親切なおばさんのお世話に
お目当ての家を発見。
草がぼうぼうで手入れがされてない庭。これは明らかにもう……
まずい。嫌な予感がする。
「いませんか? 誰かいませんか? 」
「儂じゃ儂じゃ! 神じゃ! 」
ドンドン
ドンドン
出てくるまで粘るが一向にその気配がない。。
これではさすがに近所迷惑か?
さっそくトラブル発生。
「ちょっと! 」
ほうきを振り回し近づくおばさん。
これはまずい。絡まれた。
「あんたら何? 勧誘だったらいないわよ」
神を名乗るイカレタ団体には手厳しい。
「だからここの者に用があるんじゃ! 」
「ああ、お隣さんだろ。さっきからいないって言ってるだろ。しつこいね! 」
「神を信じぬ愚か者めが! 」
いつになく強気の爺さん。
「騙されないよ! この詐欺師集団め! 」
ほうきを武器に大立ち回りをする近所のおばちゃん。
「まあまあ」
こういう時は冷静なウエスティンの出番だが今は意識がない。
だから俺が代わりに興奮を収める。
「うるさいよ坊や! 」
一喝されてお終い。
「師匠? 」
「おい! 」
爺では余計に混乱を招くだけなのでサーマと交代。
「ここの方はいつ戻りますか? 」
「さあね。戻ってくることはないんじゃない」
どうやら引っ越したらしい。
「それがさあ聞いてよ」
おばちゃんの長話が始まった。
仕方ないので爺が長話で対抗。
お互い勝手に話し出すからまったくかみ合っていない。
長話合戦の地獄のような時間。
同じ話を二度三度繰り返すものだから頭が痛くなってくる。
もう少し二人とも整理して話して欲しい。
仕方なく長話の要点だけを記す。
ご近所トラブルが原因。隣のおじいさんと騒音で揉めて出て行ったらしい。
「ありがとうございます。どこに行ったか心当たりはありませんか? 」
「それなら知ってるよ。挨拶に来たから。
何でもここから一山超えた町に行くって言ってたね。
あの人偉い学者さんらしい。いつも自分で自慢してたから。
実際どうだったかまでは分からないけどね。ははは…… 」
そう言ってどこかへ行ってしまった。
とりあえずトラブルの元である隣のおじいさんに話を聞く。
「ああ…… 隣の若者だな。良い奴だったのに残念じゃ。
何でも完成間近の論文だか何だかを邪魔されて先を越されたとか。
それをずっとブツブツ言ってたから注意したら逆切れじゃ。
それからは口も利いてやらん。そしていつの日か居なくなっちまった。
気まずくなったのであろう」
残念そうに語るお爺さん。思ったほど悪い人でもなさそうだ。
ただトラブル体質なのは間違いない。
論文を邪魔したのが元神の爺なら無関係でもない。
「うむうむ。分かるぞ爺さん。儂はお主の味方じゃ」
「爺? 誰が爺だ! あんたの方が爺だろ? 」
「何を抜かす! 儂は爺などではない。神じゃ。神様じゃ! 」
爺同士の熾烈な争いが勃発。
婆さんの奪い合いで揉めるのは情けないがよくある話。
だがどっちが若いかの張り合いならば、ただただ情けない。
「そこの人。この人よりは若いだろ? 」
うわ…… やばい巻き込まれた。さすがに正直に答えるか?
「アモ―クスや。正直に言ってやれ。儂の方が立派だと」
二人の爺がいがみ合う。
そしてつまらないことで張り合う。
「うるさい! 爺さんたちは黙りなさい! 」
サーマがキレる。
「どっちもどっちでしょう。反省しなさい! 」
これ以上爺さんの相手はごめんだと有無を言わせない。
収穫はないのにトラブルを巻き起こしてばかり。
サーマでなくとも疲れた身には堪える。
とりあえず切り上げて引っ越し先へ向かう。
だが山登りはきついので近くの民家でお世話になる。
「旅行者だってね。いいよいいよ。好きにしな」
世話好きのおばさん。
これで疲れも取れるだろう。
ウエスティンが意識を取り戻し今はサーマが面倒を見ている。
「風呂は良いか? 」
「いいよいいよ。好きにしな」
口癖のように繰り返す親切なおばさん。
「飯は豪勢にしてくれんか」
図々しい爺さんのリクエスト。
「いいよいいよ。好きにしな」
風呂を済ませ飯を喰い終ったらやることもない。
だから結果的に早寝となる。
「明日は早い起こしてくれんか? 」
「いいよいいよ。好きにしな」
お馴染のセリフを吐くかなり変わった人。
さすがに甘え過ぎな気もするが。
「ではおやすみなさい」
宿でもない狭い家。
おばさんと一緒に寝ることに。
「おやすみなさい」
電気を消す。
「いいよいいよ。好きにしな」
ここまでくるとちょっと怖い。
なぜ繰り返す?
続く
④




