第五世界は小さくて大変
第五世界。
目の前には巨大な雲と巨大な森。それから巨大な捕食者の姿が。
下手に動けば一瞬でやられてしまう。
空気もきれいで自然も豊か。
ちょうどいいハイキング日和だが……
そんなこと考えられる状況ではない。
「うーん気持ちいいの。暑くもなく寒くもなくちょうどいい天気じゃ」
「師匠そんな呑気なこと言ってないで…… 」
「どうした何か問題かの? 」
この爺はまったく現実を見ようとせず何を惚けたこと言ってるのだろう?
まさか再びペガサス症候群にでもかかったか?
こんな大事な時によくそんな冷静でいられるよ。
「ほれ。アネモネで心を落ち着かせるのじゃ」
とりあえずやることもないので従う。
「アネモネ! 」
「もっと! もっと! 」
「こうですか? 」
「鮮やかに! 」
「だからそれが良く分からないって! 」
アネモネで精神統一をする。
ふあああ。
ゆるゆるふわふわした世界。
「ほれこれで現実逃避が出来るじゃろ? 」
「気持ちいいですね師匠」
「ああ。これで万事解決じゃ」
ついに二人は本格的に現実逃避を始める。
「あの…… そろそろ良い? 」
緊張感のない二人に苛々を募らせる案内人。
「フン。虫の分際で生意気な! 」
「あんたもでしょうが! 」
カウンターが返って来る。
「儂が? どこがじゃ? 」
「だからその姿が! 鏡を見なさいよ! 」
「ほっほほほ…… 何を言ってるやら…… 」
「師匠そろそろ現実を受け入れましょう」
「現実? はて何のことかの? 」
アネモネで心を落ち着かせた爺。
もはや見えないのではなく見ようとしてないだけ。
虫とは一体?
「ほら師匠もリザも喧嘩しないで仲間じゃないか! 」
リザはたまに出て来て我々の案内をしてくれた。
なぜか絶体絶命のピンチでは一切姿を見せないが。
ただ単にその存在を忘れられていたとも言える。
第五世界に入るといきなり体が縮む現象に直面。
リザと同様小さくされてしまった。
だから爺も俺も皆小さい。
どれくらいかと言うとハエや蚊よりは大きく小鳥より小さい。
蜘蛛や蜂程度の大きさ。
小さくて困るのは動くとすぐに疲れてしまうところ。
慣れてないからでもあるが。
ただ羽があるので自由に空を飛び回れる。
小さな妖精さんだ。
特にサーマは小さくてかわいらしい妖精さんとなった。
今ウエスティンと辺りを見回ってもらっている。
「戻って来たみたい」
「ただいま。はあ疲れた。慣れない体だと大変」
はあはあ
はあはあ
ウエスティンは滝のような汗を流す。
「駄目です。辺りには見当たりません」
「まったく何やってるの二人もいて役立たず! 」
「何この人? 失礼な。サーマ姫ですよ」
サーマとリザの争いが激化。
俺はどちらに付いたらいいのか考え中。
「アモも何か言ってよ! 」
リザが迫る。
「いいから作戦を立てよう」
二人がなぜこんなに相性が悪いのか気になる。
爺とリザが犬猿の仲だと言うなら納得もできる。
しかしこの二人はほとんど関わってないはず。もう困ったな。
ここは森の中。ここを抜けると四つの泉があるとリザが教えてくれた。
ただそれ以上のことは分からないそうだ。
「しかしなぜこんなことに? 」
サーマが首をかしげる。
確かに何もなくていきなりなどあり得るのか?
「たぶん時間の関係」
リザが説明を始める。
「前回の世界で一日、正確には一時間オーバーしてしまったみたいね。
そのせいで思った以上の負荷がかかり小さくなったと考えるのが妥当」
結局は誤差の範囲だとしても影響を受けることに変わりはないらしい。
そして小さくなってしまい余計にクリアに時間がかかる。
まるで即死モード。まさかウエスティンのせい?
まあどうであれ急いでルーレットを探す必要がある。
それには協力が不可欠だがリザが加わりギスギスしだした。
特にサーマとリザはお互いを認められないのかいがみ合ってる。
「師匠どうしましょう? 」
「とにかく先に体を元に戻すしかなかろう」
具体的にどこにルーレット置き忘れたか覚えてないらしく捜索は難航するばかり。
手掛かりさえなければ探しようがない。お手上げ状態。
「うーん。やっぱりまったく思い出せん」
「早く思い出しなさいよ! 」
リザが爺に迫る。
「無茶を言いおる」
「ねえリザ。ここはどんなところなんだ? 」
「もうまた説明するの? 」
疲れたと拒否。
「とにかく泉に向かうぞ。たぶんそこで何とかしてくれるであろう」
爺は楽観的だ。悲観的よりはマシか。
「では出発! 」
引き続きリザに道案内を任せる。
続く
③




