第六世界 ウエスティンとの別れ
第六世界。
俺たちはルーレットを求めて旅をしてきた。
第五世界では体が小さくなりまるで妖精のように。
それでも苦労してどうにか元の体を取り戻しルーレットも五つ揃えた。
しかしこの第六世界は今までのようには行かない気がする。
まるで次元が違う。俺たちは何て世界に来てしまったのだろう。
もう引き返すことはできない。
「師匠。ここは? 」
「そろそろかの」
どうやら爺は完全に思い出したようだ。
残すは二つの世界。
さあ旅立て。
第六の世界。
聖地フォレスト。通称・神の森。
イタタタ……
ウエスティンと頭をぶつける。
どうなってるんだ? まったく辺りが見えない。
まるでもやがかかっているかのよう。
「師匠? 」
「おお懐かしいの。ここは聖地フォレスト。神の森とも言うがな」
「師匠。ではここが神様のお住まい? 」
「うむ。儂もここで長く神として君臨した」
元神と自称していたがまさか本当だとは? ただまだ信用できないけどね。
「この霧は何ですか? 」
「靄でしょう。そのうち取れてくるわよ」
サーマの予想は外れる。
「これは霧でな。この世界では外はずっと霧が掛っている。
難攻不落の神の森として恐れられている。ただ人間はお前たちが初めてじゃ」
恐れ多い場所。
「さあ着いて来るがいい。神に紹介する」
そう言って歩き出した爺。案の定道に迷う。
安定の迷いっぷりでもうやってられない。
「師匠! 師匠! 師匠! 」
「うるさい! たぶんこっちじゃ。逸れてはならん! 迷ってはいかん!
もし迷ってしまったら二度と戻ってこれない。
神の森はそれは恐ろしいところじゃ。心してかかるように」
迷ったら一巻の終わり。
念の為に手をつなぐことに。
俺は爺とサーマと。ウエスティンはサーマとリザの間。
もちろん爺が先頭。リザが最後尾。
こんな時こんな状況でもドキドキする俺って変?
手をつなげば迷うことも一人ぼっちになることもないはず。
だがそれでも隙を突くのがウエスティン。
手をつないでいたのに姿を消すと言う芸当が出来るのがウエスティンの真の力。
いつの間に? 即死モードはやはり侮れない。
「私が離したから…… 」
サーマが自分を責める。
「つい邪魔になったから…… 私どうしたらいい? 」
いつもの冷静なサーマではない。
リザも俺も爺さえもこの世界に来てからおかしい。
高揚すると言うかとても平常心を保ってられない。
まるで見えない何かに操られてるかのように体が動く。
踏みとどまることが出来ずに己の要望に負けてしまう。
こんなことは初めてだ。誰もがおかしくなっていく。
どうやら皆も異変を感じてるらしい。
本来なら女神様のように慈悲深いサーマがウエスティンの手を離す。
いくら不快に感じたからってあり得ない。介抱したこともあるのだから。
「サーマは悪くないよ。これは不可抗力さ。どうもここに来てからおかしい」
「そう…… 私も自分が自分じゃないみたい。アモは信じてくれるのね」
どうにかサーマを慰める。
「サーマは悪くない! 悪いのは私。サーマが手を離したのを見た。
それでもあのじとっとした手がどうしようもなくて離してしまった」
リザも己の行為を反省している。そして酷く後悔している。
「ごめんなさい。えっと誰だっけ? 」
リザはさらに追い打ちをかける。
これではウエスティンがかわいそう。
それと二人ともわざとやってないか?
結んだ手を離すだなんてよくそんなことが出来るな。
俺なんか爺とだって離さなかった。
野ぐそして手を洗わないような爺だぜ。
涙も見せないしまさか二人がウエスティンを捨てた?
役立たずの従者を切り捨てた。
そう考えるのが妥当か。
疑惑はあるものの証拠がない。そしてそんなことする意味がない。
俺の良きライバル同郷のウエスティン。
彼の活躍なくしてこの旅は続けられなかった。
どうしてしまったんだ二人とも?
特にサーマが重傷だ。
リザは前からこんな感じだった気もする。
「師匠! 」
「うむ。残念じゃがこれも運命。諦めるしかなかろう。
さあ皆でウエスティンに最後のお別れを言うといい」
爺さえも冷酷に見える。ギャグも少なめだし。
ウエスティンを認識してるのもあまりに冷静で怪しい。いつもの爺ではない。
いや待て。それはいくら何でも考え過ぎか。
聖地・フォレストに来て元神としての自覚が芽生えたのかもしれない。
それは悪いことではない。
『我が愛しき従者この地に眠る』
ウエスティン!
気が済むまで叫び続けるのだった。
これにてウエスティンの冒険は終わりを迎える。
「しかし急っすね。これじゃ俺もどうにかなりそう」
聖地フォレストは人を寄せ付けない。
一度中に入ってしまえば人であるがゆえに排除されてしまう。
ウエスティンが第一の犠牲者。
こうして四人の旅が始まる。
続く
②




