チートを授かる
恐ろしく存在感の無い爺だ。
「もし…… お楽しみ中に済まないが頼みを聞いてくれんか」
うわ、変な爺さんだ。やばいかも。関わって良いタイプの爺さんじゃないな。
「お楽しみ? はははどこが! なあリザ! 」
リザはどういう訳か頬を赤く染める。一言も発さない。
爺にでもあたったか?
「爺さん。どうしたの? 」
「うん? 」
爺の眉間にしわが寄った。これは怒ってる?
「いえ師匠。何でございましょうか? 」
下手に出ていればいい。老人の世話も扱いも慣れている。
「これは師匠とな。間違えてくれるわ」
喜んでるんだか怒ってるんだかよく分からない。
「まあよろしい。頼みと言うのはその葉っぱを重ねて渡して欲しいのじゃ」
「葉っぱ? いいっすよ」
老人は敬うべき。
「師匠どうぞこれを! 」
急いで葉っぱを持って行く。
「うん。ありがたい。助かったぞ。では邪魔したの」
あーあ。行っちまいやがった。結局何だったんだあの爺は?
まあいいか。続き続き。
リザが下を向き恥ずかしそうにしている。
「どうしたリザ? 」
無反応。
「サンドイッチ食っちまおうぜ」
「私いい。食欲が無いの」
変な奴だな。まあいいか。頂きます。
リザをよく見るとハナと口を塞いでいる。むせているし呼吸も辛そうだ。
「どうしたリザ? 変だぞお前」
「ううん。何でもない」
首を振るばかり。様子がおかしい。
「リザ…… 」
「おう! 済まんかったの」
爺が茂みから現れた。
その姿を見てついにリザは狂う。
なぜかリザの感情が失われこう言うばかりだ。
「爺が現れた! 攻撃しますか? 排除しますか? 」
「どうしたリザ? 」
「消臭スプレーをかけますか? 」
「ははは! 何を言ってるんだよリザ? 」
「いやあ。助かったよ」
「師匠どうしました? 」
「クソしていたら肝心のクソではなく草が飛ばされてしまってのう。難儀したわ」
「それはそれは大変でしたね師匠」
変な爺だ。関わらないほうが良いだろう。リザの様子もおかしいし。
「師匠は止めろ! 儂はお主の師ではないわ! 」
「では何と? 」
「紙じゃ! いや…… あれ違った…… 」
「爺を攻撃しますか? 逃げますか? 」
「紙ではなく神じゃ。神様と呼ぶのじゃ」
「はあ…… 神様と…… 」
「ほら言うてみよ」
「神様。神様」
どうもしっくりこない。やっぱり師匠がいいな。
「本当に神? 神様でおられますか? 」
「うむ。苦しゅうない」
「嘘つきを撃退しますか? 爺を飛ばしますか? 」
「リザふざけてはダメだ」
リザは正気を失っている。
誰か……
「そうだお主にお礼がしたい」
「お礼ですか? とんでもない! 気持ちだけで充分ですよ」
「神に気持ちだけでいいとは無礼だぞ! 」
「ではお言葉に甘えて」
「うーん。何がいいかな? ちょっとお前を見せてくれ」
素っ裸にされる。
「変態爺を攻撃しますか? 叫びますか? 」
「うむ。良く分かった」
何が分かった?
「ではこちらも見せてもらおうかな。うひひひ…… 」
「本性を現した変態を攻撃しますか? 撃退スプレーをかけますか? 」
「もうリザったら…… 」
「冗談じゃよ。冗談」
「神様それでどうでしょう? 」
「よく聞くがいい! お主の未来は相当辛い物になる。
心してかかるように。それでじゃが…… 」
「詐欺師を撃退しますか? クーリングオフを選択しますか? 」
「リザ黙ってろ! 」
「良かろう。神の力を見せてやろう。希望を言え! 」
「希望…… えっとね…… うーん」
「無いのかそれならそれでよろしい! 」
「待ってください! 俺はモンスターバーガーが食いたい! 」
ついに言ってしまった。心に秘めた想い。
「馬鹿かお前は? 」
「パワハラ爺を撃退しますか? 訴えますか? 」
「リザ…… 」
「モンスターバーガーは町に行けばすぐ手に入る。もっとましな願い無いのか?」
「ではお姫様と結婚したいです」
「この娘ではなく? 姫とか? 」
「はい」
「まことだな? 」
「もちろん」
「よろしい。考えておこう」
「ええっ? 叶えてくれないの? 」
「いくら神とは言え人の心まではどうにもできない。
もしどうしてもと言うなら古来から伝わる秘薬を売りつけても良いが高いぞ」
「ええタダじゃないの? じゃあいいです」
「詐欺師を叩きますか? 塩を撒きますか? 」
「リザもういいよ」
「そうだこれを持って行きなさい。必ず役に立つであろう」
「ははあ! 有難き幸せ」
エスケープの巻物をゲット。
続く
⑤