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3-8 常雷の海で足止め 2

――再誕の暦867年5月27日、探検艦隊旗艦ラズエム=セグネール、第二休憩室――


「これで、ご満足いただけましたか?アンネ様」


「はぁ、はぁ……うん。すごく、よかったよ……」


 革のアームバインダーとレッグバインダーできつく縛られて、ダブルベッドの上に転ばされてる私。苛立ちを解消するために、今日はいつもより激しくするようにファルナに頼んだ。なにせこの海域ですでに10日以上停滞したから。南へ進んでも西の天候状況がずっと嵐、途中で方向転換して北のほうを見ても西への進路は相変わらず嵐に包まれてる。一体どうなっているのよこのあたりの気候。このままではみんなの士気が下がる一方。そろそろ腹をくくって強行突破を試みるべきか?まぁ、それは追々考えよう。さっきのプレイがすごすぎて今日はもうなにも考えられない。


「それは何よりです。でも実は、今日のプレイはまだ終わっていませんよ」


 ファルナは身をかがめて、私の耳元で予想外の言葉をささやく。


「え?でも、時間が……」


 第二休憩室の利用は一度に1時間まで。プレイの途中から頭が真っ白になって時間感覚が曖昧だが、残り時間はそう多くないはず。この後の枠を予約した人もいるし、そろそろプレイの後始末しないといけないと思うが……


「大丈夫です。誰にも迷惑をかけないように手を回しました。アンネ様のためにちょっと特別なプレイを用意しましたので、わたくしにお任せください」


 次にファルナが取り出すのは口枷。私たちがあまり使わない拘束具だ。私たちにとって会話はプレイの大事な一環、それが封じられるのは好ましくない。それに言葉を発せない状態ではセーフワードが使えず、他のサインに頼るしかない。プレイの危険性が上がるのも原因の一つ。だから口枷を使うときファルナは必ず今みたいに、プレイを一旦中断して私に承諾を求める。


「一体、なんのプレイなの?どうしても、それを使わなきゃダメ?」


「アンネ様は言葉を封じられるのが怖いのを承知した上での提案です。わたくしを信じてくれますか?」


 そう言われると私も同意するしかない。せっかくファルナが用意してくれたプレイを台無しにすることなんてできないから。


 口枷を嵌めると、ファルナは動けない私をお姫様抱っこにしてクローゼットの中に入った。事前に中のものが全部撤去されたみたい。代わりに椅子が置いてある。その椅子の上に座らせて固定された私に、ファルナは拘束を一つ一つ丁寧にチェックしながら問いかける。


「きつく縛りすぎたところはありませんか?この体勢で大丈夫?」


 返事できない私は軽くうなずく。そしたらファルナはクローゼットの扉を閉める。えっ?まさか、私をここに放置するの?


「もし何か緊急状況があったらクローゼットの扉を蹴ってください。直ちにプレイを中断させますから」


 ちょっと?本気なの?もうすぐ他の人が使う時間よ?


 クローゼットの扉の隙間から外の様子がちょっと見える。ファルナが手早く掃除して、ベッドシーツを交換した。その後どうなったのかはここからよく見えない。部屋を出るのを見てないから、多分どこかに隠れたみたい。


(うっ、もう次の人が来たよぉ……)


 部屋に入ってきたこの二人は確か、海兵の娘。カップルだとカミングアウトしたし、堂々と第二休憩室を利用してる。海兵隊と時々一緒に訓練するファルナとも仲がいいみたい。一体どういうつもりなの?このままではこの娘たちのプレイを覗いてしまう……動けない私は目をそらすことすらできないから。


(う、うわ……すごい……えっ?そんなことまでするの?)


 私に覗かれているのを知らずに、二人が情熱的なプレイを繰り広げる。私とファルナのような一方的なプレイとは違う。二人の間で何度も主導権の交代をして、対等に愛し合う。


(見ていてこっちが恥ずかしい……それに、また体が熱くなってきたよ……さっきはファルナにいっぱいしてもらったのに、どうして……あぁ、動けないのがすごくもどかしい。こんなの生殺しだ……)


 これ以上二人のプライベートを侵害したくないのに、扇情的な声につられてつい見てしまう……いや、自分に嘘をつくのはやめよう。本当に見たくないなら目を閉じればいいだけ。良くないと思いながらも私は彼女たちのプレイに魅入られる。それで罪悪感に苛まれながら、どうすることもできない情欲に侵され、もう気が狂いそう。


(やっと、終わった……)


 海兵の娘たちの情事が終わって服を着たら、ファルナが姿を表す。


「お疲れ様でした」


「……終わった後にそんなこと言われるのは、とても妙な感じがしますね」


「うん。恥ずかしいし……」


「まぁ、その……恥ずかしいけど、お二方様に見られてるのを思うと、なんか……いつもより盛り上がったような気がします」


「……うん」


 ……今のはどういう意味なの?あの娘たちは、私とファルナに覗かれてたのを知ってる?


「あれ?その、アンネ様の姿が見えないのですが……」


「普段の姿から想像できないかもしれないが、実はアンネ様に恥ずかしがり屋の一面があります。こういう話になると出てきてくれません」


「まぁ、そうなんですか?ちょっと、意外と言うか……」


「知られると困るほどのことでもないが、できれば他の人には秘密にしてくださいね」


 もう、ファルナはなんでそんなことを言うの?いや、そうやってごまかすしかないのはわかってるけど……


「それで、参考になりましたか?」


「ええ。とても良いものを見させてもらいました。ありがとうございます」


 話が終わって、海兵の娘たちが退出すると、ファルナはクローゼットを開けてまずは口枷を外した。椅子に縛られてるままの私がファルナに問いただす姿は非常に滑稽に見えるだろうね。


「ねぇ、説明してくれる?これは一体、どういうことなの?」


「はい。『最近アンネ様とのプレイがマンネリ化しているので、よろしければ参考のために貴女たちのを見せてくれますか』と、わたくしの友達に頼んでみたら、快く乗ってくれました」


「立場を利用して彼女たちに圧力をかけたりしてないよね?」


「断じてそんなことはありません。アンネ様も聞いたでしょう?わたくしたちに見られるのを意識すると、いつもより盛り上がったと言いましたよ」


 そういえば、確かにそんなこと言ってた。変わった嗜好を持つ人間は意外と多いよね……まぁ、私もそうだけど。


「はぁ……色々言いたいことはあるけど、まぁみんな楽しめたならそれでいいか」


「くすっ。そう言ってくれるととても嬉しく思います」


 自由の身に戻った私はファルナと一緒に部屋を掃除する。プレイを見せてもらう代価として後始末を肩代わりする――ファルナがあの娘たちとそう約束したから。私が拘束されているところをあの娘たちに見せるわけにはいかないから先に退場してもらう、というのが本当の理由だ。


 しかし、ファルナは本当に私のことをよく理解しているのね。昔一度放置プレイを試したことがあるけど私はあまり好きじゃなかった。ファルナが離れると私のテンションが急降下するから。それで今回はこんな変則的なプレイが企画された。一番のスパイスは覗きによる罪悪感かな。私はこういう後ろめたい気持ちに特に弱い。ガッチリと拘束される束縛感と、海兵の娘たちの情事による視覚的刺激もすごく良かった。そして肉体と精神の責めが強ければ強いほど終了後の開放感がたまらない。他の人には勧められないけど、このストレス解消法は本当にすごく効果的だね。


 まるでこの気分転換法の効果が証明されたかのように、翌日の天候予測やっと良い知らせが来た。さらに2日後、探検艦隊はこれまで嵐に包まれた海域を突破した。


拘束プレイ、それも今回みたいな放置プレイはきちんと安全策を講じないとかなりの危険が伴います。

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