ズンズンの正体
もはや元神によって誘われるしかないのか?
最後まで諦めたくはない。だがこれ以上どうすることもできない。
冒険者…… いや人間は自然にあまりに無力である。
ゲームオーバーに未来はない。
「師匠だけずるい! 俺もサーマもリザにウエスティンさえも助けてくださいよ!
一生のお願いですから。この通り」
どうにか回避するように頼む。元神の力を持ってすれば容易い。
そもそもこの旅だって爺の尻拭い。なぜ俺らが危険にさらされなければならない?
理不尽であまりに残酷。
「無茶を言うな。それでは全員助ける訳でこれだと意味がない。
一生のお願いは聞かんことにしている」
非情な分からず屋爺。
「しかしどうすれば…… 」
「落ち着けアモ―クス。まずはアネモネだ」
この状況でアネモネ? しかも心を落ち着かせるだけでその間は無防備。
喰われても知らないぞ。
アネモネ発動。
アネモネで精神統一。心を無にして体を楽にする。
ビックベアーは距離を詰める。
アナコンダは相変わらずウエスティンに巻きついたまま。
怪鳥ズンズンは大地に降り立ちズンズンと向かってくる。
これがズンズンの由来。
動物学者のアニー博士が命名。
その後姿を現さない幻の鳥として一部のマニアに存在を知られる程度。
アニー博士はズンズンの弱点をまとめた論文を発表している。
ただ不備があったせいで陽の目を見なかったのだとか。
うがあああ!
ズンズンズンズン
シャーシュルシュル
獣が雄たけびを上げるとズンズンが大地を駆ける。
負けじとアナコンダサイズの蛇が喉を鳴らす。
いくらアネモネで心を落ち着かせようとも迫り来る恐怖から逃れられない。
どうすればいい? 人生最大のピンチ。
どうすればいい? 焦るばかり。
閃いた!
ついに閃いた。これもアネモネのおかげ。
もっと! もっと! 鮮やかに!
この中で一番鮮やかなのは……
ビックベアーは茶混じりの黒。地味で薄汚れた感じがする。
だから即却下。見た目も恐ろしいしね。
ズンズンはクジャクのように色鮮やかとはいかずセピア色。
とてもきれいとは言い難い。
またしても却下。喰われ方が想像もつかない。
嫌悪感と恐怖でどうにかなりそうだ。
残ったのはアナコンダしかいない。
ちょうどウエスティンが巻かれている。
グッドタイミング。
青と緑の鮮やかなライン。
最悪の三択問題はついに解決。
「さあ行くぞ! 」
「まさか冗談だよねアモ? 」
サーマは卒倒寸前。
かわいそうに震えているよ。
「ズンズンがいいに決まってる! 変な歌に惑わされずにズンズンを選びなさい」
ズンズンに一票を投じる夢見がちなリザ。
「師匠は? 」
「儂はどっちみち助かるのでアナコンダで良かろう」
「馬鹿言わないで! ズンズン! ズンズンしかない! 」
リザは引かない。
「アモ…… 私耐えられない」
「大丈夫だよサーマ。俺を信じてくれ」
三択。どれを選べばいいか?
すべて地獄の恐れもある。
もしもし…… もうよろしいですか?
ビックベアーが痺れを切らし話しかける。
そろそろお食事タイムだと主張する。
いつの間に言葉を習得したのだろう。
これならいつでもウエスティンの代わりが出来る。
ボディーガードに持って来いだ。
ズンズンズンズン
ズンズンもいよいよだと脅しをかける。
皆喋れるじゃないかと毒ずくアナコンダ。
どうやらメスのようだ。
「おい従者や通訳を頼む! 」
こんな時でも落ち着き払っている爺。
自分だけ生き残れるからって余裕こいてるが俺たちが生き残らないでどうする?
「無理です。息をするのもやっと。ああ苦しい! 」
アナコンダに巻かれ弱っていくウエスティン。見ていられない。
しかしこれから俺たちも巻かれに行くことになる。
アナコンダは後ろに何匹も控えてる。
これが恐ろしいところ。
逃がさないように集団で待ち構えてる。
絶望の未来。丸飲みされる未来。
ビックベアーに惨殺されるよりはいいか。
あーあやっぱりリザが言うようにズンズンにすれば良かったか?
怪鳥ズンズン。
実はこの大きさはまだ子供だとアニー博士が言っていた気がする。
成長すると三メートル越えの巨大な化け物に変化。
結局どれを選ぼうと大差ない。
仕方がない。ここは腹をくくるか。
爺、サーマ、リザ、そして俺。
手をつないでアナコンダ目がけて突撃。
うおおおお!
次の瞬間世界が歪みだし意識を失う。
目が覚めるとそこは……
続く
②




