異世界日報
翌朝。
新聞を読む違和感のない元神。
汗を拭くウエスティン。
鳥たちに自慢の歌声を披露するサミー。
各々朝のルーティーンをこなす。
俺はと言うとまだ寝ていたりする。
ここが大事。寝てると言うか寝てる振りをしていると言うか。
アホな奴は耐えきれずに起きてしまい褒美をもらい損ねる。
俺はじっと我慢する。
嫌らしい笑みさえ浮かべない。
問題は師匠に悟られること。何と言っても元神。何でもお見通し。
俺の狸寝入りに気付かれてはせっかくの苦労が水の泡。
「もう起きなさいアモ」
サーマ姫に起こしてもらう。それも優しく。
うーん。これがやりたかった。
夢が叶ったので今日一日ぼうっとすることに。
「師匠。どうしました? 」
さっきから新聞に睨めっこ。
まさか世界情勢でも探ってるのか?
「いや…… ルーレットの話題が載ってないかなあと思っての」
神の情報収集方法が新聞とはイカレテル。
「師匠! それ異世界日報じゃないですか」
「うむ。それがどうした? 」
「いやロクなことが書いてないっすよ」
「うむ。儂もそれは感じる。じゃがこれしか置いておらん」
「チート殺人事件とかハーレムバラバラ事件とか。明らかに出任せですよ」
「うむ。しかしそれがルーレットと関係があるかもしれないではないか」
「まあそうっすけど。本当にあったらね」
「ではこれなどどうじゃ? ルーレット差し上げますとあるが…… 」
「ああ、それも嘘嘘。子供の玩具ですよ」
簡単に騙される爺。これは目が離せない。
「ルーレットは大人の玩具じゃ。そうじゃろサミー? 」
「サミーって気軽に呼ばないでよ! ついでに私に振らないの! 」
さっきまでご機嫌だったサーマがキレる。恥ずかしそうに頬を赤らめる。
「大人の玩具とは…… 」
ウエスティンが説明を始めたので止めることに。
「ではそろそろ出かけましょうか」
とりあえず情報収集を続ける。そして紹介されたところに出向く。
地味だがこれしか方法がない。
今のところノープラン。
後は元神の師匠がどこに落としたか思い出してくれればいいが。
今日はフィールドに出ることはないので気が楽。
「あれ師匠は? 」
「ああトイレだそうよ」
「師匠! 」
「おーい! 」
呼ばれたと思ったのか爺が戻ってくる。
「いやあ難儀であった」
「それであなた新聞は? 」
「ホッホホ…… 有効活用したぞ」
「まあゴミみたいなもんですからね。異世界日報なんて」
誰が読むんだろう。あんな無茶苦茶なの。
さっそく二手に分かれる。
若干不安だが師匠にサーマを任せる。
ウエスティンよりはあらゆる意味でマシ。
今回はウエスティンと行動する。
「イシコロ村のみんなどうしてるかな…… 」
ウエスティンは長旅でホームシックになったようだ。
何度も死にかけているし実際追放されたのだから細かいこと気にするなよな。
「大丈夫さ。村はまだ消滅してないって」
そう前の世界。特にイシコロ村辺りはのんびりした田舎。
揉め事と言えば祭りか子供の喧嘩ぐらいなもの。
俺たち役立たずがいなくれば逆に安泰だ。
「気を落とすなよウエスティン。こっちの世界を楽しもうぜ」
「お前はいいさ。でも僕は無理矢理連れて来られたんだぞ」
落ち込みようが激しい。誘った責任もあるので慰めるが反撃にあう。
「あの姫さまだってそう。つまらない世界に飽きたんだろ?
でも僕は違う。元の世界でつつましく生きていたかった」
「俺だって無理矢理だ。師匠のせいでひどい目に遭ってるんだから」
「それは違う。お前は戦士。俺は従者」
「何だそんなことか。それはあくまで形式的なもの。
フィールドに出なければ問題ないさ」
愚痴ばかりを言う連れ。
俺だって…… 立場は同じ。
「サーマ姫だってちっとも振り向いてくれない」
それはお前がダメだから。いや何度も回復魔法で救ってあげた。
もちろんウエスティンには記憶が無いのだろうが。
「さあグチグチ言ってないで話を聞くぞ」
村人たちが集まって何か話している。
ちょうどいい。ウエスティンに話を聞くように命じる。いや違ったお願いする。
二人の関係は常に対等。
俺が上に行くこともなければ彼が上に行くこともない。
「どうだった? 」
「いやどうも悪さをしている奴がいるらしい」
「具体的には? 」
「お金儲けしてるらしい」
よしまあまあか。
うん? 怪しい奴発見。
倉庫に入っていった。
「おい。ここは…… 」
ウエスティンが何かに気付いたようだ。
「何か知ってるのか? 」
「近づかないほうが良い。昨日のガンマンだ」
「ガンマンって悪役? 」
「そうに決まってるだろう。マントの奴はもうこの世にはいない」
怯んでなるものか。
さっそく中に入ることに。
中は暗く良く見えない。
何人か集まっているようだが正確な人数は分からない。
即死モードのウエスティンを外に残し潜入を試みることに。
続く
⑤




