我慢の限界
我々の前に立ちはだかる最後の砦・神官。
そう簡単には神様に会わせてくれそうにない。
ただ彼も元々はこの爺に仕えていたようで命令に弱いのか強く断れないでいる。
当時も今も変わらない迷惑爺は健在。
「おい! 儂を貶める気か? 」
爺が脅しにかかる。
「いえ滅相もございません」
「では早く通すがよい。前回は恐らくトイレが使えずに仕方なく。
だから不可抗力であって儂のせいではない。たぶん神のせいであろう」
自分が脱糞したことを棚に上げて人に罪を擦り付ける最低爺。
これが本当に元神なのかと思うと情けない。
「分かりました。とにかくお待ちください。お呼びいたしますので」
男は行ってしまった。
それから待つこと二時間。
我慢の限界か? 体を頻繁に動かしている爺。
「儂をコケにしおって! 」
確かに遅すぎる。まさか時間稼ぎ?
我慢できなくなった爺が諦め帰るのを待っているのか?
もしそうなら逆効果では?
「まだか! まだ来んのか! 」
「ほらお爺ちゃん。順番ですよ。次の患者さんが終わるまで待ちましょうね」
「そうか息子よ。先生も大変じゃな。うん待つとしようかの…… うん?
儂は順番待ちできない自分勝手なイライラ爺ではないわ! ここは病院か! 」
「だって師匠。暇なんだもん。これくらい許してくださいよ」
「許せるか! まったくサーマみたいなことを…… おっと禁句じゃったな」
いつもの爺らしくない配慮。少しは責任を感じてるのかな?
「サーマ…… 今どこに…… 」
「ほれ気にするでない。きっと大丈夫さ」
「師匠! 」
「ホホホ…… 」
「それにしても遅いの。まだなのか? まだ来んのか! 」
「親方様! どうぞ落ち着きください。もう城内に入られました。
もう間もなくです。親方様! 」
「ううん? 何を言ってるアモ―クス? ここは聖地・フォレスト。
儂は神であり親方様などと言う野蛮な者ではない」
「もうせっかく良い調子なのに勝手に止めないでください」
「儂が悪いのか? 」
暇つぶしにと思ったが爺のノリが悪い。
まったくどれだけ待たせるつもりだよ。
「師匠。神様は今何をされてる頃なんですか? 」
元神の爺に予定を確認。
「うむ。今か。そうじゃなちょうど休憩してる頃かの」
何だリラックスタイムかよ。だったら早く会いに来いよな。
つい神様に対して思ってもみないことを。これはあまりにも無礼だ。
反省しなくては。
我慢の限界の爺に使いを頼まれる。
「おいアモ―クス! 見てきてくれんか。儂が行けば角が立つ」
面倒で動きたくないだけの爺に唆されて神殿の奥に行くことに。
「師匠一人じゃ心細い」
「ここでは神と呼べ! 」
どんどん横柄になっていく元神の爺。
「師匠。本当に歩き回っていいの? 」
勝手に歩き回って叱られるのは俺だ。爺の戯言を真に受けていいものか考え中。
「ふふふ…… 写真さえとらねば良い。後は記憶してもいけない。
疑いを掛けられたら一生ここから出られないから気をつけるがいい。
ただ歩き回る分には心配なかろう。良いか。堂々と笑い声を上げながら。
歌を歌うのもいいかもしれん。ただ神曲を歌ってはダメ。
これはタブーとされておる。
走ってもいけない。怪しまれるだけでなく破損させてしまう恐れがある。
お主には見えないだろうがもう少し行くと右に神木が生えている。
決してそれに触れてはならないぞ。それからトイレも我慢しろ。
ここでは禁酒、禁煙は当たり前。食事も許されていない。
それ故おくそも許されていない。
まあ儂は元神じゃから例外的に許されてるがな」
特別待遇の元神の爺と違って俺は決して動き回ってはいけないことが分かった。
「師匠。ここで大人しく待ってましょう」
どうにか説得する。
まったく冗談じゃない。制限があり過ぎて息がつまりそうだ。
本来神殿とは神聖なものと心得てるがそれにしてもあまりにも細かい。
「それからな。邪な心を持っていると魂を抜き取られてしまうぞ」
とんでもない発言をする爺。
一体…… おっと心を無にしなければ。
「それは神殿だけでなく聖地フォレスト全体の話。
神の森とはそれほど神聖であると言うことじゃな」
爺が隠していた真実。まさか仲間が消えたのはそれが原因?
それならそうともっと前に言っておいてくれよな。
今言っても遅すぎる。
邪な心。邪な心。
いくら主人公でも邪な心ぐらいある。
それが男であり人間である。
聖人君主とはいかない。
邪な心を見透かされては俺だってただでは済まない。
これはまずいな。
続く
①




