わりが特に深いです。大西方戦争勃発までアンネはほとんどの時間を人材養成に費やしました。その合間遠話の魔法を有効活用する通信システムを使って実働部隊を効率よく掌握しました。アンネにも処理能力の限界があるから、陸上勤務のスタッフと造船所の方は大まかな指示だけを出して、元老たちに任せました。大抵のことは自分にしかできないから、必然的に初期の海軍はアンネが嫌いなワンマン体制になりました。
大西方戦争はカリスラント海軍の大きな転換点となりました。アンネは本来の総司令兼第一艦隊司令のポジションに戻り、士官学校は専任の講師たちが授業をするようになりました。ロミレアル湾の大勝利がアンネの威信を限界まで高めました。戦争序盤から急ピッチで建造した新鋭艦は一年目の冬で完成、新設の第五艦隊に編成。この第五艦隊は戦争後半の二大事件、トリミンス台地の戦いとレルースイ=ラミエ大神殿砲撃事件に深く関わりました。
戦争の後、アンネが総司令を辞任して探検艦隊司令になり、ようやくそのワンマン体制が終わったが、次の総司令の人選に難航しました。アンネが残した業績が大きすぎる、そして探検艦隊が海軍組織内の立ち位置が不明確なのが主な原因でした。探検艦隊が海軍と独立した指揮体系ならまだしも、もし探検艦隊司令が総司令の下なら、恐れ多くてやっていけません。ついでに、海軍は教え子たちに任せたと言うのに、アンネは時々無自覚に海軍を昔のようにこき使おうとします。本当は良くないですが、全員がそれを当たり前のように受け入れました。この現状を踏まえて海軍の首脳陣が編み出した解決案は、海軍評議会と責任海域制でした。
カリスラント海軍評議会は以下のメンバーで構成されています:
<1>完全な権限を持つメンバー:4名の艦隊司令(第五艦隊は大神殿砲撃事件の影響で解散して再編成に)
<2>担当分野に関連する議案でのみ投票権を持つメンバー:海軍士官学校校長、サラサーレル造船所所長、地上支援参謀長
<3>特別メンバー:最高顧問アンネ(完全な権限、評議会未出席の場合は採決した議案に否決権を行使できる)、海外領地防衛司令リミア(暫定メンバー、海外事務関連のみ投票権)
評議会は総司令を空位にした海軍の新しい最高意思決定機関です。サーリッシュナルの海軍本部で月一回開きます。任務中で出席できない艦隊司令などは遠話での参加が認められます。最高顧問アンネがもし遠話も届かない遠隔地にいる場合会議の記録を事後報告します。評議会は主に定例報告と反省点の洗い出し、後は軍事大臣からの指示とリクエストについて具体的な実行手段を検討します。急を要する事項が発生する時は評議会メンバーもしくは軍事大臣の要請で臨時会を開きます。
総司令がいないカリスラント海軍は突発状況に対して即時な対応ができない恐れがあります。それで取り入れた解決案は責任海域の設立。艦隊司令はそれぞれ一つの海域を担当します。担当区域内では以前の総司令と同じ権限を持ちます。一人担当区域がない艦隊司令は後詰めとして艦隊の休養と整備をします。
責任海域の仕切りは以下の通り:
<1>サリサラス海区域:重要拠点は海軍本拠地サーリッシュナル、サラサーレル造船所、アルトー=アファンドリ島
<2>西南海区域:重要拠点はフェルテジ
<3>西フォミン海区域:重要拠点はテーツ、ロミール
属国の方にも責任海域を設けたが、普段は属国の海軍が防衛を担当、有事の際一時的カリスラント艦隊の担当区域に指定:
<4>東フォミン海区域:重要拠点はトゥーリースト、メリース
<5>ザンミアル海(内海西南)区域:重要拠点は首都タリサミング、中立都市国家トンミルグ




