神の配牌
とりあえず休憩。
頭の使い過ぎにはやはりお酒だが何と言っても高すぎる。
それにまだ昼間。今はジュースで我慢しよう。
「ほら好きなのをどうぞ」
「うーむ。気が利くのお主」
爺は単純でいい。俺なんか……
「うわ冷た! 」
「ははは…… 冷たいでしょう。これも私のアイデア。どうです? 」
落ち着きを取り戻し笑顔の自称数学博士。
「本当だ。キンキンに冷えてる」
「うむ。キンキンじゃ」
ドリンク休憩で気分をリフレッシュ。
これで少しはいい考えでも浮かべばいいが…… そう単純なものでもないか。
逆に悪い報せにより暗転することに。
コソコソ
コソコソ
「師匠。お話があるそうですが? 」
「あと一日じゃ。ここに居られるのはもう二十四時間を切った。
残念じゃがこのままでは時間切れになってしまう。
明日までに次の世界に行かなければお終いだ」
ついに恐れていた事態。師匠ももう少し前に言ってくれないと困る。
期限は一年。あと半年以内に元の世界に戻らなければ閉じ込められてしまう。
だからタイムリミットはまだ先。
しかし元通りの世界へ戻るには半年以内が求められている。
一世界クリアの目安の時間がある。
それを守らなくても問題はないが次の世界の時間が無くなる。
できれば目安の時間を守りたい。少々の誤差は許容範囲。
だから少なくても明日までにこの第四世界をクリアする必要がある。
「皆の者心してかかるように」
絶体絶命の大ピンチ。切り抜けられるか?
パチパチ
パチパチ
再び実験を始める。
「うむ。良い配牌じゃ」
今日の爺はついている。
もはやどれだけ打ったか覚えてない。
もちろん男が記録をとっているだろうが。
一位と二位で上がりに上がりまくっている。
「師匠またリーチですか? 」
リーチとは上がりそうだと敵に示す行為。
ある意味紳士のスポーツ。
これがスポーツと言えればの話だが。
ロン!
またしても爺が上がり一人勝ちがほぼ確定する。
「やはり儂はついとる。賭けるんだったかの」
ちょっと勝っただけで浮かれる爺。
サーマにやり方を伝授しようと手取り足取り体を密着させる。
ただのエロ爺。
「師匠! 」
「ほほほ…… そう妬くでない。みっともないぞ」
まったくこの爺だけは……
だがその後も爺は上がり続ける。
いつの間に上達したのだろうか?
あまりに上がり続けるので疑わしく思えてくる。
運やツキでは表せない何かがある。
「師匠! ずるはダメですよ」
探りを入れてみる。
だが爺は逆切れ寸前。
「何じゃと神の言うことが聞けんのか! 」
熱くなって我を失うと本性が現れる。
元神の爺も例外ではない。
ロン!
ついに爺の不正が見つかる。
「あれこれはもしかして? 」
サーマは配牌の傷が気になるようだ。
「種も仕掛けもないわ! 」
まだ言い逃れをしようとする悪党爺。
「博士! 注意してやってくださいよ」
「これは実験でただ勝てばいいと言うものではありません」
まだ実験の趣旨を理解してないらしい。
「うう…… 」
正論に黙ってしまう爺。これでは庇いきれない。
「師匠。まさかこの傷でイカサマしてたんですか? 」
「いや違うわ! 儂は…… 済まん許してくれ」
追及されると弱いらしい。
元神だけあって嘘は苦手か?
そうは思えない普段の行い。
「では教えて進ぜよ」
ついにイカサマの正体が明かされる。
「この傷はたまたまこの男がかんしゃくを起こし投げつけた時のもの。
それで傷ついた訳だから儂のせいでは…… 」
男のせいにする。
サーマが睨むと爺は続ける。
「傷はたまたま真っ白だった」
白のことか。
「それを見習い密かにすべての白に見える傷をつけた。
こうしていつでも白の位置が把握できるようになる。
それが次第にエスカレートし他の牌にも印をつけた。
許してくれ。ほんの出来心だったんじゃ」
「ほらお爺ちゃん。事務所に行きましょうね」
「いやだから出来心。済まん許してくれ」
こうして老人は引っ張られていく。
お終い。
「おい待て! 終わらせるな。ちゃんと話しただろうが」
爺はすべて告白する。
愚かしい手で勝ってどうする?
いくらギャンブルとは言えイカサマは良くない。
正々堂々とすべきだ。
それが出来ないなら代わるしかない。
オイオイ
シクシク
爺が嘘泣きを始める。
泣き落としなど古い手。だが爺がそれをやるともはや手に負えない。
「困った爺さんだ」
無口なウエスティンにまで非難される。
「それで成果が出てるならいいがどうかな? 」
「儂が間違っとった」
ついに観念する。
続く
④




