М捨て
鞭飛びは延長戦。
俺が二回連続で十回跳べたら勝ち。
一回でも失敗すればゲームオーバー。
俺の負けが決定し全裸にされてしまう。
さあラストゲーム。
もはや人間だとか勇者だとそんなことは関係ない。
俺はこの試合にすべてを賭けている。
だがゲーム開始と同時に雪崩れ込む冒険者たち。
結局命を懸けた最後の戦いは持ち越しとなる。
アモ―!
きゃああ!
女の断末魔が聞こえた気がする。
最後の戦いを終えた今なぜか清々しい気分なのはなぜだろう?
「何をしてるの? 」
サーマ姫が走ってくる。
感動の瞬間?
再会の抱擁かと思いきや俺の頬に思いっ切りビンタ。
ううん? どう言うことだ。
俺は拷問を受け必死に戦った戦士。
称えることはあってもビンタされるいわれはない。
「なあ俺が何をした? 」
笑顔の再会とはいかなかったがそれは俺が拷問を受けてるからだ。
それくらいいいじゃないか。耐えたぜ。堪えた。
「もう最低! 」
「ええっ? ちょっと待ってよ。何もしてないよ。ただ耐えただけ」
「嘘つき! 何あれ。何その格好? 」
ほぼ全裸の二人の男女。一体二人は何をしていたのか?
拷問を受けていたに決まってる。
彼女に聞いても無駄だろう。だが証人ならいる。
仲間のもう一人の男。奴ならすべてを知っている。
俺をこの危機から救ってくれるはず。
今すぐにでも奴を呼び寄せて俺の無実を証明してもらわなくては。
「サミー。誤解だよ。どう勘違いすれば俺が悪くなるんだ」
「そうね五回ね。五回ほど頑張ったみたいね」
まともに取り合ってくれない。どうも俺は勘違いされやすいタイプらしい。
確かに可愛くて綺麗でグラマーで年上の頭の弱いお姉さんだと思ったことはある。
でも彼女は悪人。俺を拷問した。どう勘違いしようとこれが現実だ。
「だから俺は拷問されてただけ。そうっすよね師匠」
ううう……
「師匠? 」
「羨ましい! 何てことをされやがるんだ! 」
年甲斐もなく興奮する爺。それでも元神?
「言い方おかしいですよ師匠。それに不可抗力だし。
この縄で手を後ろにされて拷問を受けていたんだ。なあそうだろ? 」
四人に囲まれ戦意を喪失している女。
肝心の彼女は首を横に振るばかり。これでは俺が加害者に見えてしまう。
「縄ってこれ? 」
サーマが手に取る。
「ああそうだよ。これを後ろ手で縛られていたのさ。
どれだけ辛かったか想像できますか師匠? 」
「うむ。分かるぞ! 」
「師匠! 」
「どれだけ楽しかったか。どれだけ気持ちよかったか。
想像するだけで同情する。いや嫉妬する! いや興奮する! 」
「まあいいじゃないですか。アモ―クスが無事だったんだから」
ウエスティンが丸く収める。
何て仲間想いの良い奴なんだ。ただの従者ではないな。
それに比べて爺さんはまったく…… 俺を助けてくれないんだもんな。
「良くない! 」
サーマ姫はご立腹。白い目で俺を見る。
「信じてくれ! 俺は何もしてない。ただ戦っていただけだ」
「縄取れてたけど? どう言うことか説明して」
「それはたぶん必死に抵抗してそのうち緩んで外れたんだと思う」
実際そうだから何とも…… いつの間に外れたのだろう?
「そして最後にお着替えごっこしてた訳よね」
まあ言い方は人それぞれ。
怒りの炎が見える。
やはりいくら言い訳してもダメのようだ。
男は時に言い訳せずただ立って耐える。それは今もこれからも変わらない。
男の戦いとは本来そう言ったもの。孤独で苦しく時には楽しい。
これが可愛くて綺麗でグラマーで年上のお姉さんでなかったら……
俺だってこれほど頭悪くて大胆でなかったらこうしてなかった。
いやただの言い訳か。
「ねえせっかくだから最後の勝負しましょう」
下着姿の女。頭が悪いのは直感で気づいたがここまでとは。
確かにまだ決着がついてない。白黒つけるのが俺の生き様。
「よし分かったぜ。最後の勝負だ! 」
体力も回復した。手も使える。バランスだって悪くない。
乗らない手はない。
「師匠! 」
「うむ良かろう。儂が立ち会い人になってやろう。
では審判はサーマお前に任せるぞ」
「僕はどうしましょう? 」
「お主は娘の方に着け。やはり即死モードは侮れない。
お主が味方すればそれだけ負ける確率も高くなる」
「ちょっとふざけないで! 誰が審判なんかやるものですか! 」
サーマは怒り心頭。
フォフォフォ……
爺は仮初天国。
「そうするとウエスティンはまさかのМ捨てか? 」
「僕は元から違うよ。どう見てもアモ―クスだろう」
そう俺だ。俺こそがやらねばならない。
俺は捨ててやる。Мを捨てるんだ!
М捨てアモ―クス。
ついに誕生。
М捨てアモ―クス爆誕。
「ではそろそろ変身しよう」
合体だ!
ライジングサン。
続く
⑤




