A・K理論
相当追い込まれたと見える自称数学博士。
本来なら気にすることもないが男の機嫌を損ねればルーレットは返ってこない。
もちろんここで大人しく見守る時間的余裕はない。
とりあえず男のやる気を引き出す作戦だが……
それにはサーマに協力してもらうのが一番なんだけど。
でもそんなところ見ていたくない。男も興味を示してないようだし。
「傷がついてるではないか。ううん? 」
爺が閃いた?
コソコソと何かし始めた。
「師匠! 」
「うるさい! 大人しくしておれ! 」
「まあまあ。皆さん落ち着きましょう」
ウエスティンは随分余裕。
「うん? 何か分かったのか従者よ? 」
「ははは…… 嫌だな僕にはそんな能力ありませんよ」
初めから諦めている様子。
聞き役に徹しているとも言えるが俺には真似できない。
「まあいいわ。博士続けて」
自称数学の専門家。
博士と言われることに快感を覚えるのか恥ずかしそうに頭を掻く。
機嫌を直した男が再び翻訳不能な難解な講義を始める。
「続けます。エルマーの定理が志村・谷山理論からも影響を受けてること等々。
そこからも分かるように多くの特に著名な数学者の理論を参考にすべき。
そう思い多くの学術書に当たりました。
資料からチャンドラー予想に関わる理論を二つほど発見しました」
「何じゃ進んでるではないか! 」
爺は心配していたらしい。そうは見えないのが凄いところ。
「その一つにアカギ理論があります。
ですが資料が多くどれも決定打に欠けるものとなり今難航してる訳です。
ちなみにライバルの彼もアカギ理論を研究してると。
彼よりも一秒でも早く証明する必要がある」
男は焦っている。
「ではその理論の研究を続ければいいじゃない」
「ですから何度も言いますが私より先に証明されたらダメなんですよ」
いつ先を越されるか。その見えない恐怖と戦っている。
まるで終盤の勝負所で疑心暗鬼に陥る雀士。重なる部分が少なからずある。
「これだけでは足りないんです」
「足りんとはどう言うことじゃ? 」
「応用し昇華する。それが重要です」
俺にはちっとも理解できないが数学者の彼がそう言うなら正しいのだろう。
「それであなたはどうしたいの? 」
サーマが落ち着かせる。
「あと一つ。それで欠けてるものが補えるはず。それは…… うおおお! 」
男が徐々におかしくなっていくのが分かる。
それほどこのチャンドラー予想は難解なのだろう。
俺もサーマさえも歯が立たない。
「おいこっちの理論はどうじゃ? 」
興味を示す爺。
「これはちょっと…… 確かに面白いと思いますが理論として破綻してる部分も。
何と言っても全ギャンブルを網羅したもの。迂闊に手は出せない」
男はなぜか妙に慎重だ。
「まあ良いではないか。試すだけ試してみよ」
積極的に勧める爺。だが男は決心がつかない様子。
「しかし…… 無駄足になるのでは? 」
「これに賭けるのもやはりギャンブラーと言うもの。
チャンドラーだってそう言いたかったのかもしれんぞ」
適当なことを抜かす無責任な爺。
一体どんなものなのか?
「カイジ理論」
これをもとに打つ。
「うむ。何となく運気が上がった気がする」
まさか本気か? いや錯覚だろう。
パチパチ
パチパチ
ポン。
ポン。
ロン。
爺がついに大三元を披露する。
「師匠やりましたね」
「うむ。これで一歩前進であろう」
ジャラジャラ
ジャラジャラ
「やっぱりダメだ! 」
男が急に大声を上げるからビックリ。
「どうしたお主? 」
「これではダメなんですよ」
ため息を吐く。
「頑張りましょう。私たちで見つけるの」
強気なサーマ。
俺たちからすれば何がいけないのか分からない。
「おい役満出来たぞ。これでもダメかの? 」
「ふう…… これでは証明にならない」
「どうして? 」
「再現性がないんです」
「再現性? 」
「今回チュンドラ三で上がりました。
しかし今回だけかもしれない。それを証明できない。
また起きうるなら再現性は認められますが」
身も蓋もないことを言う。
やはり難航するチャンドラー予想。
後は役満で上がれればいいのだが。
アカギ・カイジ両理論でも証明は不可能らしい。
だとしたら一体どうすればいい?
チャンドラーも適当なこと抜かして後世の者に頼らず自分で証明すべきだ。
とりあえず次の理論へ。
無駄に時間だけが過ぎていく。
これではルーレットは夢のまた夢。
徐々に追い込まれていく。
続く
④




