女神様どうか怒りを鎮め下さい
ギャンギャン
ギャンギャン
ハンター襲来。
いつの間にか野犬の群れに囲まれる。
犬は喉を鳴らし今にも襲い掛ろうとしている。
でっかく見えるがたぶん小型犬。
こっちが縮んだものだから何でも大きく見える。
これは…… 首輪が煌めく。
棄てられ野生化した元ペット。この辺を縄張りとしているようだ。
「僕たちは餌じゃないよ」
自称犬の言葉が分かるウエスティンさんが説得に当たる。
「おいでおいで」
刺激しないように優しく静かに語りかける。
「いいんだよ。怖がらなくて。僕たちは仲間じゃないか」
だが聞こえてないらしい。と言うよりも届いてないらしい。
これはまずい。余計に興奮させている。
それが分からないのかウエスティンはなおも続ける。
キャンキャン
キャンキャン
一匹が水たまりを異常に怖がって後ずさり。
まさか狂犬病?
「師匠。どうしましょう? 」
「噛まれてはまずい。ここは間合いを取れ。
そしていいと言ったら一斉に…… あれ水がない」
奴らの弱点と思われる水がない。
これはまたしてもやってしまった。
冒険者の必須アイテムである水さえ欠かしてしまう非常事態。
「師匠…… まさか品切れ? 」
「うむ仕方がない。ウオーターサークルしかないな」
手を広げた爺は呪文を唱える。
あっと言う間に水の円が出来上がる。
これで攻撃は愚か近づくことさえ不可能。
キャンキャン
ギャンギャン
水を恐れた犬が逃げ出す。
危機を脱した。
犬は骨を落としていった。
全員一ミリほど背が伸びた。
「しかし何とかならんかのう。一ミリ身長が伸びても意味がない。
元の体に戻れんかのう」
「師匠は絶対に何か知ってるでしょう? 」
「戻し方か? まさか知っていればとっくにいや待てよ…… 」
「どうしたのお爺ちゃん? 」
サーマが気を使う。
「いやいや婆さんや大丈夫じゃ」
こうして即興劇を始めようとする爺。
「もう置いてくわよ! 」
だがそんな和やかな雰囲気も一瞬だけ。
リザが仕切る。
「こっちに! ほら急いで! 」
随分ご機嫌斜めのリザ。
「そうじゃ! 思い出した! 」
「師匠? 」
「そうだここだ。儂はここで飯を喰った! 」
「ほらお爺ちゃん。大人しくしましょうね」
「婆さんや。飯はまだかの? 」
「だから私は婆さんじゃないって! 」
サーマが堪らずに訂正する。
そうこうしてると泉が見えて来た。
「ほれやっぱりそうじゃろ。儂は思い出したぞ」
どうやら爺は前回の記憶を思い出しつつあるようだ。
このまま放っておけばすぐにでも目的の物が見つかるだろう。
そう失われたルーレット。
俺たちは爺の尻拭いをさせられている。
泉までダッシュ!
はあはあ
はあはあ
ようやく第一の泉に到着。
これで何とかなりそうだ。
「師匠ここで落としたんですか? 」
「いやここではない。たぶんまだ先であろう」
残念なことにまだ旅は続きそうだ。
「ちょっとお爺さん。この泉はどんな仕掛けが? 」
「ああそうだ。石があるじゃろ? その石を泉に投げるのじゃ」
ウエスティンの出番だ。
「重いです」
「いいからそれを投げ入れんか! 」
爺は常に従者には厳しい。
「入れるとな…… 」
「ほら早くしてよ! 物忘れ? 」
リザがキレる。
ちょっとのことでギスギスする。
まあまあと止めても効果がない。
だがこれもある程度仕方ないのかもしれない。
俺がリザを大切にしないから機嫌が悪いのだ。
リザは小さくなって見守っていた。
俺がサーマと仲良くするのが我慢ならないのだろう。
だからって態度で示されてもね。
「入れると恐ろしいことが…… 」
まだ言ってるよ。肝心なところを早く思い出してくれないかな。
この世界に来たことがあるのは爺以外いないのだから。
俺たちではどうしようもない。
ブクブク
ブクブク
泉が泡立つ。
機嫌の悪い女神が現れた。
「あんたたちだね。この石を投げたのは? ぶち殺したろか! 」
「おう女神様よ。儂の願いを聞いてくれ! 」
爺は構わずに話を進めようとする。だがさすがに無理がある。
女神様はお怒りになられている。
神経を逆なでする爺を早く止めなければこっちまで被害を被る。
「ちょっと師匠まずいっすよ」
「うむ。心得てる。前回もそうじゃった」
結局最悪な展開は避けられなかった。
「誰だ石を投げたのは? 投げた奴は名乗り出な! 」
怒り心頭の女神様。想像していた慈悲深い女神様とはかけ離れた存在。
一体何がこうも変えてしまったのか?
「お鎮まりください」
ウエスティンが独自の方法で怒りを鎮めようとする。
「黙れ! いいから早く名乗り出よ! 」
「どうします師匠? 」
「儂にも分からん」
「だって前回来たんでしょう? 」
「ああ、じゃがすべて失敗。最後まで失敗したから儂ではどうにもならん」
結局爺は当てにならない。
説得も効果なし。
祈りも通じない。
逃げてもいいが先に進まない。
一発ギャグも不発。
さあどうしたらいいのかもう神に頼るしかない。
神って言ったら…… やっぱりこの爺だよね……
続く
③




