追放って辛いですね 翼を持った化け物
三名までが選ばれた。
その三名は歓迎の宴で勝手に飲み食いすると言う大失態を犯した。
排除されて当然。この後の旅でも足手まといになるのは目に見えている。
そしてなぜか四番目はウェスティン。
暴漢を捕えたウエスティンがなぜ選ばれたのか疑問が残る。
「おい! 」
「仕方がないだろ。汗っかきはサーマ姫が嫌うと思うから」
そんな理由で? いくら何でもウエスティンがかわいそうだ。
彼が失態を犯したなら頷ける。
だが他にも追放候補が居るはずなのに安易に彼を選ぶ。
「滅茶苦茶だよまったくもう! 」
「だったらお前が代わるか? 」
「俺は…… サーマ姫と離れられない。何としても姫と結ばれる必要がある」
「なら文句はないな。よし決定だ! 」
受け入れるしかない。
結局四人までは決まった。だが残りの一人が決まらない。
そこに追放官が戻ってきた。
「まだ決まってないのか? 後はくじ引きでもしろ! 」
奴の言に従うのはムカつくが確かにそれが一番公平だ。
「ではこの外れの紙を引いた者が五人目だ。いいな? 」
「はい! 」
「よし全員引いたな。一斉に裏返せ! 」
「恨みっこなしだからなあ! 」
「おおおお! 」
仕方なく俺も裏返す。外れのマークがあった。
「こいつだ! こいつが五人目だ! 」
仲間だった者から後ろ指を指される。
信じていたのに。仲間だと思ってたのに。
あまりのことに呆然自失。
この後のことを考えるだけで寒気がする。
パチパチ
パチパチ
「それでは正式に追放する」
五名が前に集められる。
「お前らを王の名のもとに追放する! 以上だ」
五名の運命はいかに?
夜も更け明け方近く。
薄暗い中俺たち五名の追放者は近くの森へ連れて来られた。
「では執行する」
話がまったく見えてこない。
お役御免された者は普通村に帰されるものだとばかり思っていた。
多少の情けで給金がもらえる。そんな風に思い描いていた。
だが現実はまったく違った。
俺たちは一体何なのだ?
ただの役立たず。役立たずには金が支払われない。
それは仕方ないこと。納得はできないが甘んじて受けよう。
しかし処刑とは聞いていない。いや聞いていたとしても到底受け入れられないが。
役立たずは罪なのだろうか? 仮に罪だったとしても処刑するか?
非常識にもほどがある。
「ストップ! 」
ついに処刑場に到着。
「よし言い残すことは? 」
勝手に始めて勝手に終わらせようとする。
最後の言葉? 用意しているはずがない。
「えっと…… 」
だから悪いことしてないって!
心の中でいくら訴えかけても通じるはずがない。
「俺は…… 」
「よろしい。では準備は整った」
せっかちな執行官。
嘘だろ? ただそう思うのみ。
どっから狂っちまったのだろう? やはりあの爺さんと出会ってから。
くそ! ついてないぜ。
「まず無理だとは思うが生き残る方法もある。よく聞くように」
欠伸を噛み殺し感情を込めない非情な男。
「今から化物がお前たちに襲い掛かる。必死に逃げれば生き残れるかもしれない。
そうしたら晴れて村に戻れる。健闘を祈る」
「おい、ちょっと待ってくれよ! もっと詳しく! 」
「ではスタート」
「くそ! 」
走るしかない。
ダッシュ!
しかし疲れた。一日護衛で歩き回った。川にも落ちた。
食事も睡眠もできなかった。させてもらえなかった。せめて体力が回復してれば。
ぎゃああ!
ぎゃああ!
薄気味悪い涎を垂らした二体のピンクの化け物が飛んでくる。
俺の目が狂ってなければ現実だ。
普通こういう場合最低でも天使の姿をしてるものだろ?
最後の最後まで恐怖を与えるとはどこまでイカレテやがるのか。
「うわああ! 」
一人がつまずいてしまった。
「うわああ! 止めてくれ! 」
ガリガリ
ボリボリ
骨の砕ける音がした。
これはまずい。絶体絶命のピンチ。
「助けてくれ! 」
今度はウエスティンの絶叫。
もう聞いていられない。振り返らずに全力疾走。
化け物が捕食している間に距離を取る。
あと五百メートル。
あの木と木の間を抜ければ助かる。だが捕食を終えた化け物の殺気が。
振り返る余裕はない。
あと三百メートル。
だが奴らも慣れている。
急がなければ!
「うわああ! 」
焦るあまり木の根っこに挟まって転倒。
急いで立ち上がるが体力的にも限界。もうダメだ。
諦めかけたその時巻物に手が触れた。
これは神様から貰ったアイテム。
さっそくエスケープと唱え口に咥える。
後はギリギリでかわし木と木の間にあるワープゾーンへ。
ぎゃああ!
ぎゃああ!
振り返ると悔しそうに雄たけびを上げる二体の化け物。
捕食されずに逃げ切った。
結果。
五名中一名生存。
アモ―クスはワープゾーンに逃れた。
意識を失う。
続く
⑤